雇用保険 被保険者

雇用保険

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/20 07:52 UTC 版)

被保険者

日本の雇用者
(総務省統計局、2019年度労働力調査[3]
雇用形態 万人
役員 335
期間の定めのない労働契約 3,728
1年以上の有期契約 451
1か月~1年未満の有期契約(臨時雇) 763
1か月未満の有期契約(日雇い 15
期間がわからない 239

雇用保険において「被保険者」とは、適用事業に雇用される労働者であって、以下のいずれにも該当しない者をいう(第4条、第6条、施行規則第3条の2、第4条)。雇用保険の被保険者になるか否かは、本人の意思に関係なく、加入要件を満たすことで当然に被保険者となるため、労働者の側から加入を拒むことはできない。なお平成29年1月より「65歳に達した日以後に雇用される者」が適用除外から削除され、継続雇用の有無にかかわらず65歳以上の者も被保険者となる。

  • 1週間の所定労働時間20時間未満である者(日雇労働被保険者に該当することとなる者を除く)
    • 「1週間の所定労働時間」とは、就業規則、雇用契約書等により、その者が通常の週に勤務すべきこととされている時間をいう。所定労働時間が1か月の単位で定められている場合には、当該時間を12分の52で除して得た時間を1週間の所定労働時間とする。所定労働時間が1年間の単位でしか定められていない場合には、当該時間を52で除して得た時間を1週間の所定労働時間とする。1週間の所定労働時間が定まっていない場合やシフト制などにより直前にならないと勤務時間が判明しない場合については、勤務実績に基づき平均の所定労働時間を算定する。
    • 2022年1月の改正法施行により、65歳以上の労働者に限り、一事業所における週の所定労働時間が20時間未満であっても、複数の事業主に雇用され週の所定労働時間合計が20時間を超える場合、当該労働者からの申し出により被保険者となることになった。
  • 同一の事業主の適用事業に継続して31日以上雇用されることが見込まれない者(前2月の各月において18日以上同一の事業主の適用事業に雇用された者及び日雇労働者であって日雇労働被保険者に該当することとなる者を除く)
  • 季節的に雇用される者であって、次のいずれかに該当するもの(日雇労働被保険者に該当することとなる者を除く)
    • 4か月以内の期間を定めて雇用されるもの
    • 1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満である者
  • 学校教育法に規定する各学校の学生又は生徒であって、次のいずれにも該当しない者
    • 卒業を予定している者であって、適用事業に雇用され、卒業した後も引き続き当該事業に雇用されることとなっているもの
    • 休学中の者
    • 定時制の課程に在学する者
    • その他前記各号に準ずる者として厚生労働省職業安定局長が定めるもの
  • 船員法第1条に規定する船員(予備船員とみなされる者を含む)であって、漁船(政令で定めるものに限る)に乗り組むため雇用される者(1年を通じて船員として適用事業に雇用される場合を除く)
  • 国、都道府県市町村その他これらに準ずるものの事業に雇用される者のうち、離職した場合に、他の法令、条例、規則等に基づいて支給を受けるべき諸給与(退職手当制度等)の内容が、求職者給付及び就職促進給付の内容を超えると認められる者であって、以下のもの
    • 国又は特定独立行政法人の事業に雇用される者(非常勤職員で職員とみなされないものを除く)
      • 都道府県や市町村の場合と異なり、申請や承認は不要。
    • 都道府県等の事業に雇用される者で、当該都道府県等の長が雇用保険法を適用しないことについて厚生労働大臣に申請し、その承認を受けたもの
    • 市町村等の事業に雇用される者であって、当該市町村等の長が雇用保険法を適用しないことについて都道府県労働局長に申請し、その承認を受けたもの

被保険者資格は、雇用されるに至った日(雇用契約締結日ではなく、実際に雇用関係に入った最初の日を指す)に取得することとされる。また離職日の翌日、死亡日の翌日に被保険者資格を喪失する。ただし、離職日に新たに被保険者資格を取得すべき場合は離職日当日に従前の雇用関係に基づく被保険者資格を喪失する。離職以外による被保険者資格の喪失(取締役への就任、労働条件の週20時間未満への変更、雇用保険の保険関係の消滅等)については、それぞれ当該事実があった日に被保険者資格を喪失する。

