物理学におけるエニオン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2016/09/16 15:36 UTC 版)
三次元以上の空間における粒子は、それらの量子統計に従ってフェルミ粒子もしくはボース粒子のどちらかに分類される。フェルミ粒子はフェルミ・ディラック統計に従い、ボース粒子はボース・アインシュタイン統計に従う。量子力学によって、これは粒子交換の下での多粒子状態の振る舞いとして定式化される。二粒子状態について、ディラック記法を用いて次の数式で表すことができる。 | ψ 1 ψ 2 ⟩ = ± | ψ 2 ψ 1 ⟩ {\displaystyle \left|\psi _{1}\psi _{2}\right\rangle =\pm \left|\psi _{2}\psi _{1}\right\rangle } | … ⟩ {\displaystyle \left|\dots \right\rangle } 内の最初の項は粒子1の状態であり、二番目の項は粒子2の状態である。これは、例えば、左側は"粒子1は ψ 1 {\displaystyle \ \psi _{1}} の状態にあり、粒子2は ψ 2 {\displaystyle \ \psi _{2}} の状態にある"と解釈される。ここで、"+"は両方の粒子がボース粒子であることに対応し、"−"は両方の粒子がフェルミ粒子であることに対応する。これらの粒子は区別可能であるため、フェルミ粒子およびボース粒子の複合状態は取りえない。 しかしながら、二次元の系においては、フェルミ・ディラック統計およびボース・アインシュタイン統計の間を連続的につなぐ統計に従う準粒子を観測することができる。1977年にオスロ大学のJon Magne LeinaasおよびJan Myrheiminによって、このことが初めて示された。 先の二粒子状態の例を、二次元の系で構成し直すと次の数式で表すことができる。 | ψ 1 ψ 2 ⟩ = e i θ | ψ 2 ψ 1 ⟩ {\displaystyle \left|\psi _{1}\psi _{2}\right\rangle =e^{i\,\theta }\left|\psi _{2}\psi _{1}\right\rangle } ここで、iは虚数単位、θは実数の位相因子である。また、 e i π = − 1 {\displaystyle e^{i\pi }=-1} であるので、 | e i θ | = 1 {\displaystyle |e^{i\theta }|=1} かつ e 2 i π = 1 {\displaystyle e^{2i\pi }=1} なので、 θ = π {\displaystyle \theta =\pi } の場合はフェルミ・ディラック統計(符号が負)となり、θ = 0 (または θ = 2 π {\displaystyle \theta =2\pi } ) の場合はボース・アインシュタイン統計(符号が正)となる。θがこれら以外の値(θ≠nπ)をとる場合には、また違った結果を得る。この場合には、粒子が交換されるとき、それらはあらゆる位相をとることができるので、フランク・ウィルチェックはそのような粒子を記述するために"エニオン"という言葉を提唱した。 粒子のスピン量子数をsとして、 θ = 2 π s {\displaystyle \theta =2\pi s\;} を用いたとき、sが整数ならボース粒子、半整数ならフェルミ粒子となる。すなわち、次の数式が成立する。 e i θ = e 2 i π s = ( − 1 ) 2 s {\displaystyle e^{i\,\theta }=e^{2\,i\pi s}=(-1)^{2\,s}} or | ψ 1 ψ 2 ⟩ = ( − 1 ) 2 s | ψ 2 ψ 1 ⟩ {\displaystyle \left|\psi _{1}\psi _{2}\right\rangle =(-1)^{2\,s}\left|\psi _{2}\psi _{1}\right\rangle } 分数量子ホール効果の端の領域においては、エニオンは一次元空間に制限される。一次元エニオンの数学的モデルは、上述の交換関係の基礎を与える。
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