クラトンの形成
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/18 23:15 UTC 版)
地球の初期に存在した岩石からクラトンが形成されたプロセスは、クラトン化(英語版)(cratonization)と呼ばれている。クラトン性の陸塊は、太古代に形成された。太古代初期においては、地球内部からの熱流量は、現在の3倍近くあったと推定されている。これは、放射性同位元素の濃度が高かった上に、地球の降着形成 (accretion) 時の残熱が原因である。 その頃のプレート運動および火山性活動は、現在より相当活発であったと考えられており、マントルは現在よりも流動性が相当大きく、地殻はもっと薄かったとされる。これは、海嶺とホットスポットにおける海洋地殻の急速な形成、および沈み込み帯における海洋地殻の、急速なリサイクリングの原因となっただろう。当時の地球の表面付近は、恐らく、小さな多数のプレートに分断され、これに伴う火山島や弧状列島が大量に存在しただろうと考えられている。地殻性の岩石が、ホットスポットで融解と凝固を繰り返し、また沈み込み帯でリサイクルを繰り返すうちに、幾つかの始原大陸が形成された。こうして形成された始源大陸が、クラトンだとされる。 太古代初期においては、大きな大陸は存在しなかったと考えられている。おそらく、中太古代 (Mesoarchean) においては、高頻度の地殻変動が、より大きなユニットへの合体化を妨げたため、小さな始原大陸が普通であったろう。 これらの珪長質の始原大陸(クラトン)は、ホットスポットで様々な材料: 珪長質岩を溶かし込んだ苦鉄質(mafic) のマグマ、部分融解した苦鉄質岩、変成作用を受けた珪長質岩の堆積物、などから形成されたであろう。 最初の幾つかの大陸が太古代に形成されたにもかかわらず、この時代の岩石は、現存する地球上のクラトンの7パーセントを構成するに過ぎない。過去の形成物の侵食や破壊を勘案しても、現在の大陸地殻のうち、太古代に形成された部分は、どんなに多くとも、40パーセント程度に過ぎないことが、各種の証拠から示唆されている (Stanley, 1999)。 太古代に、クラトン化のプロセスが、最初どのようにして始まったかについての漸進的概観の1つが、ハミルトンによって与えられた (Hamilton, 1999)。 大部分が海底にあった、非常に厚い苦鉄質の岩盤の部分、その下の超苦鉄質岩盤、火成岩の岩盤、そして最も若い、珪長質の火成岩、および堆積岩は、部分融解によって流動性となった地殻下部に駆動され上昇する、複数のドーム状の珪長質のバソリス(底盤)の間で圧縮されて、複雑な向斜を形成する。 地殻上部の花崗岩とグリーンストーンの岩体は、ドーム状褶曲を伴う成分の転化を受けながら、穏やかな空間的な収縮を経て、地殻下部から切り離されるが、この後に、すぐにクラトン化が続く。 トーナル岩性の基盤岩が、幾つかのグリーンストーンの区域の下に保存されているが、基盤岩直上の堆積岩 (supracrustal rock) は、ほとんどの場合、若い貫入岩に取って代わられていった。恐らく、当時はマントルプルームが、まだ存在せず、発達途上の大陸は、より冷えた地域に集められていった。熱い地域の上部マントルは、部分的に融解しており、大部分が超苦鉄質の大量のマグマが、地殻の最も薄い部分に一時的に集中的にできた、海底の火道や裂け目を通じて噴出した。 現在まで生き残っている太古代の地殻は、より冷えた、マントルがより非活動的な地域でできた。そこでは、より大きな安定性が、部分的に融解した密度の低い珪長質岩が、通常はあり得ないほど厚い、火山性の集積物の形成を可能にした。
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