日本に在住する外国人無国籍者は、外国公務員及び外国の失業保険制度の適用を受けていることが立証された者を除き、原則として被保険者となる。海外の事業に出向・転勤する場合であっても、出向元適用事業主との雇用関係が継続する限り被保険者となる。一方海外の事業に現地採用される者は、国籍のいかんにかかわらず被保険者とならない。船員については、適用事業に雇用される船員であれば、当該船員が乗船している船舶が航行する領域に関わりなく被保険者となる。

当該事業所における通常の労働者と同じ時間働く者は被保険者となる。通常の労働者よりも勤務すべき時間が短い者(短時間就労者)は、「1週間の所定労働時間が20時間以上で、かつ、同一の事業主の適用事業に31日以上引き続いて雇用される見込みのある」者が被保険者となる。

  • 31日以上雇用が継続しないことが明らかである場合を除き、すべて「31日以上雇用される見込み」があるとされる。予定雇用期間が31日未満であっても、更新等により同一の仕事に31日以上雇用される見込みがあれば、その見込みの立った時点から被保険者となる。
  • 労働条件の変更により、一時的に労働時間が週20時間未満となっても、週20時間以上に復帰する前提であれば、被保険者資格を喪失しない。ただし、結果的に週20時間以上となる労働条件に復帰しないまま離職した場合には、週20時間未満となるに至った時点において被保険者資格を喪失したものとして取り扱う。
  • 有期労働契約の場合、週20時間以上の労働条件で次の雇用が開始されることが見込まれる場合、被保険者資格は継続する。見込まれない場合、最後の雇用契約の終了日の翌日に被保険者資格を喪失する。

事業主は、その雇用する被保険者を当該事業主の一の事業所から他の事業所に転勤させた場合は、当該事実のあった日の翌日から起算して10日以内に、雇用保険被保険者転勤届を、転勤後の事業所の所轄公共職業安定所長に提出しなければならない。転勤前と転勤後の事業所が同一の公共職業安定所の管内である場合であっても提出を要する。

労働者性の判断を要する場合

個人事業主や法人の代表取締役は被保険者とはならないが、法人の取締役監査役で労働者的性格の強い者であって雇用関係が認められるもの(業務執行権を持たない、役員報酬が給与額を超えない、等)は被保険者となる[注 4][注 5]

同居の親族は、原則として被保険者とされないが、「同居の親族実態証明書」及び添付書類の確認により他の労働者と就労状態に労働者性があると確認できれば、被保険者資格を認めるとされる。具体的には、以下のすべての要件を満たすこととされる。

  • 事業主の指揮命令にしたがっていること(事業主の申告に基づいて判断する)。
  • 就業の実態及び賃金の支払いが他の労働者と同様であること(「同居の親族実態証明書」及び添付書類あるいは事業主の申告によりすべての比較対象労働者との比較により判断する)。
  • 事業主と利益を一にする地位にないこと。

家事使用人労働基準法上の労働者でないため被保険者とならないが、適用事業に雇用されて主として家事以外の労働に従事することを本務とする者は、家事に使用されることがあっても被保険者となる。

駐留軍等労働者は、ハウスメイド等の家事使用人を除き、すべて防衛省を経由して間接に雇用される形態をとっており、これらの者は、国に雇用される者に該当するが、国家公務員退職手当法の適用は受けないので被保険者となる。

外国人技能実習生(在留資格「技能実習1号イ」、「技能実習1号ロ」、「技能実習2号イ」及び「技能実習2号ロ」の活動に従事する者)として受け入れられ、技能等の修得をする活動を行う場合には、受入先の事業主と雇用関係にあるので、被保険者となる。ただし、入国当初に雇用契約に基づかない講習(座学(見学を含む)により実施され、実習実施期間の工場の生産ライン等商品を生産するための施設における機械操作教育や安全衛生教育は含まれない。)が行われる場合には、当該講習期間中は受入先の事業主と雇用関係にないので、被保険者とならない。

