ミラーテストの方法と歴史
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/11 23:02 UTC 版)
「ミラーテスト」の記事における「ミラーテストの方法と歴史」の解説
ミラーテストの発祥については、チャールズ・ダーウィンと動物園のオランウータンの逸話にまで遡る事ができる。1838年、ダーウィンがロンドン動物園を訪れて、ジェニーという名のオランウータンを観察した。その時、このオランウータンは、飼育員にリンゴでからかわれて、癇癪を起こしていた。この出来事は、ダーウィンに、オランウータンの主観的経験について考えさせるきっかけになった。また、ダーウィンは、ジェニーが鏡を見つめる姿をも観察し、ジェニーは鏡に映る自分の姿は自分自身であると認知しているかも知れないと述べている。 1970年、ギャラップは、思春期前にあたる野生のチンパンジー(Pan troglodytes)の雄2頭と雌2頭を用いて、自己認知の可能性についての実験的調査を行った。4頭のすべてがそれまで鏡を見た事がないと推定された。チンパンジーは個別に1頭ずつ2日間部屋に入れられた。次に、全身を映せる大きさの鏡が合計80時間部屋の中に置かれ、定期的に距離が縮められていった。チンパンジーに鏡を見せると、様々な振舞いが観察された。最初はチンパンジーは、自身の像に対して威嚇的な身振りを示した。おそらく鏡像を脅威的な存在として受け取ったからであろう。最終的には、鏡が無い時には観察されなかった箇所のグルーミングを行ったり、鼻を突いたり、顔をしかめたり、自身の像にシャボン玉を吹きかけたりするというように、鏡像を利用する形で、自身を対象にした反応行動を取った。 ギャラップはさらに研究を推し進め、チンパンジーの外見に手を加えて、その鏡像に対する反応を観察した。ギャラップはチンパンジーに麻酔をかけ、赤色のアルコール溶性の塗料を眉弓と、その反対側の耳の上半分に塗った。乾くと匂いもなく、触ってもわからない塗料が用いられた。ギャラップはチンパンジーを鏡の無い檻に戻し、意識の回復を待った。そして、チンパンジーが自発的に着色された箇所を触れる頻度が記録された。30分後、鏡が檻の中に入れられ、着色箇所が触れられる頻度が再び観察された。着色箇所に触れられる頻度は、鏡が無い状態を1として、4から10に増加した。チンパンジーが着色箇所を触った指を見つめたり、匂いを嗅いだりする行動も時折観察された。その他にも、着色箇所に関係する行動として、振り返ったり体位を調節して、着色箇所が鏡に映りやすくしたり、鏡を見ながら手足で触って調べるという行動が観察された。 この古典なマークテストにおける重要な点としては、触っても気づかない塗料を用いる事である。それによって、体性感覚に基づいてマークに注意が向く事を防止している。古典的ミラーテストの多くの実験において麻酔が使用されているのもこの理由のためである。一部の調査では、触知可能なマークが使用されている。 鏡像が自分の姿である事を認知できると考えられている動物は、鏡に向かうと、多くの場合、次の4つの行動の段階を進む。 社会的反応をとる。 物理的な意味での探査(鏡の後ろを見るなど)。 鏡を確認する反復的動作。 自身の像が映っている事を理解する。 ギャラップは追跡調査を行った。鏡を見た事のない2頭のチンパンジーに麻酔をかけ、マークを付けた。意識が回復するのを待ち、これらのチンパンジーの振舞いが観察された。彼らは、鏡を見せられる前も、鏡を見せられた後も、マークに起因する行動を取らなかった[要出典]。 1979年、Michael LewisとJeanne Brooks-Gunn が人間の母子を対象にして、自己認知を調査するためルージュテストを行った。
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