立山 自然環境

立山

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/14 02:19 UTC 版)

自然環境

地勢

広義の立山は、一つの山脈が造山過程で東西に分かれ、立山連峰後立山連峰と称す複列連峰である。

地理

五竜岳から望む御前沢氷河と剱岳
雷鳥沢から望む立山雄山
山体

かつて山体は立山カルデラにあり、元の立山火山の山頂部は侵食で喪失している。弥陀ヶ原五色ヶ原はこの火山の火砕流堆積物や溶岩の台地である。ミクリガ池、ミドリガ池は火口湖であり、現在[いつ?]の立山火山の主な火山活動は地獄谷周辺の火山性ガスの噴出と温泉噴出である。造山運動により形成された褶曲山脈であり、黒部川を挟んで後立山連峰と対峙している。

御前沢氷河
雄山の東側斜面にある御前沢氷河は全長約700 m、面積約0.1 km2氷河である。日本に現存するものとしては数少ない氷河であり、黒部川の水源の一つとなっている[報 1]
内蔵助氷河
内蔵助カールにある日本で最小の氷河。日本に現存する7つの氷河のうち、一般登山者が踏み入れることができる唯一の氷河である[報 2]
山崎カール
雄山の西側斜面に圏谷があり、一般には山崎カールと呼ばれている[誰によって?]1905年明治38年)、地理学者の帝国大学理科大学(現東京大学教授山崎直方によって日本で初めて発見された氷河地形である。1945年昭和20年)、薬師岳東側の圏谷群[注釈 1]とともに国の天然記念物に指定されている。命名者は山崎の高弟である石井逸太郎(1889年 - 1955年)で、「立山連峰の氷河作用‐特に山崎圏谷に就いて」(地理評、1943年)などの論文で天然記念物指定のきっかけを作った。

周辺の主な峠

  • 室堂乗越 - 奥大日岳と剱御前との西寄りの鞍部
  • 新室堂乗越 - 奥大日岳と剱御前との東寄りの鞍部
  • 別山乗越 - 剱御前と別山との鞍部
  • 真砂乗越 - 別山と真砂岳との鞍部
  • 一ノ越 - 雄山と浄土山との鞍部
  • ザラ峠 - 獅子岳と五色ヶ原との鞍部

源流の河川

立山を源流とする主な河川は以下の通り。いずれも富山湾へ流れる。

基準点

雄山山頂にある雄山神社峰本社神殿右端の前には、測量の基準である大きな黒御影石の標石(標高点3,003 m)があり[図 4]、その約70 m南南西に一等三角点(標高2,991.59 m、点名「立山」)の標石が設置されている[2]。雄山は、一等三角点百名山に選定されている[3]

気候

冬季はシベリアから吹く寒風によって日本海で発生した水蒸気が運ばれ、立山の3,000 m級の山々にぶつかることで大量の降雪をもたらす。世界有数の豪雪地帯であり、積雪は15 m以上、最低気温氷点下20以下になる。

植生

室堂周辺から上部は、森林限界ハイマツ帯で、多くのライチョウが生息している。花の百名山に選定されていて、室堂周辺などでは雪解けと共に多くの高山植物の開花が見られる。タテヤマリンドウタテヤマウツボグサ、タテヤマアザミ、タテヤマキンバイ、タテヤマオウギなどのタテヤマの名称が付く高山植物があるが、立山の固有種というわけではない。

