ゾロアスター主義
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/17 21:59 UTC 版)
詳細は「ゾロアスター教」を参照 ザラスシュトラ(ゾロアスター)の教えはいくつかの点で紀元前1800~紀元前1700年のペルシアに現れた。彼の叡智はゾロアスター教の基盤となり、一般にインド=イラン人の哲学の分枝であるイラン哲学の発展に影響した。ザラスシュトラは哲学の術語としての悪を初めて扱った人物である。彼は宗教史において最初の一神論者と信じられてもいる。彼は「よい思考(pendar-e-nik)、よい言葉(goftar-e-nik)、よい行い(kerdar-e-nik)」の優位に基づいた倫理哲学を支持した。 ザラスシュトラやゾロアスター教徒の著作はギリシア哲学とローマ哲学に顕著な影響を与えた。クニドスのエウドクソスのような古代ギリシア語著述家や大プリニウスのようなラテン語著述家といった何人かの人物がゾロアスター哲学を「最も有名で、最も有用」だと称賛している。プラトンはエウドクソスからゾロアスター哲学を聞き及び、自身の実在論に取り入れた。しかし、プラトンの『国家』の、「エルの神話」のくだりなどはザラスシュトラの『自然について』を剽窃したものだとして紀元前3世紀のランプサコスのコロテスが糾弾している。 18世紀後半になるまでその思想に関してはほとんど知られていなかったにもかかわらず、古典時代以降の西洋文化においてザラスシュトラは賢人、魔法使い、奇跡の人として知られていた。彼の思想が知られるまでは、彼の名前は古代の失われた叡智と結びつけて考えられ、それらの叡智にアクセスできると主張したフリーメイソンやその他の集団によって称揚された。ザラスシュトラはモーツァルトのオペラ『魔笛』(独: Die Zauberflöte)に異名「ザラストロ Sarastro」として登場し、「夜の女王」に対して道徳的な戒めを提示した。ヴォルテールのような啓蒙時代の著述家はゾロアスター教に関して、それがキリスト教より好ましい一種の理神論であるという考えのもとで研究を奨励した。 2005年に、オックスフォード哲学辞典は哲学的事件の年代記の中でザラスシュトラを第二位に位置づけた。ザラスシュトラの影響は、彼が築いたマズダ・ヤスナと呼ばれる合理的な倫理学の体系のためもあって今日も残っている。マズダ・ヤスナという言葉はアヴェスター語であり、日本語に訳すると「知識の信仰」となる。 ペルシアの哲学者フシュターナーもまたザラスシュトラの思想・哲学の影響下にあり、さらに、フシュターナーの弟子のデモクリトスを通じてギリシア哲学に影響を及ぼした。ユダヤ教やギリシアの神秘主義的宗教がキリスト教の形成に影響を与えたのと同じだけゾロアスター教もキリスト教の形成に影響を与えたと目されている。
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