パネル/モジュール/ディスプレイの技術的課題
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「液晶ディスプレイ」の記事における「パネル/モジュール/ディスプレイの技術的課題」の解説
液晶パネルは、様々な利点を有する一方、表示原理に起因する技術課題(欠点)も有している。 残像 液晶パネルで動きの早い動画を表示させると、残像が残って不明瞭な印象を受ける事がある。これは液晶パネルが動画表示を行うテレビに採用されて問題となってきた。この原因は、一つには、表示が変更されるまでの応答時間が長いためであり、もう一つは、駆動方法にも原因がある。 まず、液晶パネルの応答時間については、一般に1-10ミリ秒程度の時間が必要となる。このため、1秒間に100回程度、つまり、100Hz程度でのフレーム周波数による表示書き換えが可能となっている。これに対し、ブラウン管やプラズマ・ディスプレイ・パネル (PDP) の応答速度は、マイクロ秒程度であるため、液晶パネルの応答時間はこれらに比べて長い。このように応答時間が長いことを、応答速度が遅いともいう。この理由は、液状の液晶物質の配向変化という物理的な変化を表示に利用するためである。具体的には、主に液晶の粘度および層の厚みをパラメータとして配向変化の遅れが決まる。 もう一つの駆動方法の観点では、表示フレーム時間内でバックライトが常時点灯していて画像が表示され続ける点(ホールド駆動)が大きな要因である。液晶パネルでは、応答時間を短くするため、液晶材料の低粘度化、液晶層厚の低減、表示駆動波形をオーバーシュートさせる工夫(オーバードライブ)といった対策を行っている。また、インパルス駆動に近づけるため、表示駆動波形による表示フレーム間への黒表示の挿入、バックライトの明滅等の対策も行われている。さらには、駆動周波数の増大(倍速・4倍速駆動)などの対策が採られている。 なお、測定規格および計測技術上の問題点として、カタログ等に表記される応答速度(応答時間)の数値が参考にならない場合が多いという問題点も指摘されている[要出典]。 視野角 ブラウン管などの他のディスプレイと比較して液晶パネルは視野角が狭い。液晶配向の向きと観察者の位置関係が透過率や反射率に影響するためである。このため、液晶ディスプレイでは視野角特性が表示性能の1つとなっている。特にリビングに置くような大画面テレビ用途の液晶パネルでは、視野角特性を改善して、斜め向から見た場合でも正面方向と変わらない表示品質に近づけることが技術的な課題となってきた。 視野角特性の改善は、IPS方式や、VA方式で利用されるマルチドメイン方式によって図られている。マルチドメイン方式は、表示に用いる液晶配向の向きが、明表示の場合と暗表示の場合で同じになるドメイン(領域)を画素内にいくつか設けて、複数のドメインの明度や色調をいくつか平均化したものが画素の透過率や反射率となるように構成する手法である。こうすることで、液晶パネルの観察方向を傾斜させたときの透過率が上下左右あるいは斜めの観察方向に依存しにくくなる。 + : 視野角特性を良好にするため、IPS方式や、VA方式をマルチドメイン方式によって駆動することが行われている。マルチドメイン方式は、液晶配向の向きが揃っている単位領域(ドメインという)を各画素に複数(通常、2種又は4種)設けることにより、複数のドメインの明度や色調の平均化したものが画素単位での透過率や反射率となるように構成する手法である。こうすることで、液晶パネルの観察方向を傾斜させたときの透過率が上下左右あるいは斜めの観察方向に依存しにくくなる。 ただし、IPS方式とVA方式では、ひとつ1つのドメインの視野角特性は異なっており、IPS方式の方が優れている。IPS方式におけるマルチドメインでの特性の平均化は、個々のドメインのわずかな色調の平均化が主眼であるのに対し、VA方式の特性では明度の平均化が主眼である。VA方式ではIPS方式に比べて不利な視野角特性を改善するため、1つの画素を複数の電圧で駆動するサブピクセルの組合せとすることも行われている。