ソーカル事件との比較
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/01/03 17:40 UTC 版)
「ボグダノフ事件」の記事における「ソーカル事件との比較」の解説
いくつかの文書はボグダノフ事件をソーカル事件に対比させて「逆ソーカル事件」と表現している。ソーカル事件とは、物理学者アラン・ソーカルが偽論文を人文科学誌 Social Text に掲載させる事に成功した事件である。ソーカルの本来の意図は、彼が「より適切な言葉が無いので、ポストモダニズム」と呼ぶ知性の動向を試すことにあった。この「ラショナリストの啓蒙時代からの伝統に対する多かれ少なかれ明白な拒絶」を憂いて、ソーカルは後に非正統的かつ無統制だったと喜んで認めることになる実験を実行に移すことにした。その実験は大きな反響の渦を巻き起こし、彼にとって驚いたことに、『ル・モンド』紙に取り上げられ『ニューヨーク・タイムズ』紙では第一面に掲載された。ふたつの事件を比較した最初期の文書のひとつは物理学者ジョン・バエズ (John Baez) が2002年10月にニュースグループの sci.physics.research に投稿し大きな反響を呼んだものである。 イゴールとグリシュカはともに自身の仕事の正当性を強く主張しており、かつ論文を出した分野についての専門性を(根拠となるものの誠実さが疑問視されたとはいえ)保証されていた。それに対して、アラン・ソーカル(物理学者)は論文を書いた分野(人文科学)の門外漢であり、最終的に自ら論文は悪戯だったという声明を出している。実際、ソーカルは journal の論説手順の脆弱さを晒す記事を書いている。sci.physics.research への返信 でソーカルは彼による後日談を読者に対し提示している。その中で彼は「私のパロディを出版した単なる事実」はただ特定の専門誌の編集者たちが「知的義務について職務怠慢」である事を証明したに過ぎない、と記している(『ニューヨーク・タイムズ』紙によると、ソーカルは自分のスタイルに因んだ悪戯をボグダノフ兄弟が企てなかった事に「ほとんど失望」し、「あちらにあてはまればこちらにもあてはまる」("What's sauce for the goose is sauce for the gander,") と述べた)。最初期に比較を行った Baez は後に意見を撤回し、兄弟が「ありそうな行為だったために面目を大きく失った」 (the brothers "have lost too much face for this to be a plausible course of action") と述べた。 コーネル大学の物理学教授 ポール・ギンスパーグ は、「ここで著者らは、何らかの知的自惚れを指そうとしているというより、明らかに専門分野の知の威信による信任を得ようとしている」と書き、ふたつの事件の対照的な点は明々白々であるとしている。彼は加えて、基準が低かったり一定でなかったりするいくつかの専門誌と研究施設は「ほとんど暴露」されていると述べている。しかし、両方の事件とも査読制度の信頼性・信任のみに基づいた論文の価値・学問上の業績の学会による適切な評価などに関する議論を広く巻き起こした。
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