生命保険会社の外務員は、事業主と委任契約関係にある場合が多く、原則的には被保険者とならないが、その職務の内容、服務の態様、賃金の算出方法等から総合的に判断して、特に雇用関係が明確であると認められ、事業主の支配拘束・指揮命令を受けている者は、被保険者となるとされる。損害保険会社の外務員、証券会社の外務員、金融会社、商社等の外務員等についても、その職務の内容、服務の態様、給与の算出方法等の実態により判断して雇用関係が明確である場合は、被保険者となる。

在宅勤務者は、事業所勤務労働者との同一性(指揮系統、拘束時間、就業規則の適用等)が確認されれば、原則として被保険者となる。

派遣労働者は、派遣元の事業所における被保険者となる。いわゆる登録型派遣労働者の場合、週20時間以上の労働条件で次の派遣就業が開始されることが見込まれる場合、被保険者資格は継続する。見込まれない場合、派遣就業に係る雇用契約期間の終了日の翌日に被保険者資格を喪失する。終了日以降に当該派遣元事業主の下での週20時間以上の派遣就業を希望し、当該派遣元事業主に登録している場合は、「次の派遣就業が開始されることが見込まれる場合」として取り扱う。

授産施設は、身体上若しくは精神上の理由又は世帯の事情により就業能力の限られている者、雇用されることが困難な者等に対して、就労又は技能の習得のために必要な機会及び便宜を与えて、その自立を助長することを目的とする社会福祉施設であるから、その作業員(職員は除く)は、原則として、被保険者とならない。

宗教者は、「宗教上の儀式、布教等に従事する者、教師、僧職等で修行中の者、信者であって何等の給与を受けず奉仕する者等は労働基準法上の労働者ではない」[4]を根拠とし、一般の企業の労働者と同様に労働契約に基づき賃金を受ける場合を除いては被保険者にならない。但し当該通達は、具体的な労働条件等を一般企業と比較し個々の事例について実情に即して判断することも求めている。

4か月以内の期間を定めて季節的事業に雇用される者がその定められた期間を超えて引き続き同一の事業主に雇用されるに至った場合はその定められた期間を超えた日から被保険者となる。ただし、当初の期間と新たに定められた期間が通算して4か月に満たない場合は被保険者とならない。

長期欠勤していても、雇用関係が存続する限りは、賃金の支払いがなくても被保険者となる。求職者給付及び就職促進給付の内容を上回るような退職金制度のある適用事業に雇用される者であっても、被保険者となる。

同時に2以上の雇用関係にある労働者(在籍出向者等)は、原則としてその者が「生計を維持するに必要な主たる賃金を受ける一の雇用関係」についてのみ被保険者となる。同時に2以上の雇用関係において被保険者となることはない。したがって出向先で主たる賃金が支払われている場合、出向元との保険関係は終了する[注 6]。なお65歳以上の者の出向の場合は原則として出向元の被保険者とし、65歳未満の者が出向先で被保険者資格を取得したのちに65歳到達後に出向元に復帰した場合は出向元の被保険者となる。

一般被保険者

一般被保険者とは、被保険者のうち、下記に規定する者(高年齢継続被保険者・短期雇用特例被保険者・日雇労働被保険者)以外のものをいう。そのため、65歳未満という年齢制限がある。

高年齢被保険者

高年齢被保険者とは、被保険者(短期雇用特例被保険者・日雇労働被保険者に該当する者を除く)であって、65歳以上の者をいう(第37条の2)。法改正により、平成29年(2017年)1月1日(施行日)より65歳前からの継続雇用の有無にかかわらず雇用保険の被保険者とされる。施行日以降に新たに雇用された65歳以上の者はその雇用日に、施行日前に高年齢継続被保険者である者は施行日に高年齢被保険者となる。また施行日前に雇用される時点において65歳に達しているため高年齢継続被保険者の資格を得られなかった者が施行日をまたいで継続雇用されている場合、施行日に雇用されたものとみなして高年齢被保険者の資格を取得する。

