『ドン・カルロス』(フランス語版)の上演状況
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イタリア語による上演が一般的だが、この作品の当初作曲家が意図したものはどのようなものなのかという芸術的興味は尽きるものではないであろう。特に作品が傑作であれば、尚更なのではないだろうか。このような背景もあり、時折フランス語による『ドン・カルロス』の上演が行われる。近年は特に19世紀のフランスにおいてイタリア人の作曲家がフランス語で作曲したグランド・オペラの甦演や復活上演が目立ってきている。例えば、ロッシーニの『ギヨーム・テル』( Guillaume Tell, 1829年)やドニゼッティの『ラ・ファヴォリート』( La favorite 1840年)などが代表的だが、その中にはヴェルディの『シチリアの晩鐘』も含まれている。また、マイアベーアやアレヴィなどのグランド・オペラの近年のリバイバルという側面とも同期していると見ることもできる。20世紀以降の重要な上演は次のような流れとなっている。 1973年にジョン・マシソンがBBCコンサート・オーケストラを指揮して英国放送協会で放送し、CDも制作した。これは初演リハーサル時にカットされてこれまで一度も演奏されたことがなかった音楽までを復活させたものであった。さらに、クラウディオ・アバドがモデナ初演の5幕版をフランス語に戻した版を使用してミラノ・スカラ座管弦楽団を指揮してCDを制作した。この版は同年、 サラ・コールドウェル の指揮する オペラ・カンパニー・オブ・ボストンによって上演された。 1986年にはサンフランシスコ・オペラでジョン・プリッチャードの指揮、ニール・シコフ(英語版)のドン・カルロス、ピラール・ローレンガーのエリザベートほかの配役で上演された。 1996年にはロベルト・アラーニャの(ドン・カルロス)、カリタ・マッティラ(エリザベート)、トーマス・ハンプソンの(ロドリーグ)、 ヴァルトラウト・マイアーの(エボリ公女)、ジョゼ・ヴァン・ダム、エリック・ハーフヴァーソンの(大審問官)、 アントニオ・パッパーノの指揮にてパリ のシャトレ座にてリュック・ボンディの演出で上演された。。 2004年6月にはベルトラン・ド・ビリーの指揮によりウィーン国立歌劇場にて初演時のカットを除いた完全全曲での上演が実現した。 2014年 9月6日 には日本でも演奏会形式にて5幕のパリ初演版を演奏し、日本初演を実現している。配役はドン・カルロスが佐野成宏、エリザベートが浜田理恵、フィリップ2世をカルロ・コロンバーラが歌い、ロドリーグが堀内康雄、エボリ公女が小山由美となっている。指揮は佐藤正浩、オーケストラはザ・オペラ・バンドで合唱が武蔵野音楽大学、会場は東京芸術劇場であった。 2017年10月から11月にはパリ・オペラ座にてフィリップ・ジョルダンの指揮、ヨナス・カウフマンのドン・カルロス、エリーナ・ガランチャ(エボリ公女)、イルダール・アブドラザコフ(フィリップ2世)、リュドヴィク・テジエ(ロドリーグ)、ソーニャ・ヨンチェヴァ(エリザベート)、ディミトリ・ベロセルスキ(大審問官)、演出がクシシトフ・ワリコフスキという布陣で上演し、話題を集めた。 2018年3月から4月にはリヨン国立オペラにてダニエーレ・ルスティオーニの指揮、セルゲイ・ロマノフスキーのドン・カルロス、ミケーレ・ペルトゥージ(フィリップ2世)、ステファン・ ドゥグー(ロドリーグ)、サリー・マシューズ(エリザベート)、エヴ=モード・ユボー(エボリ公女)、ロベルト・スカンディウッツィ(大審問官)、パトリック・ボレール(修道士)、ジャンヌ・マンドシュ(ティボー)、ヤニク・ベルヌ(レルマ伯爵)、演出がクリストフ・オノレという布陣で上演した。 2019年5月から6月にはハンブルク州立歌劇場でもピエール・ジョルジョ・モランディの指揮、ペーター・コンヴィチュニーの演出でフランス語による『ドン・カルロス』の上演を予定している。 フランス語版『ドン・カルロス』は中規模以下の歌劇場には上演が難しいものと考えられる。しかし、このオペラの原初のスタイルは歴史的素材を扱った壮大なグランド・オペラであるので、イタリア・オペラであることの他に、こうした側面もこの傑作の持つ多様な魅力と考えられるのではないだろうか。
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