モジュライ空間を構成する方法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/01/01 02:21 UTC 版)
「モジュライ空間」の記事における「モジュライ空間を構成する方法」の解説
モジュライ函手(あるいは、もっと一般的にはグルーポイド(英語版)(groupoid)の中のファイバー化されたカテゴリ(英語版)(fibred category))のことばで、モジュライ問題の現代的な定式化とモジュライ空間の定義を行うことは、グロタンディェック(Grothendieck)(1960/61)にまで遡る。その中で彼は、例として複素解析幾何学の中でタイヒミューラー空間(英語版)(Teichmüller space)を使い、一般的なフレームワークやアプローチや主要な問題を記述した。特に、話の中では、まず第一にモジュライ問題を剛性化することで、モジュライ空間を構成する一般的方法を述べた。 さらに詳しくは、モジュライ空間を分類する非自明な対象の自己同型の存在が、詳細モジュライ空間を持つことを不可能とする。しかし、もともとのデータに情報を付加し、付加した情報を髪して自己同型のみで同一視する方法をとって分類するという変形されたモジュライ問題を考えることがよくある。剛性化された情報をうまく選択すると、変形したモジュライ問題は、(詳細)モジュライ空間 T をもつことがあり、適当なヒルベルトスキーム(Hilbert scheme)やクオットスキーム(英語版)(Quot scheme)の部分スキームとして記述されることがよくある。剛性化している情報をさらに選ぶと、代数的構造群 G を持つ主バンドルと対応する。このように、剛性化された問題から元来の問題へ、G の作用による商をとることにより戻ることができ、モジュライ空間を構成する問題が (ある強い条件を課した上で)G の作用での T の商 T/G であるようなスキーム(もしくはより一般的には空間)を見つける問題となる。一般に最後の問題は解をもたないが、しかし、1965年にダヴィッド・マンフォード(David Mumford)により1965年に開発された画期的な幾何学的不変式論で指摘され、適当な条件の下で、実際、そのような商が存在することが示された。 これがどのようにして達成されたかを見るため、種数が g > 2 の滑らかな曲線をパラメトライズする問題を考える。次数 d > 2g である完備一次系(英語版)(complete linear system)は、射影空間 Pd−g の 1次元部分スキームに同値である。結局、(ある条件を満たす)滑らかな曲線と一次系は、十分に高い次元の射影空間のヒルベルトスキームに埋め込めるであろうから、このヒルベルトスキームの中の軌跡 H は一次系の要素を変換する PGL(n) の作用をもつ。滑らかな曲線のモジュライ空間は、従って、射影空間の一次系の群による H の商として再現される。 別の一般的なアプローチとしては、最初に、ミハイル・アルティン(Michael Artin)によるものがある。彼のアイデアは、分類された種類の対象から始め、それの変形理論(英語版)(deformation theory)を研究する。このことは、最初無限小(infinitesimal)を構成し、それから予備表現可能定理(prorepresentability theorem)を示し、これらを形式スキーム(英語版)(formal scheme)の基底の上の対象へ写像する。次にアレクサンドル・グロタンディーク(Alexandre Grothendieck)のグロタンディークの存在定理(英語版)が完備局所環である基底の上の求めていた対象をもたらす。この対象は、アルティンの近似定理(英語版)(Artin's approximation theorem)を通し、有限生成環上の対象により近似できる。この後者の環のスペクトルは、求めているモジュライ空間のある種の座標チャートとみなすことができる。これらのチャートを互いに貼り合わせて、空間を覆うことができるが、スペクトルの合併からモジュライ空間への写像は、一般には、多 対 1 の写像となる。従って、前者の上に同値関係を定義する。本質的にはもし両者が互いに同型な対象であれば 2点は同値である。これがスキームと同値関係をもたらし、いつもスキームとなるとは限らないが、代数的空間(英語版)(実際は、注意深くすると、代数的スタック)を与える。
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