平成28年12月31日までは、「高年齢継続被保険者」として、同一の事業主の適用事業に65歳に達した日の前日以前から雇用され、現在65歳以上になっている被保険者(短期雇用特例被保険者、日雇労働被保険者を除く。改正前の第37条の2)を対象としていた。つまり、継続雇用(定年後の再雇用も含む)されている一般被保険者のみが、65歳に達すると高年齢継続被保険者となり(特に手続きは必要なく、自動的に切り替わる)、雇用される時点において65歳に達している者は、適用除外であるため被保険者とならなかった。

短期雇用特例被保険者

短期雇用特例被保険者とは、被保険者であって季節的に雇用されている者(出稼ぎなどをいう)であって、以下のいずれにも該当しない者をいう(日雇労働被保険者を除く。第38条)。雇用対策としての観点から特例として被保険者となる。「季節的に雇用」に該当するかどうかは、資格取得届の記載内容(雇用形態、職種、雇用期間を定めた理由等)から判断する(出稼労働者手帳を所持することのみをもって当該労働者が季節的に入離職する者であると判断することができるものではない)。

  • 4か月以内の期間を定めて雇用される者
    • 当初の所定の期間を超えて引き続き同一の事業主に雇用されるに至った場合は、その超えた日から、短期雇用特例被保険者となる(所定の期間と延長された期間とを通算して4か月を超えない場合を除く)。
  • 1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満である者

短期雇用特例被保険者が同一の事業主に引き続いて1年以上雇用されるにいたったときは、その1年以上雇用されるにいたった日に65歳未満であれば一般被保険者に、65歳以上であれば高年齢被保険者に切り替わる。

日雇労働被保険者

日雇労働被保険者とは、被保険者であって日々雇用される者、または、30日以内の期間を定めて雇用される労働者日雇い労働者)のうち、所定の要件を満たしたものをいう(第42条)。日雇労働求職者給付金#日雇労働被保険者を参照。

雇用保険被保険者証

雇用保険被保険者証(2012年交付の旧様式)
雇用保険被保険者証(2004年交付の旧様式)

事業主はその雇用する労働者が被保険者(日雇労働被保険者を除く)となったときは、翌月10日までに、所轄公共職業安定所長に雇用保険被保険者資格取得届を提出しなければならない(第7条、施行規則第6条1項)。平成28年1月からは、資格取得届には被保険者の個人番号を記載しなければならない。以下の場合には、資格取得届に労働契約に係る契約書、労働者名簿賃金台帳その他その事実を証明できる書類を添付しなければならない(施行規則第6条2項)。

  • その事業主において初めて資格取得届を提出する場合
  • 所定の期限を超えて資格取得届を提出する場合
  • 過去3年間に失業等給付の返還または納付を命ぜられたことその他これに類する事情があったと認められること
  • 資格取得届の記載事項に疑義がある場合その他資格取得届のみでは被保険者となったことの判断ができない場合
  • その同居の親族その他特に確認を要する者として公共職業安定局長が定める者に係る資格取得届を提出する場合

公共職業安定所長による被保険者資格の確認(確認自体は届出がなくても公共職業安定所長が職権で行うことができる。また被保険者自らが確認の請求をすることもできる)を受けると、雇用保険被保険者証(以下「被保険者証」)及び雇用保険被保険者資格取得等確認通知書(被保険者通知用)(以下「取得確認通知書」)が被保険者に交付される(第8条、第9条、施行規則第8条~第12条)。被保険者証・取得確認通知書の交付はその被保険者を雇用する事業主を経由して行うことができ(規則第9条)、実際にはほとんどの場合事業主経由での交付である。事業主は、原則として両方とも被保険者(労働者)に渡す必要があるが、実務上は被保険者証を事業主が保管し、取得確認通知書を被保険者に渡すこととしている場合が多い。被保険者証を事業主が保管している場合でも在籍中のみであり、退職時には被保険者に返却される。被保険者証は、新たに雇用保険適用事業所へ雇用された場合、新事業主へ提示が必要となるので、離職票と共に紛失しないように保管しなければならない(新事業主は被保険者証の提示を受けて資格取得届に被保険者番号を記入すれば足り、資格取得届に被保険者証を添付する必要はない)。被保険者証そのものに有効期限の記載はないが、新たな事業所で資格を取得すると被保険者証も新しく交付され、その時点で古い被保険者証は回収となり効力を失うが、被保険者番号は原則変わらない。変わると被保険者期間の算定等で不利益が発生するから、注意が必要[注 7]

実務上は、被保険者番号さえ分かれば手続に問題はないので、古い被保険者証であってもそれが今まで使用していた被保険者番号と同一であれば問題はなく、もし被保険者証そのものがなくても(以前の被保険者証を紛失した場合、あるいは前に勤務していた事業者が被保険者証を加入者本人に渡していなかった場合など)、資格取得届の内容からハローワークが保有する被保険者台帳を照合するので(規則第15条)、今までの被保険者番号で継続して被保険者となることができる。また、被保険者証は健康保険証社員証と違い身分証明書としては通用せず、悪用されにくいため、回収されない場合も多い。あくまでも、同じ被保険者番号を継続させることが重要である。なお、被保険者証を確認できる書類が一切なく、ハローワークにおいても確認ができない場合は、新規加入となり、新たな被保険者番号と被保険者証が交付される。裏面に「二重に交付を受けることの無いように」の旨、記載があるが、この「二重に」は、「別の被保険者番号で」という意味であるから、同じ被保険者番号で被保険者証が複数ある場合は、最新の被保険者証以外は処分しても良い。被保険者番号が異なる場合は、統合手続が必要となるので、ハローワークに申し出る必要がある(原則、後から発行された番号が生きる番号となる)。

なお、雇用保険に関する手続は、原則在職中は事業所を経由、離職後は本人が直接手続をする(複数の番号がある状態の際に行う統合手続きは、本人がハローワークで手続きを行う必要がある。この場合、基本は後から発行された番号側を、現事業所が使用することになるため、先の番号のデータを後の番号のデータに移す形で統一の手続きを取る。ただし、旧番号での保険給付の権利が消滅している場合は、統一ではなく、旧番号の「抹消」の手続きに移ることとなる)。

被保険者又は被保険者であった者は、いつでもハローワークに被保険者となった・ならなくなったことの確認の請求(雇用保険被保険者資格取得届出確認照会)を無料ですることができ(第8条)、事業主は労働者が当該請求をしたことを理由として解雇その他の不利益な取扱いをしてはならない。これに違反した事業主は、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられる(第83条)。この請求は口頭ですることができ、また当該請求に時効の定めはない。

なお、被保険者が氏名を変更した場合、従来は速やかに氏名変更届を提出することとされていたが、法改正により2018年 (平成30年) 3月30日以降は個人番号を変更した場合あるいは雇用継続給付の支給申請の際等に併せて氏名変更届を提出すればよいこととされた(改正後の規則第14条)。さらに、2020年 (令和2年) 1月1日からは規則第14条が削除され、同日(電子申請は同年6月1日)からは氏名変更届単独での提出はできなくなった(氏名変更届は必ず他の届・申請と抱き合わせで提出することとなる)。

雇用保険被保険者資格取得等確認通知書

雇用保険被保険者資格取得届出確認照会回答書

取得確認通知書は、被保険者に雇用保険の資格の取得手続が行われたことを通知する書面であり、事業主を経由して被保険者に交付される。雇用保険への加入を確認する書面として、被保険者証と似た役割を持つが、取得確認通知書でしか確認できない事項として、資格取得年月日、事業所名、受理日が記載されている。2011年の改正前の様式では、被保険者証にすべてが記載されていて、取得確認通知書は交付されていなかった。

しかし、雇用保険など各種保険制度に精通している労働者は少なく、事業主を信頼して当然に加入しているものと思い、実際退職時に雇用保険に入っていなかったことを初めて知る労働者が発生、これにより退職した労働者が予定していた給付を受けられない問題が多発した。これはそもそも被保険者に交付しなければならない被保険者証を便宜上事業主が管理していることにより、被保険者自身は雇用保険に加入したかの確認が実質できないため、この対策として、被保険者へ雇用保険に加入したことを通知する専用の書面として被保険者証とは別に交付されるようになっている。これすら渡されない場合は、労働者はハローワークに雇用保険への加入を確認すべきである。

ハローワークとしては、従来通り被保険者証と共に交付するように指導しているが、未だ浸透しておらず、会社が保管しているケースもある。会社が保管する理由としては以下の理由がある。

  • 被保険者側としては主に退職後に使用する書類であり、資格取得時点で渡してしまうと、一般的にそのまま何年も保管しなければならず、退職時には紛失してしまっているケースがあり、事業主は再交付の事務手続が増えるため。
  • 事業主は、被保険者の在職期間中は雇用保険に関する事務手続(住所変更など)を行う義務があるため、その度に被保険者証を確認する手間が増える。実務上は、被保険者番号を労働者名簿などに控えるか、そのコピーを保管すればこと足りる。

なお、退職後新たに勤務する事業主へ取得確認通知書は提出する必要はないが、新様式の場合は切り取らずそのまま渡しても問題ない(旧様式の場合は全体で被保険者証であるから改変はできない)。個人情報が気になる場合は切り取って被保険者証のみを新たに勤務する事業主に渡しても良いが、取得確認通知書に記載されている個人情報は通常は履歴書と同程度のものであるから、切り取ることにより事実上秘匿できる情報はない。

離職票・資格喪失届

事業主は、その雇用する労働者が被保険者でなくなったとき(離職のほか、労働者が適用除外に該当することとなった場合を含む)は、資格喪失日の翌日から起算して10日以内に雇用保険被保険者資格喪失届(資格喪失届)を所轄公共職業安定所長に提出しなければならない(施行規則第7条1項)。平成28年1月からは、資格喪失届には被保険者の個人番号を記載しなければならない。

被保険者が離職した後、基本手当を受けるためには、雇用保険被保険者離職票(離職票)をハローワークに提出しなければならない。この離職票は、事業主が作成する雇用保険被保険者離職証明書(離職証明書)に基づき、公共職業安定所長が受理し、事業主が当該離職者に交付する(施行規則第17条1項、2項)。離職証明書は3枚複写となっていて、そのうちの1枚が被保険者が受け取る離職票となる。このため、資格喪失届の提出には原則として離職証明書を添付しなければならない(資格喪失の理由が離職以外の場合は添付不要)。なお、基本手当の受給資格がない場合や、懲戒解雇の場合であっても、被保険者が離職票の交付を希望したときは事業主は離職証明書を作成しなければならない。離職日において59歳以上である被保険者については、当該被保険者が離職票の交付を希望しなくても離職証明書を作成しなければならない(後述の「六十歳到達時等賃金証明書」の作成に必要なため。施行規則第7条2項)。離職理由について事業主が離職証明書に記した内容について離職者に異議がある場合は、離職票にその旨を記入する欄がある[注 8]

