フェルミディラック‐とうけい【フェルミディラック統計】
フェルミ分布関数
(フェルミ-ディラック統計 から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/11/21 06:05 UTC 版)
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フェルミ分布関数(フェルミぶんぷかんすう、英: Fermi distribution function)とは、相互作用のないフェルミ粒子の系において、一つのエネルギー準位にある粒子の数(占有数)の分布を与える理論式である[1]。フェルミ・ディラック分布とも呼ばれる。
定義
理想フェルミ気体の逆温度β、化学ポテンシャルμ、連続変数としてのエネルギーεを用いて
と定義される関数をフェルミ分布関数と呼ぶ。フェルミ分布関数は 0 から 1 の間の値をとる。
低温でのふるまい
絶対零度(T→0, β→∞)の極限では、フェルミ分布関数はヘヴィサイドの階段関数を用いて
となる。このときの化学ポテンシャルをフェルミエネルギーと呼ぶ。
占有数としての意味
量子数νで指定されるエネルギー準位ενを占有しているフェルミ粒子の個数 nνの統計的期待値⟨nν⟩を考える。占有数はマクロな観測量では無いが、期待値を求めておくと量子理想気体などの解析に便利である[2]。⟨nν⟩をグランドカノニカル分布で求めると、以下のようになる[3]。
つまりフェルミ分布関数のεに占有数の期待値を求めたい準位のエネルギーενを入れると占有数の期待値が求まる。フェルミ分布関数が 0 から 1 までの値しかとれないことは、パウリの排他原理によりフェルミ粒子が一つの準位には一つまでしか占有できないこととも整合している。
注意点
実際にフェルミ分布関数を用いる場合には、準位が存在しないエネルギーεでのフェルミ分布関数を考えることがある。しかしそのような場合、準位が存在しないエネルギー領域でのフェルミ分布関数の値に占有数としての意味は無い。
たとえば半導体や絶縁体中の電子を考える際、フェルミエネルギーがエネルギーギャップ中に存在するため、エネルギーギャップ中まで拡張したフェルミ分布関数を考えることが多い。
脚注
参考文献
- 高田康民『多体問題』朝倉書店〈朝倉物理学大系〉、1999年。ISBN 978-4-254-13679-1。
- Kittel, Charles 宇野良清、津屋昇、新関駒二郎、森田章、山下次郎訳 (2005). キッテル固体物理学入門 (8 ed.). 丸善出版. ISBN 978-4-621-07653-8.
関連項目
フェルミ・ディラック統計
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/01/03 02:56 UTC 版)
「粒子統計」の記事における「フェルミ・ディラック統計」の解説
詳細は「フェルミ=ディラック統計」を参照 系のあらゆる2粒子の交換について、系の状態は反対称となる。すなわち、系の波動関数は交換前と交換後で正負が逆。 系の波動関数の符号以外の値は変化しない。 排他定理 同一状態にある2つの粒子を考えるとき、粒子の座標を交換しても系全体の状態(波動関数)は不変である。すなわち交換対称である。 この交換対称性とフェルミ=ディラック系の交換反対称性とを組み合わせると、「交換前および交換後のいずれについても系の波動関数はゼロ」の場合にのみ成立する。これは、フェルミ=ディラック統計において、2つ以上の粒子が同一の状態をとらないことを示す。これはパウリの排他原理と呼ばれる。 半整数スピンを持つ粒子(フェルミ粒子)はフェルミ=ディラック統計に従う。フェルミ粒子の例は、電子、陽子、およびヘリウム-3などがある。
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