物理学における因果律
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/22 05:26 UTC 版)
古典物理学での因果律とは、指定された物理系において「現在の状態を完全に指定すればそれ以後の状態はすべて一義的に決まる」と主張するものであったり、「現在の状態が分かれば過去の状態も分かる」と主張するものである。 また相対性理論の枠内においては、情報は光速を超えて伝播することはなく、光速×時間の分以上離れた距離にある2つの物理系には、時間を遡って情報が飛ぶ事なしに、上記の時間内に情報のやり取りは起こらない。物理学の範疇ではこの「光速を超える情報の伝播は存在しない」という原理を同じく因果律という。 原子や分子程度の極めて小さなスケールの現象では量子力学的な効果が無視できないほど大きく、古典的な意味での因果律は完全には成り立たない。量子力学における基本方程式であるシュレディンガー方程式の解たる状態関数は、シュレディンガー方程式が満たす状態の確率振幅しか与えず、ある時点における物理的な状態が決定したとしてもその後の状態が一義的に決まるわけではないことを示している。 古典的定義から離れ因果律の定義を「時間軸上のある一点において状態関数が決まれば以降の状態関数は自然に決まる」と解釈すれば「量子論的領域でも因果律は保たれる」と言える。また、一見因果律が破れているように見える思考実験であるEPR相関においても、実際光速を超えているのは状態関数の収縮速度であり、状態関数そのものが演算子によって書き換えられる(つまり情報を受け取る)わけではなく、因果律は保たれていると言える。
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