クレイグ・キャルホーンの定義
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/08 09:08 UTC 版)
「ネーション」の記事における「クレイグ・キャルホーンの定義」の解説
スタイル以外でも、共同体を区別するその他の基準をわれわれは当然見出すことができる。たとえば、その規模の大小や、行政組織の階層化の程度、内部での平等の程度などなどである。nationとナショナリズムを研究する上で主要な目的は、nationにかかわる「想像された」集合的な連帯感の特殊な形式を見出すことである。クレイグ・キャルホーンの提供する以下のリストは、多かれ少なかれひとつの共同体がnationとして想像されるための基礎的条件になりうると思われるものをあげている。 境界線 (boundaries):地域的なものか、人工的なものか、両者を合わせたものかは問わない。 不可分性 (indivisibility):ひとつのnationはひとつの統合された単位 (integral unit) であるという主張。 主権 (sovereignty)あるいは主権への希求:他のnationとの間にある種の公式な平等関係が維持され、また通常は一種の自主性と、自給自足性が維持されていることが必要とされる。 合法性 (legitimacy)の「上昇 (ascending)」的あり方:政府は大衆の意志 (popular will) によって支持されている必要があり、最低限でも、「人民 (the people)」あるいは「民族 (the nation)」の利益に符合している必要がある。 集団の事務への大衆の参加 (participation):nationのメンバーであるという身分を基礎として一定の人々が動員されること(戦争にかぎらず、民間の活動においても)。 成員の身分 (membership) の直接性:すべての個人はnationの緊密な部分として理解され、成員の間にもまた完全な平等が存在すること。 文化 (culture):言語、共有の信仰、価値、さらに風俗習慣などを含む混合物。 時間的な深さ (temporal depth):nationは時間的な実在でなければならず、過去と未来の世代を含み、同時にその歴史を持つ。 共通の祖先 (descent) あるいは種族的な特性。 特別な歴史 (history) や、時には、特定の地域との神聖な関係。 注意すべきことは、これらの特徴はナショナルな「修辞」なのであって、通常nationを記述する特徴として主張されるものなのである。実際、われわれは経験的な手段に訴えてnationを定義することはできない。たとえば、主権が達成されているかどうか、内部が分裂しているか、一貫性が維持されているか、あるいははっきりとした境界線を引けるかどうか、ということをいうことはできない。逆に、nationは通例大いにこれらの主張によって構成されているのであり、これらの主張は単に記述的なものではなく、規範的なものでもある。これらの特徴は、ナショナルな感情の基礎を提供するに十分でありうるが、しかし、ひとつとして絶対に必要な特徴というものはない。
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