この手法により、基板に対する液晶の傾きが、中間調において一定の傾きではなく、強く傾いたサブピクセルと傾きの少ないサブピクセルの組み合わせとなり、上下左右斜めの観察方向に対する明度依存性が強い、中間的な液晶の傾きを表示に用いずに実質的に同様の明度が得られるため、視野角特性が改善される。また、このような中間的な傾きでの液晶の動作を避ける駆動方法は、応答にも良い影響を与える。なお、前述程の効果は得られないが、液晶性分子を用いた位相差フィルムを、偏光フィルターと液晶層との間に配置して視野角を拡大する工夫もなされている(主にTN方式やOCB方式で利用)。 なお、上記の応答と同様に、測定規格および計測技術上の問題点として、カタログ等に表記される視野角の数値が参考にならない場合が多いという問題点も指摘されている。例えば、多くの場合にはコントラスト比が10程度の表示が実現する最大の視野角(正面からの傾斜角、またはそれを両側で表記した2倍の数)によって表示される。その結果、例えば176度の視野角などという観察方向として意味の無い範囲の数字の大きさばかりが強調されている。注意深く観察するユーザーにとっては、観察方向による色調の変化やコントラストの変化がいまだ認識できる程度に残存しており、液晶ディスプレイの方式やメーカーによってそれが異なることも事実であるが、このような意味のある特性がユーザーに比較可能な状態で示されることはほとんどない。 コントラスト比 画像表示製品の持つ明表示の最大の輝度を暗表示の最小の輝度で割った値を「コントラスト比」と呼び、表示品位の指標となる。特にバックライトを制御することで得られる最大と最小輝度の比は、「ダイナミック・コントラスト比」と呼ばれる。コントラスト比が小さな表示装置は、白黒の表示が不明瞭になるだけではなく、カラー表示の色純度が低下するため重要な指標である。液晶パネルでは動作原理上、画面を完全な黒表示にすることが難しくコントラスト比をあまり大きくできない。これは、バックライトの光を液晶パネルが遮蔽し切れず、たとえ光源の光量を制御しても液晶パネル面から光が漏れるためである。 低消費電力化 液晶パネルは消費電力の低さが優れているために電卓に使われはじめ、CRT(ブラウン管)ディスプレイとの比較でも画面サイズ当りの消費電力でも低く、21世紀初頭現在実用となっている中では低消費電力の表示装置である。また、電池駆動を行う携帯電子機器で使用される用途や大画面テレビなどの用途では、消費電力をさらに削減する要求も存在する。 バックライトを持つ液晶パネルの消費電力は、液晶を駆動するための電力よりも光源での消費電力が主な要素となる。一般的な透過型カラー液晶パネルでは、バックライトからの光量の大半が、偏光フィルタやカラーフィルタ、液晶を駆動するための金属配線などによって失われる。カラーフィルタを用いる液晶パネルの全面白表示での透過率は約5-10%に過ぎず、光量の90-95%は内部で失なわれる。液晶パネルの透過率を上げると共に、バックライトの発光効率の改善が求められる。 また、携帯機器に使用される液晶パネルでは、正面方向だけに明瞭な表示をすれば良いものが多く、バックライトも正面方向にだけ光を放ってそれ以外には無駄に光を出さないことで低電力化が図られている。反対に据え置き式の映像機器に用いられる液晶パネルでは、バックライトができるだけ全方向に万遍なく光を放射しないと使用者の位置が制限されることになる。 また、バックライトを使わない反射型液晶パネルでも、電池を電源とする携帯機器の用途では、液晶を駆動するわずかな消費電力ですら削減が求められる。このとき液晶は交流駆動されなければならず、表示内容が変わらない静止画であっても消費電力はゼロにはできない。この課題に対して、液晶配向に双安定性を持たせて電圧を印加しなくても液晶の表示を固定することができるメモリー性表示が開発されている。これは表示内容の書き換え時以外では電力を消費しないため、電子書籍端末などの表示装置として用いられている。 こういった消費電力の削減要求に対しては、発光効率のよいバックライトを選択するなどの工夫により、年ごとに液晶パネルの消費電力量は削減されている。 