フィレンツェ時代の作品との相違点
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/17 17:39 UTC 版)
「アルドブランディーニの聖母」の記事における「フィレンツェ時代の作品との相違点」の解説
ラファエロがローマ時代初期に描いた聖母子をモチーフとした作品は、ウルビーノ時代やフィレンツェ時代の作品と比較すると、衣服やポーズの表現が親しみやすく砕けたものになっている一方で、作品構成はより複雑なものとなっている。ヴァチカン宮殿ラファエロの間のフレスコ壁画『アテナイの学堂』に見られるような、宝石を思わせる寒色系顔料の多用が 陶磁器のような鮮やかさを画面に与えている。 ラファエロがフィレンツェ時代に当時のウルビーノ絵画の様式である厳格な神聖表現の影響のもとで描いた『アンシデイの聖母』(1505年、ナショナル・ギャラリー(ロンドン)所蔵)と『アルドブランディーニの聖母』では、その構成や雰囲気などが好対照といえる。『アルドブランディーニの聖母』のマリアはより実在の母親らしく描かれ、頭上の円光以外に聖性をあらわすものは見られない。キリストもヨハネもあどけない幼児で、ごくありふれた普通の部屋を背景として描かれている。さらにこの『アルドブランディーニの聖母』は、『アルバの聖母』(1510年、ナショナル・ギャラリー・オブ・アート(ワシントン D.C.)所蔵)に見られるような、ラファエロのローマ時代の特徴といえる深い自然主義へと向かう過渡期の作品としても重要な絵画となっている。 フィレンツェ時代の作品と比べると、ラファエロがローマ時代に描いた聖母マリアは、より豊麗で堂々とした容姿で表現されている。これは痩せた女性が好まれていたウルビーノとローマとでは美人の基準が異なっていたことと、ラファエロ自身の女性の好みが変わっていったことによる。ラファエロは弟子たちに「あるがままの姿で描くのではなく、あるべき姿で描くことが重要だ」と教えていた。 ローマ時代におけるラファエロの画家としての成長に、もっとも大きな影響を与えたのはラファエロよりも7歳年長の芸術家ミケランジェロだった。また、『アルドブランディーニの聖母』の絵画構成は、二枚の窓越しに見える風景を背景とした聖母子やマリアの服装などにレオナルド・ダ・ヴィンチの『リッタの聖母』(1490年ごろ、エルミタージュ美術館)を髣髴とさせる要素が見られる。
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