クローンと派生品
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/08 15:02 UTC 版)
「シンクレア ZX81」の記事における「クローンと派生品」の解説
シンクレアとタイメックスのライセンス契約により、タイメックスは3機種のクローンまたは派生品をアメリカ市場向けに開発した。ZX81の派生品である Timex Sinclair 1000 と Timex Sinclair 1500、ZX Spectrum の派生品である Timex Sinclair 2068 である。TS1000は1982年7月に発売され、注目を集めた。当日タイメックスには5,000件の問い合わせの電話があり、一週間で50,000件になった。基本的にはZX81と同じだが、1kBのメモリを余分に内蔵しており、トータルで2kBを内蔵している。発売から5か月で55万台を売り上げ、シンクレアはロイヤリティだけで120万ドルを得ることになった。 タイメックスはZX81の2機種目の派生品 TS1500 を開発し、1983年8月に発売した。メンブレンキーボードをやめ、ZX Spectrum に似たケースを採用し、16kBのメモリを内蔵している。ZX81とSpectrumのギャップを埋める機種である。しかしライバルが増えたことと、タイメックスがTS1000でマーケティングに失敗したことに起因し、TS1500は失敗に終わった。TS1000は当初大いに成功したが、拡張RAMパックを2, 3か月後まで発売できなかった。TS1000を購入した顧客は、家に帰って電源を入れてみて、メモリが小さすぎて何もできないことに気づいたという。 加えて、消費者の姿勢はアメリカとイギリスで大きく異なっていた。クライブ・シンクレアは Informatics 誌1981年6月号で「我々の競争相手は顧客がプログラミングを学びたがっていないと思っているようだ。我々(シンクレア・リサーチ)は、彼らがそのことと価格のせいで失敗すると思っている」と述べている。タイメックスも同様の考え方だったが、アメリカでは違っていたということになる。また、テキサス・インスツルメンツのTI-99/4AとコモドールのVIC-20が100ドルを切るレベルまで値下げし、TS1000の価格面の利点も帳消しとなった。アップル、アタリ、コモドール、TIといった競合他社はビジネスにも娯楽にも使えるマシンとして販売促進しており、実用的アプリケーションや美麗なグラフィックスやサウンドを売りとしていた。 TS1000の目新しさが帳消しとなり、プログラミングガイドが安価に出版されるようになると、アメリカの一般大衆はこのマシンでプログラミングを学ぼうとは思わなくなった。アメリカでは小売店に大量の在庫が残った。この経験から、小売店はタイメックス製品の在庫を抱えることをしぶるようになり、大手チェーン店はタイメックス製品を完全に扱わなくなった。 アメリカやイギリス以外のいくつかの国では、ZX81の海賊版が製造された。ブラジルでは、Microdigital Eletronica のTKシリーズ(例えば TK 85)や Prológica の CP-200 がある。アルゼンチンでは Czerweny Eletronica がCZ1000(ZX81クローン)とCZ1500(TS1500クローン)を製造した。香港では Lambda Electronics が Lambda 3000 を製造し、それ自体がさらに他社にコピーされるという事態になっている。韓国では金星電子が Famicom-30 として製造販売した。 全部がZX81をそのままコピーしたわけではなく、CP-200などは搭載メモリを増やし、キーボードも大きくなっている。多くはメンブレンキーボードではなくチクレットキーボードを採用している。イタリアの TELLAB が発売したクローン TL801 はZX80またはZX81をエミュレートでき、ジャンパの設定で変更可能になっていた。
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