『デフレの正体』
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藻谷は、アジアの人口成熟問題に注力しており、日本経済低迷の原因として人口動態の変化に重きを置いている。2010年6月に出版された著書『デフレの正体』は、中央公論新社が主催する『新書大賞2011』の2位に選ばれる。経済学者らが選んだ2010年の『ベスト経済書』3位となり、販売部数も50万部を超えた。 その主張は、15-64歳の生産年齢人口が1996年を境に縮小しはじめ、好景気下でも内需縮小が避けられないという点にある。藻谷は「エネルギー価格が上がり始めたのが1995、96年。日本の生産年齢人口が減り始めたのもちょうど同じころで、それらが重なったことにより、日本企業はエネルギー価格上昇を商品価格には転嫁せず、団塊の世代が高齢化で労働市場から退出するのに合わせて、人件費の総額を減らすという方向で調整した」と述べている。 また『実測 ニッポンの地域力』で主張されているが、東京を中心とする大都市は元気で地方は衰退といった見方も一面的で、実態としては首都圏のジリ貧も明らかだとしている。 高齢者の激増と生産年齢人口の縮小という当面避けられない現実にたいして、インフレ誘導や公共投資といった従来型の政策は成果を上げていない。発想を変えなければならないとし、高齢富裕層から若者への所得移転、女性就労と経営参加、外国人観光客・短期定住者の受入を提言し、とくに年金について、高所得者が高額の年金を貰える現在の仕組みを変え、生年別共済や、生活保護の充実を主張している。子どもと生産年齢人口が減り、高齢者が激増するという中期的には確度の高い予測から説きおこし注目を集めたが、「『景気さえ良くなれば大丈夫』という妄想が日本をダメにした」といった挑戦的な言い方は反発も呼んだ。 藻谷自身が後から語ったところによれば、「デフレ」の意味は、耐久消費財などの個別品目の価格の下落を意味しているという。これは従来のデフレの定義とは著しく乖離した藻谷独自の定義である。藻谷は「これは反マクロ経済学の本である」というような批判・論評されて驚いたと述べており、「デフレの原因が人口減少であると述べるとは、マクロの勉強不足も甚だしい」と批判されるが、述べていないことを批判されても困ると述べている。また藻谷はこの本は、学術論争を意図したものではないとしている。
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