ロフト・アパートメント
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/03/25 03:14 UTC 版)
アメリカなどにおける「ロフト・アパートメント」(loft apartment、賃貸用)や「ロフト・コンドミニアム」(loft condominium、分譲用)は、かつて工場や倉庫などとして使われた建物を改造した集合住宅を指す。産業用の建物を賃貸や分譲用の集合住宅に改造することを、一般的に「ウェアハウス・トゥ・ロフト」(warehouse-to-loft)ということもある。路上に面した一階部分を商業用に、上層階をロフト形式の住宅にするような開発を単に「ロフトスタイル」(loft-style)と称することもある。 工場・倉庫では、もともと作業用に各階の天井高が高めに作られているため、住居としての改造に当たり一つの住区画の一部に中二階や階段を増設して居住空間を増やし、残りの天井の高い部分は作品制作のためのスタジオやアトリエ、あるいは吹き抜けの居間にされる。また工場・倉庫の時のままのレンガ壁やコンクリートの床をそのまま利用し、むき出しの状態であることを売りにされることもある。ロフト形式の集合住宅は、老朽化した工場街や倉庫街を再生して街の新しい「芸術地区」として売り出すにあたり、ギャラリーなどとともに古い建物の中に導入されることが多い。 荒廃した廃工場や廃倉庫のロフトは、安価で広く窓も大きく、明るい制作空間を必要とする芸術家などの間でもともと人気があったが、後に芸術家のようなボヘミアン的な暮らしにあこがれる豊かな若者もロフトに住むようになった。欧米の大都市の再開発では、工場などをロフトに改造して高所得者用の住宅として販売するジェントリフィケーションの手法は一般的なものとなっている。例えばニューヨークのソーホーは鋳鉄建築の工場街が転じて1950年代以降アトリエ街となった例であり、近年の例では、ハドソン川沿いの西14丁目以南にある精肉工場群が1990年代以降にブティックやクラブに変身した「ミートパッキング・ディストリクト」がある。同様の例は全米に見られる。 ロサンゼルス市が2001年に制定した「適応型再利用条例」(アダプティヴ・リユース・オーディナンス、Adaptive Reuse Ordinance)などのように、経済的に立ち行かなくなった産業施設やオフィスビルを用途変更し、ロフトのある高品質な住宅や芸術家住宅へ転換することを推進する条例や法律も全米各地で作られている。これは都市文化の振興や、より魅力的な都市へと移住しようとするクリエイティブ階層の人々を惹きつけ集積させることも目指してもいる。 高所得層におけるロフトの需要の高まりに対し、不動産開発業者が廃工場を高い費用をかけてロフト住宅へ再生するだけでなく、すでにジェントリフィケーションの進んだ地区にロフト物件のある高級コンドミニアムをわざわざ新築する場合すらある。完全新築のロフト風高級住宅は、廃工場・廃倉庫地区など経済的に沈滞した地区に住む危険なくしてロフトの持つ都市生活の楽しさを享受しようというものであるが、家賃の安い怪しげな地区に集まって住む本来のロフト生活の精神やボヘミアニズムからは離れたものとする批判もある。
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