『治癒の書』
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/23 22:48 UTC 版)
哲学者としての彼の主著『治癒の書』は、膨大な知識を集めた百科事典的なものである。『医学典範』の対になる書籍として紹介され、以下の4つの主要な部分に分けられる。 論理学 自然学(自然科学) - 自然学の基礎理論、地学、気象論、生物学、魂論(心理学) 数学 (数学的な諸学)- 幾何、天文学(アルマゲストの要約)、算術、音楽 形而上学 イブン・スィーナーは『治癒の書』の中で、人間の知識を理論的知識と実践的知識に二分した。前者には自然学、数学、形而上学、後者には倫理学、経済学、政治学を分類した。 この書は、ヨーロッパ世界にアリストテレスの思想を紹介したことにも大きな意義がある。だが、難解な内容と粗悪な翻訳のため、『治癒の書』がヨーロッパに与えた影響は少なかった。12世紀に出版された初訳本は物理学と論理学の一部しか訳されておらず、他人が書いたと思われる天文学についての記述が追記されていた。後の訳本にも原本に書かれていない記述が追加されており、ヨーロッパで『治癒の書』の全体像が知られるには多大な時間を要した。 晩年に著した『救いの書』は『治癒の書』を簡潔に再編したものであり、その内容はアリストテレスの思想により忠実なものになっている。
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