『下官集』以前とは? わかりやすく解説

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『下官集』以前

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/12/31 00:07 UTC 版)

定家仮名遣」の記事における「『下官集』以前」の解説

定家仮名遣は、藤原定家著書下官集』を始まりとする(その成立年代については、浅田徹は1210年代後半としている)。この中にある「嫌文字事」(文字を嫌ふ事)が仮名遣いについて触れたものであり、定家このように書くべきと定めた言葉用例記されている。やがてこれが南北朝時代至り源親行の孫の行阿が『仮名文字遣』を著したことにより増補され確立された。この『仮名文字遣』に記される仮名遣い行阿仮名遣ぎょうあかなづかい)とも呼ぶが、これが一般に定家仮名遣の名をもって呼ばれるのである今日までの国語学言語学研究では、10世紀後半から12世紀にかけて、日本語に以下の音韻変化発生した推測されている。 ア行「お」/o/の音が、ワ行「を」/wo/の音に変化し合流 語頭以外のハ行/ɸ/の音が、ワ行/w/の音に有声変化ハ行転呼の項参照ワ行「ゑ」/we/の音が、ア行「え」/e/の音に変化合流しつつあった(ただしこの/we/と/e/違いについては、定家自身はなんとか区別できていたという) さらに13世紀半ばには、ワ行「ゐ」/wi/の音もア行「い」/i/へと変化した。これにより「を・お」、「え・ゑ・へ」、「い・ゐ・ひ」などの仮名発音上の区別なくなり、どの言葉にどの仮名当てるのかということについて動揺起きていた。その用例規定したものが定家定めた仮名遣いや行阿の著した仮名文字遣であったとされる。しかしでは、定家仮名遣い定め以前仮名遣いは、ただひたすら混乱するけだったのかというとそうではない。 仮名音韻の変化により、その表記あり方影響受けたことは確かである。「ゆゑ」(故)は「ゆへ」と書ようになったり、格助詞の「を」も「お」と書かれたりする例が出ていたが、音韻とは関わりなく表記一定していた言葉もあった。「こひ」(恋)は音韻変化によりその発音が[ko-ɸi]から[ko-wi]に変化しており、[wi]の音に対応する仮名は「ゐ」であったが、文献上「こひ」という表記変わっておらず、同じ仮名で書く「こひ」()は、『仮名文字遣』では「こひ」・「こゐ」・「こい」などという表記見られ一定していない。ほかにも「おもふ」など終止形連体形活用語尾が「ふ」となるものは類推によって、「ならふ」や「かなふ」が「ならう」「かなう」などと書かれることはなく、使用頻度の高い言葉ほど、その表記あり方すなわち仮名遣いは変わらなかった。「ゆへ」のようにもとの表記とは食い違う例も出てはいたが、その後はその変化した表記維持されている。「こひ」()の表記が定まらなかったのは、当時教養層が仮名文においてほとんど取り上げることのない言葉だったからである。 要する定家以前仮名遣いありようは、仮名を使う上で不都合のない程度落ち着いていた。音韻の変化仮名そのまま従うことは、それまで半ば慣習化した言葉の表記が書き換えられることになるが、それでは仮名書いた文を人に読んでもらおう思っても意味が通じないということなりかねない上で取り上げた「こひ」(恋)が「こい」だとか「こゐ」などと書かれては、恋という意味で理解されなかったということである。馬渕和夫はこの慣習的に行なわれていた仮名遣いを「平安かなづかい」と呼んでいる。そんな中定家仮名遣い定めなければならなかったのは、定家個人事情よる。それは、定家定家本知られるように数多古典文学作品書写した人物として知られているが、定家定めた仮名遣いとは、それら写本における仮名遣いを示すためのものだったからである。

※この「『下官集』以前」の解説は、「定家仮名遣」の解説の一部です。
「『下官集』以前」を含む「定家仮名遣」の記事については、「定家仮名遣」の概要を参照ください。

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