いくつかの一般的な性質
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2015/02/09 04:23 UTC 版)
「ヒルベルト空間上のコンパクト作用素」の記事における「いくつかの一般的な性質」の解説
H をヒルベルト空間とし、L(H) を H 上の有界作用素の集合とする。T ∈ L(H) がコンパクト作用素であるとは、T の下での各有界集合の像が相対コンパクトであることを言う。コンパクト作用素のいくつかの一般的な性質を以下に挙げる。 X と Y がヒルベルト空間(実際、X はバナッハで Y はノルム空間であれば十分)であるとき、T: X → Y がコンパクト作用素であるための必要十分条件は、それが弱位相(英語版)を備える X から(ノルム位相を備える)Y への写像と見なしたときに連続であることである((Zhu 2007, Theorem 1.14, p.11)を参照されたい。また、この文献では、F ⊆ X が (∀φ є Hom(X, K)) sup{x**(φ) = φ(x):x} < ∞ を満たすときに一様有界性が適用されることに注意されたい。ここで K は考えている体である。ノルム位相を備える Hom(X, K) はバナッハ空間であり、写像 x**:Hom(X,K) → K はこの位相に関して連続準同型であるため、一様有界性の原理が適用される)。 コンパクト作用素の族は L(H) 内のノルム閉・両側 *-イデアルである。したがって、コンパクト作用素 T は、H が無限次元である場合には有界な逆を持たない。もし ST = TS = I が成立するなら、恒等作用素はコンパクトなるが、これは矛盾である。 強作用素位相における有界作用素の列が Sn → S を満たし、T がコンパクトであるなら、SnT はノルムにおいて ST に収束する。例えば、標準基底 {en} を備えるヒルベルト空間 l2(N) を考える。Pm を {e1 ... em} の線型包の上の正規直交射影とする。列 {Pm} は恒等作用素 I に強収束するが一様収束はしない。今 T を Ten = (1/n)2 · en と定義する。T はコンパクトであり、上述のように、一様作用素位相において PmT → I T = T が成立する。すなわち、すべての x に対して、 が成立する。各 Pm は有限ランク作用素であることに注意されたい。同様の理由で、T がコンパクトであるなら、T はある有限ランク作用素の列の一様極限であることが示される。 コンパクト作用素のイデアルのノルム閉性により、逆も同様に成り立つ。 コンパクト作用素を法とする L(H) の商 C*-環は、カルキン環(英語版)と呼ばれ、そこにおいてはある作用素の性質をコンパクトな摂動に至るまで考えることが出来る。
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