アニメ雑誌が扱う対象
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/04 18:34 UTC 版)
アニメ雑誌が中心に扱うアニメ作品は、一般の人気を集める高視聴率な作品とは限らない。その理由としてはまず、アニメ雑誌の購買層は主に10代のティーン層が中心であり、この層が好む作品と視聴率で高い数字を出す作品とは必ずしも一致しないという点が挙げられる。対して、アニメ番組で高い視聴率を叩き出すものは、主に子供向けアニメやファミリー・一般向けアニメが多くを占める。 また、他の出版社から原作が刊行されているテレビアニメは、権利関係上、誌面に割けるページ数や記事内容、提供される誌面用素材について何らかの制限がついて回ることが少なくなく、相対的に自誌で自由に扱いやすいオリジナルアニメ作品をプッシュしがちになる傾向もある。 その他、メディアミックス展開でアニメ雑誌の出版元がアニメ作品の製作元・有力出資者の一つになるなど、特定の作品と密接な資本関係・利害関係を有する場合もある。この際にはアニメ雑誌が主たる広告宣伝媒体としての役割を果たし、その雑誌で優先的に最新情報が発表されたり、競合誌には提供されないイラストや設定資料などの素材の提供を受けて独占掲載などが行われることとなる。『アニメージュ』とスタジオジブリ作品の関係が典型的な例である。アニメと漫画の親和性は高いため漫画を連載するアニメ雑誌も多く、右綴じ(右開き)・縦書き(縦組)の形態をとるものがほとんどである。これら漫画作品は大半が企画当初からメディアミックス展開が行われる事を前提とした、アニメファンに対する訴求力を最重視した作品作りがなされており、『ファイブスター物語』『魔法少女リリカルなのは』『びんちょうタン』など誌面の枠を超えて著名になった作品もいくつか存在する。 趣味専門誌全般におおむね共通して言えることではあるものの、とりわけアニメ雑誌で特徴的なこととして、アニメ関連企業から有利な条件で情報や広告、雑誌掲載用の番組素材を得ているほか、アニメ雑誌の出版元自体がアニメ作品の製作費を出資していたり、原作の漫画や小説の出版元であるなど密接な利害関係が絡んでいたりすることも珍しくない。過去には『日刊サイゾー』が「サンライズがバンダイ傘下になって以降、版権を盾にアニメ雑誌の記事を厳しく管理する様になっている」と記していることに代表されるように、誌面用素材の確保の都合からも制作プロダクションや各種権利関係者の意向に沿った誌面内容にせざるを得ない面がある。作品やアニメ業界・制作プロダクション・アニメ番組のスポンサー企業に対しての批判的な記事は載せにくく、結局は宣伝用の提灯記事ばかりが誌面に並ぶ傾向がある。 また、同じ趣味専門誌であっても、鉄道や航空などの分野では起き得る、多数の犠牲者が発生した大きな事件・事故のように、趣味専門誌がその分野に特化したマスコミとしてジャーナリズムの姿勢を前面に押し出さなければならなかった出来事が過去に少ないジャンルである。誌面に用いる情報・素材の入手の利便性や、大量に素材の提供を受け続けなければ誌面を構成できない雑誌の特性もあって、アニメ雑誌の編集部とマスコミとして取材対象となったりアニメ雑誌に広告を出稿したりしている業界の各社・関係者との関係は得てして緊密なものになりがちで、適度な距離感・緊張感を保つことができない業界体質がある。このようなジャーナリズムの普遍的な中立性・公平性・独立性を保つことが難しいアニメ雑誌業界の事情もあって「アニメ雑誌にジャーナリズムなし」と言われることもある。
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