ハーブと香辛料
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/06 15:33 UTC 版)
中世ヨーロッパで手に入る品のうちで香辛料はもっとも贅沢なものの一つであり、黒コショウ・シナモン(そしてより安価シナニッケイの桂皮)・クミン・ナツメグ・ショウガ・クローブがよく出回った。これらすべてはアジア・アフリカから輸入されたためきわめて高価になった。中世後期を通じて毎年西ヨーロッパに約千トンの黒コショウと千トンのその他の香辛料が輸入されたと推計される。これらの商品には150万人分の穀物と同等の価値があった。もっとも普及していた香辛料はコショウだったが、もっとも高価なものは鮮やかな黄紅色と香りをかもすサフランだった。今日ではほとんど忘れられた香辛料には、カルダモンの近縁で中世北フランスの料理にまでみられたギニアコショウのほか、ヒハツ・メース・カンショウ・クベバなどがある。砂糖は今日とは違い、非常に高価なことと体液に与えるとされた性質から香辛料の一種とみなされていた。 セージ・マスタード・パセリやキャラウェイ・ミント・ディル・フェンネルなどはヨーロッパ全土で栽培され料理に使われた。アニスは魚料理や鶏肉料理の香り付けに使われ、種は砂糖をからめてコンフィットという砂糖菓子として供された。マスタードは特に食肉製品によく用いられ、ヒルデガルト・フォン・ビンゲンは貧者の食物と記している。地元で栽培されたハーブは廉価で、上流社会の料理にもつかわれたが、香辛料に次ぐ副次的な調味料としてか、ただの彩りにつかわれただけらしい。中世の料理人が劣化した肉の味を誤魔化すために黒コショウなどの香辛料をふんだんに使ったという話は、今日よくある思い違いである。中世の祝宴は主人の財力と寛大さを見せびらかすための料理のイベントであり、貴族の多くが肉・魚・海産物の新鮮なものや保存加工したものを各種並べたものであり、消尽というに相応しいほど高価な香辛料を安価な腐りかけの肉に使うなどは頓珍漢な話であろう。
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