ピエール・ド・マリボーとは? わかりやすく解説

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マリボー【Pierre Carlet de Chamblain de Marivaux】


ピエール・ド・マリヴォー

(ピエール・ド・マリボー から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/02/04 22:23 UTC 版)

マリヴォー
ルイ=ミシェル・ヴァン・ローによって描かれたマリヴォー
誕生 Pierre Carlet de Chamblain de Marivaux
(1688-02-04) 1688年2月4日
フランス王国パリ
死没 (1763-02-12) 1763年2月12日(75歳没)
フランス王国パリ
職業 劇作家小説家
言語 フランス語
ジャンル 小説ロマンティック・コメディ
文学活動 啓蒙時代
代表作 『愛と偶然との戯れ(fr:Le Jeu de l'amour et du hasard)』(1730年初演)
デビュー作 fr:Le Pere prudent et equitable』(1712年
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ピエール・カルレ・ド・シャンブラン・ド・マリヴォーフランス語:Pierre Carlet de Chamblain de Marivaux1688年2月4日 - 1763年2月12日[1])は、フランス王国(現:フランスパリ出身の劇作家小説家。生涯に約40の戯曲を著した。

アカデミー・フランセーズの座席24番の会員で、これまで伝統的であった同国出身の劇作家モリエール流の喜劇を改革し、女性に於ける恋愛心理の分析を特色とする喜劇を創始した[2]

代表作は1730年パリ・イタリア座フランス語版で初演された『愛と偶然との戯れ英語版フランス語版』である[3]。同作は2011年宝塚歌劇団星組によって『めぐり会いは再び』のタイトルで上演されている[4][5]

また、マリヴォーの作品は極めて特徴的で、戯曲の主人公は決まって女性であり[6]、作品にロマンティック・コメディを組み込み、繊細で気取りを表現した文体は「マリヴォダージュ」Marivaudage と呼ばれる[3][6]

マリヴォーは女性の恋愛心理を細かい描写で表現した。しかし、マリヴォーの存命中には観客から作品が充分に理解されず、収入的に失敗することも多かったが、20世紀に入ってから高く評価されるようになった[7]

生涯

1688年2月4日、フランス王国(現:フランス)のパリに、ノルマンディー出身の法服貴族資本家だった[6]ニコラ・カルレ Nicolas Carlet の元に生まれる。父の仕事の都合によりリヨンからリモージュ移住し、幼少期はパリを離れてオーヴェルニュで過ごした。

最初は神愛オラトリオ会英語版で学び、1712年にパリに戻り、法律を学んだ。

なお、パリでは同国出身の著述家ベルナール・フォントネルと親しくなり、フォントネルと知り合った以降は同国出身のランベール女公爵こと作家アンヌ=テレーズ・ド・マルゲナ・ド・クルセル英語版フランス語版哲学者ジャン・ル・ロン・ダランベールであるタンサン女公爵ことクロディーヌ・ゲラン・ド・タンサン英語版フランス語版サロンに出入りしていた。

1706年処女作である詩喜劇『Le Père prudent et équitable(賢明で公平な父親)』を著し、6年後の1712年に刊行された。

1710年代は戯曲よりも小説を多く著した(作品については当記事#作品を参照されたい)。なお、この頃、同国出身の作家アントワーヌ・ウダール・ド・ラ・モット英語版フランス語版と知り合っている。

1720年にはマリヴォー唯一の悲劇アンニバルフランス語版』をコメディ・フランセーズにて上演したが、失敗した[6]。しかし同年、イタリア人俳優ルイージ・リッコボーニ英語版フランス語版が率いるパリ・イタリア座で[7]恋に磨かれたアルルカン英語版フランス語版』を上演して人気を博し、劇作家としての地位を確立した[3]

その後、スコットランドの財政家ジョン・ローミシシッピ会社への投資によって破産[8]、社会的な矛盾を感じるようになる。1711年からイギリスエッセイスト詩人ジョゼフ・アディソンリチャード・スティール英語版が刊行していたエッセイ新聞ザ・スペクテーター」を模倣し、独自に1721年から1724年にかけて[注釈 1]新聞「スペクタトゥール・フランセ(Le Spectateur Français)」を刊行した。

