プール式魚道
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/17 16:05 UTC 版)
バーチカルスロット式魚道(石川県鍋谷川北沖用水堰) 越流式(アイスハーバー式)魚道(埼玉県利根川利根大堰) 水路の中に多数の仕切壁(隔壁)を連ね、その間に低流速の湛水域(プール)を設けた魚道をプール式魚道と言う。この魚道では、隔壁により水路内の流速を抑えられ、隔壁間の低流速域で魚が休息出来る。隔壁部で水をどう流すかで、越流式、バーチカルスロット式、潜孔式に区分される。越流式は隔壁上から水を越流させる方式であり、バーチカルスロット式は隔壁に空けた縦溝から水を流す方式である。一方、潜孔式は隔壁下部に空けた穴から水を流下させる方式である。 越流式には階段式、アイスハーバー式等がある。前者は古くから用いられている形式で隔壁上に段差を付けたものが多い。後者は隔壁の一部を高くして非越流としたもので、その両脇または片脇で水が越流するようにしたものである。非越流壁の後ろを安全な休息場として確保し、乱流を抑えることを狙っている。階段式、アイスハーバー式いずれの魚道でも洪水時にプール内に溜まる土砂、石レキを排除するため、隔壁下端に潜孔を設ける場合が多い。その際、アイスハーバー式では、流れの安定ともう一つの副次的な遡上経路にすることをねらって大きめの潜孔にする。 プール式魚道の隔壁部での流れは概して速く、魚にとって遡上の難所となる。 特に魚道上流の水位が上がると、隔壁部の流速も上がるので遡上は困難になる。この流速上昇はバーチカルスロット式、潜孔式では越流式ほど大きくなく、潜孔式では流速に加え、流量変動も抑制されるので、魚道内の流況は比較的安定する。 反面、これらの魚道では隔壁部の流速を十分抑えるために、隔壁上下流の水位差を越流式よりも小さくしなければならず、このため、魚道の勾配は緩やかになり、長大な魚道となってしまう。これは建設費の増大につながり、魚道配置の適正化にとってもマイナスとなる。また、これらの魚道では、隔壁部のゴミづまり等の問題にも注意を要す。例えば、バーチカルスロット式では浮遊ゴミでスロット閉塞すれば、局所的に水位差増大、流速増大となり、遡上の難所が出来る。一方、潜孔式では流下石レキによる閉塞が問題になりうるが、潜孔上流の接近流速は概して速くないので、大きな問題にならない可能性もある。例えば、階段式魚道でも土砂排除用に潜孔が設けられるが、この部分に石レキが詰まって水位差増大となった事例はない。
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