LED光源 光源にLED照明を使用することで、周囲の明るさにあわせて全体の表示輝度を調整したり、動画像に合わせて画面上の場所ごとの明るさを変更することにより、電力消費を抑えてコントラストや明暗のダイナミックレンジ、動画追従性を向上させる「ローカルディミング」や「エリア制御」と呼ばれる工夫も試みられている。 ドット落ち 液晶パネルの構造は極めて繊細である。現在主流の薄膜トランジスタを利用するTFT液晶パネルでは、膨大な数のトランジスタがガラス基板上に形成されている。トランジスタは異物混入に極めて弱く、数オングストローム程度の塵であっても動作不良を起こす。このため、ドット、またはサブドットを構成するトランジスタや関連回路に異常があると、一般に言う所のドット落ちが発生する。現状ではパネル1枚当り2-3個程度のドット落ちを容認しないとパネル単価は10倍にも上昇するといわれており、メーカーは技術上の限界として顧客対応に苦慮している。その為、液晶パネルを使用した製品にはその旨の注意書きが書かれている。 耐衝撃性 液晶パネルは薄いガラスでできている。このため、CRT(安全のために破損が許されず、厚いガラスを用いる必要があった)等と比べると、大画面を実現できるものの、逆に容易に割れて破損しやすい。しかし、種々のフィルムが表面に張ってあるため、割れた場合の危険性は低い。近年ノートパソコンなどの可搬性機器の破損例や、液晶テレビが一般家庭に浸透するに伴い幼児がいる家庭での破損例が多くなっている。そのため、画面それ自体に衝撃を与えないようにする工夫や、それ自体の頑丈さが求められるようになってきている。なおデスクトップのパーソナルコンピューター用の液晶モニターのタッチパネル付き製品では、前面にタッチパネル用ガラスが装着されているためにセット全体としては衝撃に強い。また、ガラス基板でなくプラスチック基板を用いて耐衝撃性を高めることも検討されている。 液晶配向のくせの固定化(擬似的な焼付け) 液晶ディスプレイで同一画像を長期にわたって表示し続けた場合には、見かけ上発光型表示装置の焼付けと同じような現象が起きることがある。このような現象は、発光素子の焼付けのような外観を呈するので専門家でも焼付けと呼ぶことがあり、メーカーサポートなどでも焼付けとして扱う社もある。しかし、自発光デバイスではないため、液晶ディスプレイのこの現象は、CRTやPDPや有機ELや無機ELのような焼付け(発光素子の部分劣化)とは原理的に異なり、その意味で厳密には焼付けではない。液晶パネルメーカーでは、この現象の原因を、液晶の光シャッター機能の要である液晶配向にくせがつくこと、液晶材料中や配向膜中に残存したりそこに溶出する微量の不純物の影響などと考えており、液晶パネル部分の長期信頼性の問題として管理している。 バックライト寿命 PCのディスプレイや液晶テレビに使用されている液晶パネルは、ほとんどがバックライトが必要な透過型である。このバックライトの光源としては冷陰極管 (CCFL) というごく細い蛍光管、あるいはLEDが使用されている。冷陰極管やLEDは照明器具の蛍光灯等と同様に長期間使用するにつれて光度が低下する等劣化が避けられない。また、バックライトに用いる光源以外の光学部材の色調も長期間には変化することがある。その結果、画面全体や端の輝度が低下したり、色調が変わってくることがある。このような液晶モジュールの一部であるバックライトシステムのみの劣化は、原理的にはバックライトシステムを交換すれば回復するが、そのような交換はメーカーの修理としては通常は行われない。一般に、バックライトの寿命は(輝度が半分になる点灯時間として規定することが多いがその場合でも)液晶パネルの他の部分に比べて短いことが多い。よって、バックライト寿命がモジュール寿命を決める面もあるため、バックライト部分を長寿命化するための開発も行われてきている。 液晶の黄ばみ 液晶が黄色く見えると液晶の黄ばみが一部で問題となることがあるが、今の技術で完全になくすことは出来ない。これはドット落ちと同じように容認しないとパネルの単価は跳ね上がるといわれている。こちらもメーカーは技術上の限界として顧客対応に苦慮しているが液晶の黄ばみについては注意書きはない。
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