1722年5月5日には戯曲『恋の不意打ち英語版フランス語版』を上演し、翌年1723年4月6日には『二重の不実英語版フランス語版』を上演した。

1742年から1763年にかけてアカデミー・フランセーズ座席番号24番の会員を務める。

1763年2月12日にパリで亡くなる。

作品

マリヴォーの作品に登場する主人公は決まって女性であり、繊細な言葉遣いや言い回しは「マリヴォダージュ」と呼ばれる。ロマンティック・コメディの作品も多いが、『理性の島英語版フランス語版』のように人間平等を主張する作品もある。

戯曲

日付は初演された日である。

小説

  • Pharsamon ou Les Folies
  • 1714年、『Les Aventures de *** ou les Effets surprenants de la sympathie
  • 1714年、『La Voiture embourbée
  • 1714年、『Le Bilboquet
  • 1717年、『Le Télémaque travesti
  • 1731年、『マリヤンヌの生涯』La Vie de Marianne - 未完の小説。
  • 1735年~1736年、『成り上がり百姓』Le Paysan parvenu - 未完の小説。

日本で刊行された作品

  • 『愛と偶然の戯れ』(1935年、岩波書店,、進藤誠一訳)
  • 『偽りの告白』(1955年、岩波書店、鈴木力衛訳)
  • 『愛と偶然との戯れ』改版 (1978年、岩波文庫、進藤誠一訳)
  • 『マリヤンヌの生涯』1, 2, 3, 4 (1988年、岩波文庫、佐藤文樹訳)
  • 『新マリヴォー戯曲集』(1989年、大修館書店
    • 収録作品:「いさかい」「愛の勝利」井村順一 訳、「二重の不実」鈴木康司訳、「贋の侍女」佐藤実枝 訳
  • 『贋の侍女:または、罰をうけたペテン師』(1994年、咲良舎、佐藤実枝 訳)
  • 『変装の王子:または、名高き遍歴の士』(1995年、咲良舎、井村順一 訳)
  • 『うまくいった策略』(1995年、咲良舎、鈴木康司 訳)
  • 『奴隷島』(1996年、咲良舎、佐藤実枝 訳)
  • 『愛と偶然の戯れ』(1996年、咲良舎、鈴木康司 訳)
  • 『ユートピア劇三部作(奴隷の島、理性の島、新天地)』(ユートピア旅行記叢書14 所収、1997年、岩波書店、佐藤実枝、鈴木康司、井村順一 訳)
  • 『マリヴォー戯曲選集』(2006年、早稲田大学出版部、佐藤実枝 訳)
    • 収録作品「恋の不意打ち」「恋の不意打ち その2」「遺贈」「率直な人々」「試練」「本気の役者たち」
  • 『贋の侍女・愛の勝利』(2009年、岩波書店、佐藤実枝、井村順一 訳)
  • 『マリヴォー 偽りの打ち明け話 翻訳と試論』(2013年、早稲田大学出版部、佐藤実枝 訳)

参考文献

関連項目

脚注

注釈

  1. ^ 『スペクタトゥール・フランセ』の刊行に関しては1722年から1723年に刊行したともされる。

出典

  1. ^ Pierre Marivaux | French author” (英語). Britannica. 2025年2月4日閲覧。
  2. ^ 万有百科大事典 文学 1973, p. 614.
  3. ^ a b c グランド現代百科事典 1983, p. 330.
  4. ^ 『ノバ・ボサ・ノバ』『めぐり会いは再び』|星組|東京宝塚劇場”. 宝塚歌劇|公式HP. 2025年2月4日閲覧。
  5. ^ 星組公演『めぐり会いは再び2nd~Star Bride~』|”. 宝塚歌劇公式HP. 2025年2月4日閲覧。
  6. ^ a b c d 世界大百科事典 1972, p. 202.
  7. ^ a b 万有百科大事典 音楽・演劇 1974, p. 535.
  8. ^ 改訂新版 世界大百科事典、日本大百科全書(ニッポニカ)『マリボー』 - コトバンク

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