イテリメン族とは? わかりやすく解説

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イテリメン族

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/03/13 10:23 UTC 版)

イテリメン
Итәмән
Ительмены
イテリメンの舞踊グループ(2013年)
総人口
3,211人
居住地域
ロシア カムチャツカ地方
言語
イテリメン語ロシア語
宗教
シャーマニズムロシア正教会
関連する民族
チュクチ・カムチャツカ語族
イテリメン族の居住地域

イテリメン族(Itelmens)は、ロシアカムチャツカ半島に居住する同地の先住民族である。カムチャダール族(Kamchadal)ともいう。

生業と文化

17世紀末にカムチャツカ半島がロシアに併合されたことからロシア化が進んだ。古シベリア諸語イテリメン語(カムチャダール語)およびロシア語を解する。カムチャダールという名称は20世紀に入るころに当地に居住していた先住民、あるいは先住民と混血したロシア人を指した呼称で、イテリメンが自称である。コルホーズに属し、漁業狩猟園芸などに従事する。

漁撈生活を主とし、で居留地を移動する生活を送る。河川流域沿岸部に竪穴建物や小舎を設けて居住した。移動や運搬には犬ぞりかんじきスキーなどが用いられる。水上移動の場合には丸木舟が利用された。チュクチ族コリヤーク族と密接な関係を持ち、シャーマニズム信仰やワタリガラス神話など、文化的共通項を見出すことが出来る。

イテリメン族の冬の住居(1774年)

交易・観光

イテリメンは、18世紀前半まで樺太北海道千島列島の先住民族アイヌとの交易・貿易相手でもあった。アイヌが川でとったサケや海でとったラッコ毛皮などのアイヌの特産物が、カムチャツカ半島南部においてイテリメンとアイヌの間で取引されていた。

現在、観光産業に力を入れているロシア・カムチャツカ半島には世界中から観光客が訪れており、”火山半島”であるカムチャツカは、”温泉”と先住民族イテリメンの民族舞踊の2つが観光の目玉となっている。イテリメンの居住地では、”収穫への感謝の踊り”などの民族舞踊だけでなく、イテリメンの歴史を物語る品々も観光客向けに展示しており、その中にアイヌとの交易・貿易で(基本的に物々交換ではあるが)決済通貨として使われたものも展示されている。

遺伝子学的特徴

現代のイテリメン族男性22人のY染色体遺伝子を検査した研究では、ハプログループC2 (Y染色体)が38.9%以上66.7%以下[1]、次いでハプログループR1a (Y染色体)が22.2%であり、ロシア人(R1aが高頻度)との混血が窺える。他にはN-Tatが2人(11.1%)から検出されたが、このハプログループはロシア人にもシベリアの多くの先住民族にも広く分布しており、このイテリメン男性2人の由来が特定しがたい[2]

2017年に発表された別の研究では、イテリメンまたはカムチャダールという帰属意識を自認する10名の男性のY-DNA結果は下記の通り:

1/10 E-V13(アフリカ > 欧州系)
1/10 I-CTS6364(xL22)(北欧系)
1/10 N-Y19454(フィン系?)
1/10 N-A11470(ラトビア系)
1/10 N-Y16323(xB202)(モンゴル・ブリヤート系?カムチャッカ先住民在来のレアな系統?)
1/10 C-M407(モンゴル・ブリヤート系?)
2/10 C-F7264/C-L1373(xM48)(生粋のイテリメン系?)
2/10 C-M48(xM86)(生粋のイテリメン系?)
[3]

イテリメン族47人のミトコンドリアDNAを検査した研究では、結果は下記の通り:

ハプログループG1 32/47 = 68.1%
ハプログループC 7/47 = 14.9%
ハプログループZ 3/47 = 6.4%
ハプログループA(xA2) 3/47 = 6.4%
ハプログループY 2/47 = 4.3%[4]

脚注

  1. ^ C-M48(C-M217の下位)に属す男性が7/18 = 38.9%、C-RPSY4(C-M217の上位)に属しC-M48に属さない男性が5/18 = 27.8%
  2. ^ Lell, Jeffrey T; Sukernik, Rem I; Starikovskaya, Yelena B; Su, Bing; Jin, Li; Schurr, Theodore G; Underhill, Peter A; Wallace, Douglas C (2002). “The dual origin and Siberian affinities of Native American Y chromosomes”. The American Journal of Human Genetics (Elsevier) 70 (1): 192-206. doi:10.1086/338457. PMC 384887. PMID 11731934. https://doi.org/10.1086/338457. 
  3. ^ Muratov, B. (2017). ЧАСТЬ 3-Я: Y-DNA, ОТЦОВСКИЕ ЛИНИИ. МЕЖДУНАРОДНАЯ ЭТНОГЕНОМИЧЕСКАЯ ЭКСПЕДИЦИЯ 'КАМЧАТКА 2017’, ОТ ПРОЕКТОВ SFNC, YSEQ, SUYUN (MEEK-2017, SYS) // BEHPS, ISSN:2410-1788, Vila do Conde - M. - Ufa,Том 4. №11, Декабрь 2017 (1), С.972-1058. BEHPS, ISSN:2410-1788, Vila Do Conde - M. - Ufa,Том 4. №11, Декабрь 2017, 2017(11), 972–1058. https://doi.org/10-1788 [リンク切れ]
  4. ^ Starikovskaya, Elena B; Sukernik, Rem I; Derbeneva, Olga A; Volodko, Natalia V; Ruiz-Pesini, Eduardo; Torroni, Antonio; Brown, Michael D; Lott, Marie T; Hosseini, Seyed H; Huoponen, Kirsi; others (2005). “Mitochondrial DNA diversity in indigenous populations of the southern extent of Siberia, and the origins of Native American haplogroups”. Annals of human genetics (Wiley Online Library) 69 (1): 67-89. doi:10.1046/j.1529-8817.2003.00127.x. PMC 3905771. PMID 15638829. https://doi.org/10.1046/j.1529-8817.2003.00127.x. 

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