失禁
「失禁」とは、自らの意思とは関係なく排泄してしまうことを意味する表現である。つまり、しようと思っていないタイミングで大小便を漏らしてしまうことである。
小便の失禁は「少便失禁」もしくは「尿失禁」と呼ばれる。同じく大便の失禁は「大便失禁」あるいは「便失禁」と呼ばれる。単に「失禁」とだけ呼ばれる場合は、たいてい前者の「小便失禁(尿失禁)」を指す。大小便両方の失禁は「両便失禁」と表現されることもある。
「失禁」は不本意に・不随意に漏らしてしまうこと全般について使われる表現である。我慢が限界に来て漏らす場合も、驚きや恐怖のあまり漏らす場合も、立ち上がったり物を持ち上げようとしたりして力を入れたついでに漏らす場合も、いずれも「失禁」と表現される。
男性は前立腺の肥大による尿道の圧迫が原因で失禁しやすくなるとされる。女性は尿道を支えている骨盤底筋が緩んでくると失禁しやすくなるとされる。
失禁の対策は、失禁の原因に応じて違ってくる。薬の服用が有効な場合もあれば、手術が必要な場合もある。運動不足の解消によって改善する場合もある。原因の解消が困難な場合は紙おむつの着用が対策となる。
「失禁」の語源・由来
「失禁」という言葉は、蘭学の分野において訳語として考案された言葉(いわゆる和製漢語)とされる。「禁」の字には「やめさせる」という意味の他に「閉じこめておく」という意味がある。たとえば「監禁」「軟禁」「拘禁」などは後者の「閉じこめておく」という意味の用法である。あるいは「禁忌」のように「忌み避けるもの」という意味もある。
「失」の字には「なくす・うしなう」という意味の他に「うっかり出してしまう」という意味がある。「失言」「失笑」「失火」などは後者の「うっかり出してしまう」という意味の用法である。そして「失禁」も、この後者の用法と位置づけられる。
つまり「失禁」は、「禁じているもの(または忌み避けられるもの)をうっかり出してしまう」という意味の言葉と解釈できる。
あるいは、見方によっては「(排泄を)禁じる機能を失う」という意味とも解釈しうる。
「失禁」を含む用語の解説
「尿失禁」とは
「尿失禁」は、尿(小便)を漏らすことである。小便失禁ともいう。基本的には単に「失禁」とだけいう場合は尿失禁を指す。大便の失禁を指す場合には単なる「失禁」ではなく「大便失禁」のような明示的な表現が用いられる。「切迫性尿失禁」
「切迫性尿失禁」とは、急に尿意を感じ、すぐに我慢の限界を迎えて尿失禁してしまうことである。つまりトイレに行くまで堪えきれずに漏らしてしまうことである。中高年の、かつ相対的に尿道が短い女性に多く見られる症状とされる。「切迫性尿失禁」は、膀胱の異常収縮や、神経異常などによって生じやすいとされる。ストレス等に起因する自律神経の乱れが切迫性尿失禁を誘発することもある。治療法としては、排尿を促すアセチルコリンの働きを抑える抗コリン剤の服用や、排尿を我慢することで膀胱を大きくするトレーニングなどが検討される。
「機能性尿失禁」とは
「機能性尿失禁」は、排尿器官に異常はないが、他の何らかの原因によって発生する尿失禁の総称である。たとえば、認知症によってトイレ以外の場所で排尿してしまったり、歩行障害があるためトイレまで行くのに手間取り我慢しきれず失禁してしまったりする状況が、機能性尿失禁に該当する。「腹圧性尿失禁」とは
「腹圧性尿失禁」は、笑ったり重いものを持ったりして腹部に力が入った際に失禁を併発してしまうことである。加齢や出産の影響で骨盤底筋が緩みやすい中高年の女性に多く見られる症状とされる。「失禁関連皮膚炎」とは
「失禁関連皮膚炎」は、失禁によって不適切に排泄されてしまった大小便が皮膚に付着することで発生する炎症のことである。失禁が起こりやすく、なおかつ肌が弱い高齢者に多く見られる症状とされる。「失禁症」とは
「失禁症」は、「失禁が生じている状態や症状」をいう意味の言葉である。基本的には「失禁」と同義といえる。「失禁症」を略して「失禁」と表現していると解釈できる場合も多い。「失禁を伴う症状」全般を指す表現として用いられることもある。- しっきんのページへのリンク