排尿
(放尿 から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2026/05/18 00:36 UTC 版)
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排尿(はいにょう)あるいは放尿(ほうにょう)とは、体外に尿を放出する行為である。排尿回数が多い場合は頻尿(ひんにょう)、特に夜間に排尿のために起きなければならない場合を夜間頻尿(やかんひんにょう)、尿の量が多いことは多尿(たにょう)、意に反して排尿してしまう行為は失禁(しっきん)、意に反して尿を出せないことは尿閉(にょうへい)、尿の量が少ないことは乏尿(ぼうにょう)、尿が全く生成されないか、あるいは極めて少ない状態は無尿と呼ばれる。これらは、程度によっては排尿障害と呼ばれる医学的な問題となる。
本項ではヒトの排尿を主題として説明している。
しくみ
排尿を理解するには、泌尿器系の全体像を確認しておく必要がある。泌尿器系は尿を生成する腎臓、少量を貯蔵する腎盤、輸送する尿管、大量に貯蔵する膀胱、排尿時にのみ用いられる尿道からなる。膀胱と尿道以外は左右に合計2組備わっている。
腎臓では血漿を濾過することにより、1日あたり約1 - 2Lの尿を途切れることなく生成している。尿は腎杯(じんぱい)に集まり、腎盂(じんう)(腎盤)に至る。腎盂は腎臓内部の漏斗状の空間であり、尿を一時的に集め、尿管に排出する。尿管は長さ20cmから30cmの中空の管である。尿管から膀胱へ尿が移動する主な要因は、尿圧と重力ではなく、尿管壁の平滑筋が行う蠕動運動によるものである。
膀胱に一定量の尿が蓄積すると、膀胱内に位置する伸展受容器(感覚器)が伸展を感知し、その信号が脊髄を経由して脳に送られ、尿意を感じる。量がさらに増加すると(個人差がある)、尿意は強くなる。 蓄尿時、膀胱は交感神経の働きで弛緩し、内尿道括約筋は収縮している。排尿の準備が整うと、大脳皮質からの指令が脳幹に位置する排尿中枢に伝わり、脊髄の排尿反射が促される。この反射により、副交感性の骨盤神経を経由し、膀胱の排尿筋が収縮し、不随意筋である内尿道括約筋が弛緩する。同時に、大脳皮質の制御により、随意筋である外尿道括約筋が弛緩することで排尿が開始される。外尿道括約筋は随意筋であるため、意識的に排尿を我慢し、ある程度まで尿を蓄えることもできる。
大脳皮質感覚野では伸展受容器からの信号を受け取り、脳幹に位置する排尿中枢と協力して排尿を制御している。排尿中枢が興奮することにより、不随意運動と随意運動が協調し排尿にいたる。
排尿を制御できず意図しないときに尿を漏らしてしまうことを失禁と呼ぶ。概ね2歳に成長するまでは、外尿道括約筋への神経経路が未完成であるため、排尿反射によりそのまま排尿に至る。
なお、尿管は膀胱壁を斜めに貫き、膀胱の頂上部ではなく横断面よりも下に開口している。このため、尿がたまった場合、さらに排尿中に膀胱の圧力が上昇しても、腎臓には尿が逆流しない。
膀胱の容量には有意な男女差は存在しないが、女性の尿道は男性に比べて短く直線的であるため、細菌が膀胱に到達しやすく、尿路感染症を引き起こしやすいという解剖学的な特徴がある。他方、男性の場合は尿道口が肛門から離れた位置にあるため女性よりは尿路感染症のリスクが少ない。また、尿道が長い方が尿道括約筋の機能が勝る傾向にあり、一般に女性は男性よりも尿意を催しやすいとされる[1]。
女性の場合、野外での排尿など緊急避難的なやむを得ない事情がない限り、排尿後にはトイレットペーパーで性器を拭う。これは、排尿時に男性以上に性器に尿が付着しやすく、広範囲に濡れる上、男性のように凸部になっていないため振り落とすことが不可能なためである。このため、拭かないと下着が汚れ、黄ばみや悪臭の原因となるほか、雑菌の繁殖により尿路感染症を引き起こす場合もある。対して男性の場合は残尿の残る部位が陰茎の先端部分のごく一部に限られ量も少ないこと、排尿の際に陰毛に尿が接触しないこと、残尿の発生する部位は全て凸部であり振り落とすことができることから、拭かずに済ませても下着を汚す心配はなく、基本的にトイレットペーパーは使用しない。ただし、残尿を残したままにすると亀頭包皮炎などを引き起こすことはあるため、充分に陰茎を振る必要はある[2][信頼性要検証] 。このため、平均的な女子のトイレットペーパー消費量は男子の三倍を超える[3]。
排尿体勢による分類
座り小便