ライチョウ ハイマツ タテヤマリンドウ(青色・白色) チングルマ クルマユリ

登山者や観光客の増加により室堂周辺は外来植物や病原菌の侵入など、生態系の破壊が危惧され、全国的にも早い段階でマイカー規制が敷かれるようになった。


注釈

  1. ^ 1952年(昭和27年)に特別天然記念物に指定された。

出典

  1. ^ a b 日本の主な山岳標高(富山県の山)、国土地理院、2010年12月16日閲覧。
  2. ^ 基準点成果等閲覧サービス、国土地理院、2010年12月16日閲覧。
  3. ^ 『一等三角点百名山』山と渓谷社、1988年、ISBN 4-635-17030-6
  4. ^ 『新聞に見る20世紀の富山 第1巻』(2000年5月20日、北日本新聞社発行)200頁。
  5. ^ 『新聞に見る20世紀の富山 第1巻』(2000年5月20日、北日本新聞社発行)201頁。
  6. ^ 中部山岳国立公園環境省)、2010年12月16日閲覧。
  7. ^ 1995年(平成7年)6月27日文部省告示第100号「文化財を重要文化財に指定する件」
  8. ^ Tateyama Midagahara and Dainichidaira | Ramsar Sites Information Service”. rsis.ramsar.org (2012年7月3日). 2023年4月14日閲覧。
  9. ^ 万葉集 巻17、4000、4024
  10. ^ 万葉集 巻17 4000 立山賦一首
  11. ^ 有頼柳”. 日本伝承大鑑. 2021年5月7日閲覧。
  12. ^ a b c 雄山神社(富山・立山町)”. 2023年7月30日閲覧。
  13. ^ 立山町の観光施策について~自然と文化の地域資源を活かした地域活性化策~”. 富山県立山町 商工観光課. 2023年8月5日閲覧。
  14. ^ 学校登山用ヘルメットの貸出し” (pdf). 富山県山岳遭難対策協議会 (2021年3月2日). 2023年7月23日閲覧。
  15. ^ 立山カルデラ研究紀要第11号-芦峅ガイドの系譜p23 五十嶋一晃 2017年12月2日閲覧
  16. ^ バス - 夏山バスのご案内(室堂線”. 富山地方鉄道株式会社. 2023年8月2日閲覧。
  17. ^ 登山バス<ホーム”. まいたび. 2023年8月3日閲覧。
  1. ^ 『日本百名山』深田久弥(著)、朝日新聞社、1982年、ISBN 4-02-260871-4、pp.188-191
  2. ^ 『新日本百名山登山ガイド〈上〉』 岩崎元郎(著)、山と渓谷社、2006年、ISBN 4-635-53046-9、pp148-150
  3. ^ 『花の百名山』田中澄江(著)、文春文庫、1997年、ISBN 4-16-352790-7、P213-216。その著書で代表する花としてイワイチョウを紹介した。
  4. ^ a b c 『改訂版 富山県の山』山と渓谷社、2010年、ISBN 978-4-635-02367-2、pp.16-19
  5. ^ a b 『コンサイエンス日本山名辞典』三省堂、1992年、ISBN 4-385-15403-1、P326-327
  6. ^ a b c 『新日本山岳誌』ナカニシヤ出版、2005年、ISBN 4-779-50000-1、P914-916
  7. ^ 『切手と風景印でたどる百名山』ふくろう舎、2007年、ISBN 978-4-89806-276-0、P92
  8. ^ 本郷真紹「古代社会の形成と展開」64ページ(深井甚三・本郷真紹・久保尚文・市川文彦『富山県の歴史』山川出版社 2003年11月)など
  9. ^ 『名山の日本史』河出書房新社、2004年、ISBN 4-309-22410-5、p254
  10. ^ ウォルター・ウェストン『日本アルプス再訪』、水野勉訳、平凡社、1996年、ISBN 4-58-276161-5
  11. ^ 下川耿史 『環境史年表 明治・大正編(1868-1926)』p333 河出書房新社 2003年11月30日刊 全国書誌番号:20522067
  12. ^ a b c d 『北アルプス山小屋物語』東京新聞出版局、1990年、ISBN 4-8083-0374-4、P161-178
  13. ^ 『ヤマケイ アルペンガイド8 剣・立山連峰』山と渓谷社、2008年、ISBN 978-4-635-01352-9
  14. ^ 『剱・立山 (山と高原地図 36) 』 昭文社、2010年、ISBN 978-4-398-75716-6
  1. ^ a b 立山連峰:日本初の「氷河」、学会が認定”. 毎日新聞 (2012年4月4日). 2012年4月4日閲覧。[リンク切れ]
  2. ^ a b 立山で新たに氷河二つ 内蔵助と池ノ谷 県内計5カ所に 北日本新聞社 2018年1月19日
  3. ^ 富山新聞、2010年2月7日[要ページ番号]
  4. ^ 国内7カ所目の氷河確認 北アルプス、唐松沢雪渓 産経新聞 2019年10月4日
  5. ^ 北日本新聞』2008年5月31日朝刊[要ページ番号]
  6. ^ 23人遭難か ふぶきの立山『朝日新聞』1970年(昭和45年)12月3日夕刊 3版 11面
  7. ^ 七人(同志社大)いぜん不明 十六人は無事に避難 吹雪の立山『朝日新聞』1970年(昭和45年)12月3日朝刊 12版 3面
  1. ^ 国内初の現存する「氷河」を立山連峰で発見!|立山の雪|とやま雪の文化|富山県”. 富山県. 2018年6月22日閲覧。
  2. ^ 立山信仰の世界-第2展示室-”. 富山県. 2021年4月26日閲覧。
  3. ^ a b 富山県. “天界”. 富山県. 2021年4月26日閲覧。
  4. ^ 立山駅前(千寿ケ原駐車場)の利用について”. 富山県. 2023年8月3日閲覧。
  5. ^ 駐車場のご案内”. 立山黒部アルペンルート. 2023年8月3日閲覧。
  1. ^ a b 1953年(昭和28年)6月15日郵政省告示第770号「白山頂上郵便局等設置」
  2. ^ 1970年(昭和45年)6月4日郵政省告示第480号「郵便局改称の件」
  3. ^ a b 1981年(昭和56年)7月18日郵政省告示第534号「簡易郵便局を設置する件」
  4. ^ 1981年(昭和56年)6月17日郵政省告示第423号「郵便局を廃止する件」
  5. ^ 別冊(内国郵便約款第79条及び第97条関係) 交通困難地・速達取扱地域外一覧”. 日本郵便 (2022年2月21日). 2022年5月1日閲覧。
  6. ^ 2000年(平成12年)4月11日郵政省告示第239号「ふるさと八十円郵便切手および五十円郵便切手(北陸)を発行する件」






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