ワーグナーの表題的解釈
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/10 18:54 UTC 版)
「トリスタンとイゾルデ (楽劇)」の記事における「ワーグナーの表題的解釈」の解説
1859年12月9日にマティルデ・ヴェーゼンドンクに当てた手紙に同封されたワーグナーの表題的解釈は次のとおり。 ……この愛のドラマの導入曲のために、このテーマ「愛の憧憬や欲求がとどまるところを知らず、死によってしか解決しないこと」を選んだ作曲家は、テーマがまったく独特で制約のないものであることを感じ取っていたため、いかに自らを制限するかということだけに気をつけた。というのも、このテーマのもたらす可能性を汲み尽くすことは、まったく不可能だからである。―そこで彼は、ただ一度だけ、しかし長く分節された一つの線で、もっとも控えめな告白と、もっとも儚い献身から始め、不安な溜息、希望と畏れ、嘆きと望み、歓喜と苦悩をへて、もっとも強い衝動、もっとも激しい努力へと、その満たされることのない欲求を高めていった。それは途方もなく熱望する心に無限の愛の歓喜の海へ到達する道を開き、突破口を見いだそうとする欲求である。しかし、無益なことだ! その心は気を失い、沈んでいってしまう。なぜなら、憧れるものを一度手に入れたとしても。それは再び新たな憧れを呼び起こすからである。そして最後に衰えた眼差しが疲れ切ったとき、そこには気高き歓喜に到達する予感がほのかに浮かび上がってくるのである。それは死の、もはや存在しないことの、そしてわれわれが狂おしくそこへ入ろうとすればするほど、まったくそこから迷い離れてしまう、かの奇跡に満ちた天国における最後の救済の歓びである。―それを死と名づけようか。 この表題的解釈は、第1幕への前奏曲の理念と構造を解き明かすための出発点となっている。各段落を要約すれば、以下のようになる。 第1-24小節 基本素材の呈示(控えめな告白) 第25-44小節 展開と確保(愛の諸相の経験) 第45-83小節 長い高揚(欲求の昂まり) 第83-111小節 長い減衰(死の淵へ沈む)
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