ダリアとともに世界チャンピオンへ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/09/06 18:09 UTC 版)
「ビル・パイアーズ」の記事における「ダリアとともに世界チャンピオンへ」の解説
1973年はパイアーズの騎手人生のなかでも代表的なシーズンになった。バンカー・ハント所有のダリアは、2歳(1972年)のときはピゴット騎手が乗っていたが、3歳の春からパイアーズが乗るようになった。フランス1000ギニーで3着に入ったあと、サンタラリ賞に勝ち、フランスオークスでも2着になった。このあと、ダリアにはアイルランド遠征計画が持ち上がった。フランスを主戦地とするパイアーズ自身は、イギリスやアイルランドへの遠征では現地の一流騎手に乗り替わるかもしれないと懸念していた。しかし、エジプト出身のモーリス・ジルベール調教師(Maurice Zilber)はアイルランドオークスの騎乗にパイアーズを指名した。 フランスで世代最強というわけでもないダリアのイギリス遠征には、否定的な見解が寄せられた。というのも、この年のイギリスにはミステリアス(Mysterious)という無敗の二冠牝馬がおり、これがアイルランドオークスに出てくるのである。ミステリアスの手綱を取るのは1971年にミルリーフでヨーロッパ中の大レースを総なめにしたジェフ・ルイス騎手(Geoff Lewis)で、ルイス騎手はダリアの挑戦を一笑に付した。しかし、ダリアはミステリアスを一瞬で差し切り、さらに3馬身差をつけて勝った。 2対1(3倍) の大本命だったジェフ・ルイスはこう言って笑い飛ばしたのさ、ダリアがミステリアスにかなう可能性はゼロだね、ってね。それで頭にきたダリアは、ミステリアスをやっつけたんだ。Geoff Lewis laughed and said that she had no chance against Mysterious, who started at 2-1 on, but Dahlia beat her on her ear. — ウィリアム・ビル・パイアーズ、レーシング・ポスト 2002年7月28日付「あの人は今?」 その12日後に、ダリアとパイアーズはキングジョージ6世&クイーンエリザベスステークスに駒を進めた。イギリスダービー馬ロベルト、フランスダービー馬のハードツービートらヨーロッパの一流古馬が揃ったこの競走で、ダリアは最後の直線で最後方から追い込んで、ゴールまで残り200メートルのところで先頭にたった。そこから更に後続を6馬身突き放してレコード勝ちをおさめ、上半期ヨーロッパチャンピオンの座についた。この競走を3歳牝馬が勝ったのは史上初で、イギリス競馬史上最も強いレースだと評する者さえいた。 秋のダリアはしばらく運に見放された。フランスに帰って秋の初戦ニエユ賞こそ勝ったものの、1.9倍の大本命で迎えたヴェルメイユ賞では競走中に蹴られて蹄踵(かかと)を怪我をして5着に終わった。この怪我が治るには2週間かかり、調教を再開できるようになった時には凱旋門賞が4日後に迫っていた。パイアーズは出走させるべきでないと考えたが、馬主は調整不足のまま出走を強行させた。しかし、最後の直線に入る前から後退し、着外に沈んだ。優勝したのはキングジョージ6世&クイーンエリザベスステークスで大きな差をつけて破った*ラインゴールド(Rheingold)だった。 このあとダリアは、「競馬の歴史を変えた」と言われるアメリカ遠征を行った。凱旋門賞の1か月後、ワシントンに近いローレル競馬場のワシントンDC国際招待に出走したのである。世間はこの年のアメリカ三冠馬セクレタリアトとの大陸間チャンピオン対戦の期待で大いに盛り上がり、ジルベール調教師は「セクレタリアトとのマッチレースをやるなら全財産を賭けてもいい、絶対に勝てる」と言い放った。(パイアーズはもう少し控えめな発言をした。)しかしセクレタリアト陣営はこれに応じずローレル競馬場の大レースの10日前にセクレタリアトを引退させてしまった。ダリアはアメリカ2番手のビッグスプルース(Big Spruce)を3馬身1/4突き放して勝った。この年ダリアはイギリスの年度代表馬となり、1年で100万ポンドも稼いだパイアーズは1973年に世界で最も活躍した騎手とされた。パイアーズは、自分が乗った最強馬はダリアだと述べている。 ダリアは翌1974年も走り、フランス、イギリス、アメリカ、カナダでG1競走を勝ち、アメリカのチャンピオンになった。しかしパイアーズは春に3回乗って全て敗れたため、乗り替わりになった。ピゴット騎手に乗り替わると告げられたパイアーズは抗議したが、その後もダリアが勝って得る賞金の一部を配分すると提案されて乗り替わりを承諾した。
※この「ダリアとともに世界チャンピオンへ」の解説は、「ビル・パイアーズ」の解説の一部です。
「ダリアとともに世界チャンピオンへ」を含む「ビル・パイアーズ」の記事については、「ビル・パイアーズ」の概要を参照ください。
- ダリアとともに世界チャンピオンへのページへのリンク