洋式便器の場合は便器に腰掛ける。女性の一般的な排尿姿勢であり、尿が飛び散りにくく、足にも伝わりにくいため、通常はこの方法で行われる。近年では、男性も自宅では座り小便(俗に「座りション」と呼ばれる)をする場合も増えている。理由としては、尿の飛び散りによる便器周辺の汚れを防ぎ、清掃の手間を減らすためなどが上げられる[4]。男性が座りションをする場合は、陰茎が便器の内部に接触しないように注意する必要がある。男性の場合、排尿後に尿道口に残った尿を除去するため陰茎を振る必要があるが、便座の形状等によっては座り小便の場合は便座等に陰茎が接触し、振るために充分なスペースが確保できない場合があるため、女性同様にトイレットペーパーを使用する男性もいる[要出典] 。
しゃがみ小便
和式便器における一般的な排尿姿勢で、便器を跨ぎしゃがみ込んで行う。排尿後はトイレットペーパーを巻き取り、女性器に残った水分を拭き取る。
また、後述する中腰小便と並び女性が野外で用足しをする際における一般的な体位でもあり、この場合はトイレットペーパーの代わりにティッシュペーパーを使用して性器を拭う。公衆トイレなどで紙が設置されていない場合も同様である。
立ち小便
立ち小便(たちしょうべん)あるいは立ちション(たちション)とは、立って小便をすること。また狭義では便所以外の場所で放尿することを指す。後者の意味で使われる方が多い。
立ち小便の利点は、少ない動作による時間の節約や脚の負担の軽減が挙げられる。便器の設置面積も狭くて済む。欠点は、小便が便器の周囲に飛び散ること。
男性の一般的な排尿姿勢で、ズボンを履いたままでも排尿することができ、その場合にはチャック(ない場合はズボン)を下ろし、陰茎を引っ張りだして、両手で持ちながら小便を放出する。
女性の場合は男性とは違い、立って排尿することには抵抗があり、尿の向きをコントロールすることができないうえに飛び散りやすく、尿が足にも伝ってくるため衛生的ではないため、行う女性はほとんどいない。現代の日本では女性が普段から立って排尿する習慣は存在しないが、海外では補助具を用いることで女性でも簡単に立ち小便をすることが可能になる製品が開発されており[5]、中国では補助具を使用して立ち小便をする女性のために小便器を設置しているところもある[6]。女性の補助具を使わない立ち小便の方法として大陰唇と小陰唇を指で広げて排尿することによって、尿道口が露出し、陰唇に妨げられなく排尿できる方法がある。一部の女性はこの方法で立ち小便をしている[要出典] 。ヘロドトスは著書『歴史』の中で「エジプト人女性は立って小便をする」と記している[7]。現実世界ではあまり一般的でない方法であるが、夏目漱石の小説『坑夫』(1908年発表)で、掛茶屋のおかみは、クロマツの根方(ねかた)で立ち小便をする。また、アダルトビデオでは女性の立ち小便を題材とする作品も発売されている。
中腰小便
女性の排尿方法の1つで前かがみの姿勢で尻を突き出し、中腰になって後方に小便を排出する。一昔前までの日本で行われていた方法であるが、現代では抵抗があるため、ほとんど行われていないものの、尿検査ではこの方法で行われることもある[8]。また、女性は女性器の構造上立ち小便をしにくいため、野外で排尿するときに使われることもある。ストッキングが伝線しにくい利点もあり、アメリカではストッキング普及初期にはそれを防ぐことができるため、中腰で排尿できる便器として「サニスタンド」が登場した。日本でも東洋陶器(現・TOTO)が1951年に発売したが、当時の日本では中腰での排尿には抵抗が強かったため、普及しなかった。なお、1964年東京オリンピックの際には、女子選手用として国立霞ヶ丘陸上競技場内に設置されていた[9]。
やり手水
やり手水(やりちょうず)とは、抱え上げて小便をさせること。近くにトイレがないところで、小便をもよおした幼い女児に対して行う。太ももを持って、股を開かせ、体を抱えて、小便をさせる。股を開かせることで大陰唇が開き、尿が前に飛びやすくなるメリットがあるが、性器(尿の出る穴等)が他者より見える可能性があるため、股を閉めて尿をさせることもある。また、やり手水のポーズになったら「しーしー」「しーでるかな?」などと声をかけ、子どもに尿をしていいということを知らせる。
やり手水を行うのは主に女児であることから、排尿後はティッシュペーパーなどを用いて性器を拭き取るか、女児にティッシュペーパー等を渡して拭かせることが望ましいが、一般に女児の尿意は成人女性や男児に比べて切迫しやすく、ティッシュペーパーなどを持ち合わせていない場合であっても緊急避難的に野外で排尿する必要に迫られる事態は起こりうる。この場合介助者が女児を体ごと揺すって残尿を振り落とすが、それでも男児に比べて顕著な量の残尿が残ることは避けられず、衛生上は不十分である。とりわけ、股を閉めて行った場合は大陰唇が閉じた状態で排尿することになるため、陰裂内に残尿が溜まりやすく、局部の汚れが顕著になりやすいことから、ティッシュペーパーの使用がより強く推奨される。
