ケンプの重要性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/22 20:20 UTC 版)
「マージェリー・ケンプ」の記事における「ケンプの重要性」の解説
ケンプは、その書が自伝的性質をもつために重要ともいえる。つまり、中世のミドルクラスの女性に関して得られる中では最良の洞察である。ケンプは俗人女性であり、ノリッジのジュリアンのような同時代の聖なる女性とは通常比較されない。ケンプは「風変わり」「狂人」と呼ばれることがあるものの、俗語神学や信仰に関する一般的実践を扱う近年の研究は、彼女が見かけほど奇妙ではなかったことを示している[要出典] 。その『書』は注意深く構成された霊的・社会的記録だと明らかになっている。自分が暮らす社会の要素を信用できる方法で探るため、フィクションとして書かれたという主張もある。ケンプは自らの書をフィクションとして書いたという案の裏付けとなるのは、彼女が自分を文中で「この被造物」と呼び、テクストと自身を切り離している事実である。しかし、これは神の卑しい被造物として謙遜を示す方法にすぎないかもしれない。 この自伝は「霊的探求の始まり。つまり長子出産後の精神的危機からの回復」 (Swanson, 2003, p. 142)で始まる。マージェリー・ケンプは読み書きができたという確実な証拠はないが、Leyserはその宗教文化が書物をもとにしていたのは間違いないとする。 彼女が読んでもらった書物の中には、リチャード・ロウルの『愛の火』があった。ウォルター・ヒルトンもケンプに影響した可能性が指摘されている。ケンプが読んでもらった他の本には、繰り返しになるが、スウェーデンのビルギッタ『啓示』がある。ケンプの巡礼は既婚で8人の子をもつ聖人、ビルギッタと関係付けられた。 ケンプとその『書』が重要なのは、中世後期イングランドで正統派教会とロラード派を代表とする分派が増えつつある状態で生じた緊張関係を表しているためである 。ケンプは霊的な履歴を通じて教会組織が説く教えを信奉しているか、聖俗の権威から疑念を抱かれていた。リンカン司教とカンタベリ大司教トマス・アランデルは彼女が公の場で聖書と信仰について教え、説教をしている、白衣を着ている(既婚者の偽善と解された)等の申し立てに対する審問に関わった。異端を抑圧する努力の中で、アランデルは女性に説教を禁ずる法を制定した。これは、女性の説教が教会法に反するという事実にもとづく。 15世紀にはケンプを隠修女とし、その『書』から異端とされかねない考えや振る舞いを削除したパンフレットが出版された。このため、彼女はノリッジのジュリアンのように誓願を立てた聖なる女性だと信じた後世の研究者もいた。オリジナルの『書』にある、複雑な心理をもつ霊的女性の登場は驚きとなった。
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