漢字語 漢字語の概要

漢字語

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/20 04:27 UTC 版)

日本語における定義

日本語においては、語種の上でいわゆる「漢語」という区分が存在する。その一方で、新たに「漢字語」という用語を使用する研究者も存在する。この語の定義には研究者によって僅かな差異があり、いまだ学会の共通認識にはいたっていない。

山田俊雄は、一般的な漢語の概念を拡張した「漢字語」という枠組みを提唱している。山田は、「木綿(もめん、きわた、ゆふ)」のように和語に対応して発生した漢熟語や、「天下(てんか、あめのした、あめがした)」のような漢語的な思想に基礎を持つ語などを漢字語の例として挙げ、従来の語種的分類では説明しづらい日本語の特質を取り上げている[1]

鈴木丹士郎は、「漢字語」を「概念をともなった語としての漢語と訓に対する表記としての漢字の両方を含んだもの」と定義し、例として「狂言(まがこと)」を挙げている[1]

さらに和語である「ものがたり」や外来語である「クラブ」などの語も文脈によって「物語」「倶楽部」といった漢字表記がなされることから、これら漢字で書き表した語を全て包括して「漢字語」あるいは「漢字表記語」と呼ぶ立場もある。これは語における表記文字に注目した「カタカナ語」などという呼称に対応する概念である[1]

また、類義語に「熟語」があるが、これは「複数の漢字によって構成される語」という意味がある一方で、「ことわざ慣用句として用いられる表現」という意味もしばしば同時に含蓄する。特に「四字熟語」といった場合、「臥薪嘗胆」「大器晩成」といったいわゆる(故事成語を意味することが多い。しかし実際には「台風一過」「女人禁制」のように、成語には分類しがたい四字の表現も多く存在する。このように「熟語」の指す範囲は時に混乱を招くおそれがあるため、以上のような四字の表現を「四字漢字語」と総称することもあるという[2]

その他の言語における漢字語

朝鮮語(韓国語)においては、古来から中国から膨大な漢語系語彙を借用しており、近代には日本製の字音語(いわゆる和製漢語)も多く流入した。これらは、漢字ハングル混じり文に見られるように、歴史的に漢字表記がなされてきた実績があり、漢字語(かんじご、한자어)と総称されることが多い。

ベトナム語も漢語系語彙の浸透が著しく、その程度は日本・朝鮮と比較しても質・量ともに甚だしいという[3]。一方で文字文化としての漢字は、日本・朝鮮と比較してさほど定着したと言えず、現在では表記としての漢字を既に廃止しているので、漢字語という区分が意識されることはまずない。なお、ベトナム語において漢語由来の語は、漢越語(かんえつご、từ Hán-Việt詞漢越)と総称されている。


  1. ^ a b c d e f 『漢字百科大事典』138頁
  2. ^ 岩波書店時点編集部 編『四字熟語ひとくち話』岩波書店、2007年4月、106頁。
  3. ^ 亀井孝ら『言語学大辞典』第6巻、三省堂、1996年、234頁。


「漢字語」の続きの解説一覧



英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「漢字語」の関連用語

漢字語のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



漢字語のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの漢字語 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS