セラミック・ターボチャジャー
レシプロエンジンの有力な代替機関としてガスタービンが研究開発されてきた。特に熱効率向上の観点からタービン入り口温度の高温化が必要で,耐熱材料としてセラミックの採用が検討されてきた。この技術を乗用車用ターボチャージャに応用し,ターボラグを改善した。 ガスタービンに比べターボチャージャの温度は1200Kと低いため,破壊靭性と強度の高い窒化珪素を選択した。成形はガスタービンと同様にブレードリング部とシャフト部を別々に成形し一体化している。製法としてガス圧焼結法を採用し,三次元有限要素解析で形状の最適化をはかることにより,高強度のロータを得ることができた。金属製ロータと異なり 1)背板部から軸へ向かっての手-パ形状 2)背板部から軸部の接続形状 3)翼先端部から根元部への肉厚分布 4)イクスデューサ側のハブ形状 5)翼の肉厚形状に留意して 設計されている。 軸は強度,製造コストの面から金属軸を用いた。基本組成,熱膨張係数の著しく異なる異種材料の接合は技術的に難しい。接合位置,要求強度,耐熱性などを考慮して,各種接合法を検討し,軸折損時にエンジンへの影響の少ない高音部接合とし,接合法としてろう付,及び焼ばめを選定した。 ホットスピンテストを実施すると共に,Slow Crack Growth理論に基づく亀裂伸展速度の定数をもとめ,寿命予測を行った。寿命には強度と負荷の影響が大きいが,強度は初期欠陥の長さの関数となる。最大欠陥の長さに相当する破壊応力を求め,この破壊応力に相当する応力をロータに負荷すると,残存したロータ内に残存する欠陥の長さは許容最大欠陥長さ以下になっている。このアイデアに基づいて保証試験を実施し,品質を保証した。 回転体アッシーの回転慣性モーメントは約34%低減し,ターボチャージャが0から10万rpmに達するまでの時間は約36%向上した。 |
保管場所 | : | 日産自動車(株)車両先行開発部 (〒243-0192 神奈川県厚木市岡津古久560-2) |
製作(製造)年 | : | 1985 |
製作者(社) | : | 日産自動車 株式会社 |
資料の種類 | : | その他(資料) |
現状 | : | 保存・非公開 |
会社名 | : | 日産自動車(株) |
通称名 | : | セラミック・ターボチャジャー |
搭載車名 | : | フェアレディZ |
製作年 | : | 1985 |
構造・方式・手段・方法等 | : | 窒化珪素セラミック製ターボロータを射出成形後焼結し,金属軸にろう付けと焼ばめにより接合。最大許容欠陥長さに相当する応力を負荷し,残存したロータを選択することにより,寿命を保証している。 |
機能・作用等 | : | 高温強度が高い軽量材料として,比重が耐熱金属の半分以下の脆性材料であるセラミックをロータを金属軸に接合し,回転慣性モーメントを低減した。ターボ過給機で問題となる,過渡時の遅れ(加速時のターボラグ)を低減した。 |
効果 | : | 回転慣性モーメントを約2/3に低減。加速応答性を向上 |
参考文献 | : | ・日産技報 Vo21 P125~134 1985 ・SAE Paper861128 ・第14回日本ガスタービン学会 講演会前刷 ・日本機械学会 北陸地方講演会 ・日本学術振興会 高温セラミック材料第124委員会、将来加工技術第136委員会など |
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