いくつかの初期の単段式熱核兵器のデザイン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/08/30 07:28 UTC 版)
「ブースト型核分裂兵器」の記事における「いくつかの初期の単段式熱核兵器のデザイン」の解説
当初、核融合によるブーストはもう一つの別の意味合いを持っており、今では完全に陳腐化してしまったが、核融合反応で高速中性子を大量に発生させ、これで劣化ウランの核分裂を起こすというタイプのシングルステージの核兵器を目指したものであった。これも2ステージ型である水素爆弾とは異なる。 ソビエト連邦のJoe-4 "Layer Cake" ("Sloika") のような初期の熱核兵器では、劣化ウランの主成分である238Uの核分裂を誘発するために、大量の核融合反応を使用する設計になっていた。これらの兵器は、核分裂性のコアが重水素化6Liで取り巻かれ、これをさらに劣化ウランで取り囲む構造であった。他のいくつかの設計では、別の核物質の層を持つ構造になっていた。ソ連の "Layer Cake" は、米国の "Alarm Clock"(結局建造されることはなかった)や英国の "Green Bamboo"(建造されたがテストは行われなかった)と類似したものであった。 このタイプの兵器が爆発する場合、高濃縮ウランまたはプルトニウムのコアが中性子を生成し、そのうちのいくつかが6Li原子に衝突することで三重水素を生成する。核分裂反応によるコア温度上昇により、非常な高圧を必要とせずに重水素と三重水素が熱核融合を起こす。 この種の兵器の主目的は、エネルギーよりも、むしろこの高エネルギーの中性子の生成である。核融合反応で得られる 6988224304724000000♠14 MeV もの高エネルギー中性子が238Uの原子に衝突し核分裂を起こす。この核融合ステージがない場合、238Uに衝突した核分裂由来の 6987320435320000000♠2 MeV の中性子は、そのほとんどが単に吸収されてしまうだけである。238Uの核分裂はエネルギーと中性子を放出することで6Liからさらに三重水素を生成するという形で、このサイクルが繰り返されていくことになる。劣化ウランは高濃縮ウランに比べて極めて安価であること、及びそれが臨界量を持たないため大事故に陥る危険性が小さいという両方の理由で、238Uを核分裂させることによって得られるエネルギーの増分は兵器にとって有用である。 このタイプの熱核融合兵器は、核出力のうち最大20%を核融合で生成する。残りは核分裂によるが、全体の核出力はTNT換算で1メガトン(7015400000000000000♠4 PJ)が限度であるとされている。Joe-4の核出力はTNT換算で400キロトン (7015200000000000000♠2 PJ) であった。 これに対して真の(多段式の)水素爆弾は、典型的には核融合反応で核出力の約50%を生成する。技術的には核融合反応による核出力の97%生成も既に達成されており (Tsar Bomba)、全体の核出力の上限は存在しない。
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