ワーグナーへの思想的影響
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/10 18:54 UTC 版)
「トリスタンとイゾルデ (楽劇)」の記事における「ワーグナーへの思想的影響」の解説
思想的には、ドイツ・ロマン主義の詩人ノヴァーリス(1772年-1801年)の長詩『夜の賛歌』(1800年)が重要である。『夜の賛歌』は、上記プラーテンのソネットと密接なつながりがあり、ワーグナーにロマンティックな底流を与えた。その内容は、昼に対する夜の優越を歌い、亡くなった恋人の住む死の国と夜を同一視するというものであり、ワーグナーの『トリスタンとイゾルデ』第2幕の「愛の二重唱」と重なる。。 また、ワーグナーは本作作曲の直前に詩人ゲオルク・ヘルヴェークの薦めでアルトゥル・ショーペンハウアーの『意志と表象としての世界』を読んでおり、トリスタンの死のイメージは、ショーペンハウアーの厭世の哲学と結びついていると考えられている。とはいうものの、ワーグナーのショーペンハウアー受容は直線的でなく、自己の芸術の裏付けに都合の良い部分が利用されている面がある。これについて、トーマス・マンは『ショーペンハウアーに関するエッセイ』(1938年)で次のように述べている。 「トリスタンがショーペンハウアー哲学から影響を受けているという主張は否定されている―〈意志の否定〉が問題とされる限り、それは正しい。というのも、ここで取り上げられているのは、確かに愛の詩であり、愛において、性において意志はもっとも強く否定されるからである。しかしまさに愛の神秘劇としてこの作品は、徹底的にショーペンハウアー的色彩を帯びている。そこでは、ショーペンハウアー哲学の中から、いわばエロティックな甘美さ、陶酔的なエッセンスが吸い上げられているのに対し、教訓の方は放置されているのである。」
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