モーツァルト:ピアノ・ソナタ 第17(16)番 変ロ長調
英語表記/番号 | 出版情報 | |
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モーツァルト:ピアノ・ソナタ 第17(16)番 変ロ長調 | Sonate für Klavier Nr.16 B-Dur K.570 | 作曲年: 1789年 出版年: 1796年 初版出版地/出版社: Artaria |
作品解説
モーツァルト自身が作成した『自作目録』には、1789年2月の日付と、「クラヴィーア用のソナタ」とある。ただし、作曲者死後の1796年にアルタリア社から出版された初版譜は、「ヴァイオリン付きのソナタ」となっている。この編曲がモーツァルト自身の手によるものなのかは不明であるが、他人の手によるものであるという説が有力である。
第1楽章 変ロ長調 4分の3拍子 ソナタ形式
主要主題は、冒頭にユニゾンで開始される2分音符+4分音符リズムの分散和音音型をもっている。旋律的にも律動的にも発展的要素があまり感じられないこの動機が、実は楽章全体の核となっている。29小節にわたる長い推移部の中に、下属調の推移主題があらわれる(第23小節~)。属調の副次主題は、主要主題の冒頭楽想によって導かれ、同音反復と順次下行音型から成る(第41小節~)。この主題も、旋律的な性格は弱く、この楽章における唯一のカンタービレ楽想は推移主題ということになる。
後半部分(第80小節~)は、この推移主題によって開始される。変ニ長調、変ロ短調、ヘ短調、ハ短調、を経過的に経由し、ト短調へと至る。属和音に終止すると、今度はト長調で副次主題があらわれる。しかし、ト長調の主和音はすぐにハ短調の属和音へと読みかえられ、上声と下声を転回してハ短調、ヘ短調へと転じ、変ロ短調を経由して主調の変ロ長調へと回帰する。
主要主題の再現(第133小節~)、副次主題の主調再現(第171小節~)を経て、提示部と同様のコーダ(第199小節~)をもって楽章を閉じる。
第2楽章 変ホ長調 4分の4拍子
Adagioの緩叙楽章。分散和音の下行・上行を描く旋律線は、第1楽章の主要主題との親近性を意識させる。ハ短調のエピソードをはさんで主題が回帰し、今度は変イ長調のエピソードがあらわれる。変ト音の出現によって変ホ短調を思わせながら、属和音を経由し、主題が回帰する。なお、この2度目の主題の回帰直前において、新モーツァルト全集はアインガングの挿入を提案している。
第3楽章 変ロ長調 2分の2拍子
第1楽章とは対照的に、躍動感に満ちた上昇指向の旋律線が特徴的な主題によって開始される。続いて、シンコペーション・リズムを特徴とした主題があらわれる(第23小節~)。この主題は、同音反復のバス声部をともなっており、この動機が次のセクションにおいて中心的な役割を果たすことになる。
2小節の短いブリッジを経て、同音反復と半音階下行を特徴とした中間部となる(第45小節~)。半音階的な変化音をともなった16分音符のパッセージが、切れ間なく冒頭主題の再現に接続し(第63小節)、シンコペーション・リズムの主題を再現した後(第71小節~)、同音反復によるバスが余韻を残す短いコーダ(第85小節~)をもって楽曲を閉じる。
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