いくつかの作用素のクラスの間の関係
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/18 09:01 UTC 版)
「トレースクラス」の記事における「いくつかの作用素のクラスの間の関係」の解説
いくつかの有界作用素のクラスは、古典的な数列空間の非可換な類似と見なされ、トレースクラス作用素は数列空間 l1(N) の非可換な類似と見なされる。実際、スペクトル定理を適用することで、可分なヒルベルト空間上のすべての通常のトレースクラス作用素は、l1 数列であると見なすことが出来る。同様に、有界な作用素は l∞(N) の非可換版であり、コンパクト作用素は c0(0 に収束する列)の、ヒルベルト=シュミット作用素は l2(N) の、有限ランク作用素は高々有限個の非ゼロ項を含む列の、それぞれ非可換版である。作用素のトレースクラスの間の関係は、ある程度は、それらの可換な対の間の関係と同様なものである。 ヒルベルト空間上のすべてのコンパクト作用素 T は、ある正規直交基底 {ui} および {vi} に対して、次の正準形式を取ることを思い出されたい: ∀ h ∈ H , T h = ∑ i = 1 α i ⟨ h , v i ⟩ u i where α i ≥ 0 and α i → 0. {\displaystyle \forall h\in H,\;Th=\sum _{i=1}\alpha _{i}\langle h,v_{i}\rangle u_{i}\quad {\mbox{where}}\quad \alpha _{i}\geq 0\quad {\mbox{and}}\quad \alpha _{i}\rightarrow 0.} 上述の発見的なコメントをより正確に言えば、T がトレースクラスであるための十分条件は数列 ∑i αi が収束すること、T がヒルベルト=シュミット作用素であるための十分条件は ∑i αi2 が収束すること、および T が有限ランクであるための十分条件は数列 {αi} が高々有限個の非ゼロの項を含むこと、となる。 上述の表記により、それらの作用素のクラスを関連付けるいくつかの事実を得ることが容易になる。例えば、以下の包含関係が成り立つ:{有限ランク} ⊂ {トレースクラス} ⊂ {ヒルベルト=シュミット} ⊂ {コンパクト}。特に H が無限次元であるときは、これらの包含関係はすべて proper (片方がもう片方の真部分集合)となる。 トレースクラス作用素には、トレースノルム ||T||1 = Tr [ (T*T)½ ] = ∑i αi が与えられる。ヒルベルト=シュミット内積に対応するノルムは ||T||2 = (Tr T*T)½ = (∑iαi2)½ である。また、通常の作用素ノルムは ||T|| = supi(αi) である。適切な T に対して、数列に関する古典的な不等式により、 ‖ T ‖ ≤ ‖ T ‖ 2 ≤ ‖ T ‖ 1 {\displaystyle \|T\|\leq \|T\|_{2}\leq \|T\|_{1}} が成立する。 有限ランク作用素の集合が、トレースクラスおよびヒルベルト=シュミットの両ノルムに関して、それらの集合において稠密であることは明らかである。
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