排尿場所による分類
トイレ(ポータブルトイレ含む)
一般的に排尿は、特別な事情がない限りトイレで行う。しかし、幼児や高齢者、病人など移動が困難または通常の便器が使い辛い場合や、渋滞発生時などトイレに行けない場合にはポータブルトイレが用いられる。
野原などトイレがない場所
道端、屋外等近くにトイレのない場所において尿意を催した場合に一般的に行われる。特に子供は尿意が切迫しやすいため、緊急避難的に行わざるを得ない場合が多い。男児の場合は介助者の有無に関わらず、多くの場合立ち小便で行われる。女児の場合はしゃがんで放尿を行うことも多いが、抱え上げるのに充分幼い年齢の女児を保護者が介助する場合に限っては上述のやり手水がより一般的である。道端、水田、塀、草むらなど端の方で行われることが多い。
女子の場合、成人・児童を問わず、局部・着衣を清潔に保つため事後にティッシュペーパーなどで局部を拭う必要がある。しかしながら、実際には屋外での用足しの場合には使用済みのティッシュペーパーを放置することへの躊躇、ティッシュペーパーの不所持などを理由に後始末を省略することが多い。米国にて行われたアンケート調査結果ではティッシュペーパーを使用する女性はかろうじて半数を超える程度にすぎず[10]、女子の野外での排尿は尿路感染症を引き起こす原因ともなりうる。
社会的な面から見た野外排尿
予想できない渋滞の発生時などにはやむを得ない場合もあるが、あくまで緊急避難である。
とりわけ、成人が野外で排尿する行為は子供のそれに比較して、多くの文化圏でより強い非難を受ける傾向がある。また、子供であっても至近距離に公衆便所がある場合は眉を顰められる傾向があり、やり手水など保護者が介助していた場合その非難が保護者に向かうこともある。
女性の場合基本的に下半身の着衣を脱ぐ必要があり、男性以上に無防備になりやすいため、とりわけ思春期以降の女性が野外で排尿する行為には著しい羞恥心を伴う。また、前述の通りトイレットペーパーが使用できないため、下着を汚すことが避けられず悪臭などのエチケット上の問題が発生するため、そのことへの心理的抵抗も伴いやすい。また、ティッシュペーパーを使用した場合も使用済みのティッシュペーパーを残していったことが非難の対象となる場合もあり、女性の野外排尿は男性以上に尿意が切迫した状態で行われる傾向がある。
脚注
- ↑ “「女性はトイレが近い」というのは本当?”. ららぽーと横浜クリニック. 2025年10月31日閲覧。
- ↑ “よく振ろう、よく拭こう”. うえせこどもクリニック. 2025年8月25日閲覧。
- ↑ “毎日何気なく使っているトイレットペーパーに関するデータをご紹介。平均使用量から年間使用量まで。”. データで越境者に寄り添うメディア データのじかん. 2025年10月31日閲覧。
- ↑ 男性も「座っておしっこ」33% TOTOのネット調査 - 47NEWS
- ↑ Shewee - the original female urinating device
- ↑ 中国に「便所革命」到来、公衆汚トイレ一掃目指す - AFP BB NEWS
- ↑ [補説]古代ギリシアの便所 「エジプト人はこの国独特の風土と他の河川と性格を異にする河とに相応じたかのごとく、ほとんどあらゆる点で他民族とは正反対の風俗習慣をもつようになった。……小便は女は立ってし、男はしゃがんでする。一般に排便は屋内でするが、食事は戸外の路上でする」 (松平千秋訳)ヘロドトス『歴史 上』巻1,35(183頁)岩波文庫(1971年)
- ↑ 一例として、ドーピング検査 − YouTube
- ↑ TOTOきっず:トイレなんでもアラカルト
- ↑ Zurer, Rachel (2015年9月14日). “Women: How to Pee Outside Without Toilet Paper” (英語). Backpacker. 2025年10月31日閲覧。
参考文献
- トートラ 人体解剖生理学 原書6版 ISBN 4621074644
- 分冊解剖学アトラス内臓II 第5版 ISBN 4830600284
関連項目
「放尿」の例文・使い方・用例・文例
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