離職票の交付は原則として事業主を通して行うが、離職者が直接ハローワークに離職証明書を持参したときは、離職票を離職者本人に交付しなければならない。


注釈

  1. ^ 雇用保険法上は労働者の定義はなされていないが、行政手引によれば「事業主に雇用され、事業主から支給される賃金によって生活している者、及び事業主に雇用されることによって生活しようとする者であって現在その意に反して就業することができないものをいう」とされる。これを解釈すれば、「労働組合法第3条でいう労働者と同義である」とされる(福岡高判平成24年2月28日等)。
  2. ^ 行政手引によれば「雇用関係とは、民法第623条の規定による雇用関係のみでなく、労働者が事業主の支配を受けて、その規律の下に労働を提供し、その提供した労働の対償として事業主から賃金、給料その他これらに準ずるものの支払を受けている関係をいう。」とされる。
  3. ^ ここでいう「その事業に使用される労働者の2分の1」とは、その事業において使用される労働者総数の2分の1以上の者ではなく、その事業が任意加入の認可を受けて適用事業となっても被保険者とならない労働者を除いた労働者の2分の1以上の者をいうものである。この場合、被保険者となるべき者であるかどうかの判断は、任意加入申請書が提出された際に行う。労災保険とは異なり、雇用保険では任意加入すれば労働者に保険料の負担が発生するための取り扱いである。
  4. ^ 監査役は使用人を兼ねることはできないとされるが(会社法第335条)、名目的に就任しているにすぎず、常態的に従業員として事業主との間に明確な雇用関係があると認められる場合には被保険者となることができる。
  5. ^ この場合、公共職業安定所へ雇用の実態を確認できる書類等の提出が必要となる。
  6. ^ この場合、出向元は被保険者資格喪失届(資格喪失の原因は「離職以外の理由」となる)、出向先は被保険者資格取得届の提出が必要である。
  7. ^ 被保険者証の汚損・滅失による再発行は、所轄ハローワークでなくても、全国どのハローワークでも可能である。
  8. ^ 離職票の汚損・滅失による再発行は、被保険者証の場合と異なり、当該離職票を交付したハローワークでないと行えない(施行規則第17条4項)。
  9. ^ 平成19年度から平成28年度までは「それぞれの100分の55とする」暫定措置がなされてきたが(附則第13条)、国庫負担については引き続き検討を行い、2020年度(「平成32年度」)以降できるだけ速やかに安定した財源を確保したうえで、暫定措置を廃止するものとされる。
  10. ^ この取り扱いにより、一般的には、会社側は会社都合で解雇すると雇い入れ関係助成金が受けられなくなるので、会社都合退職であっても会社側は労働者の自己都合退職にしたがる。サービス残業が多い場合はタイムカードのコピーを取っておいたり、退職を強要された場合には人事担当者の発言を録音するなど、ハローワークに申し出るに際しては記録を残しておくことが肝要である。
  11. ^ かっては、「社会的事情により就職が著しく阻害されている者」の中に、いわゆる「同和地区出身者(35歳以上で高等学校卒業以下の学歴であり、大企業の正社員として勤務したことがない者に限る)」が含まれていた。2001年4月に行われた国の同和対策の転換(「地域改善対策特定事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律」(地対財特法)の失効)により、国は社会全体に対する啓発である「一般対策」としての同和対策を行うものとされ、同和地区出身者に対して個別に優遇措置を適用すること(「特定対策」)は全廃されるに至っている。この方針を受けて、現在では単に「同和地区出身者」という理由だけでは「就職困難者」とは認められない。
  12. ^ 4週間目の日が国民の祝日年末年始など官公庁の休庁日に当たる場合、求人、求職の状況、ハローワークの事務量等を勘案して適宜前後にずらされる。
  13. ^ そのため、ほとんどのハローワークで、当初より本人名義の金融機関口座の通帳と印鑑の持参を求めている。
  14. ^ ただし、ハローワークの閉庁日(土・日・祝日、年末年始)の前日に就職の届出を行った者が、閉庁日または閉庁日の翌日に就職する場合に限って例外的に郵送による失業認定が可能である。
  15. ^ a b 所定給付日数内での就職率を見た場合、この年齢層について、他の層と比べて低くなっていることから、平成29年4月の改正で所定給付日数が拡充された。
  16. ^ 1か月は28日として計算する。したがって、4か月以上というのは85日以上のことである。
  17. ^ 訓練延長給付を受けている受給資格者については、再就職の見込みを立てた上で公共職業安定所長の受講指示に基づき、具体的な就職支援として必要な職業訓練等を実施している者であることから、個別延長給付の対象者に該当しない。
  18. ^ 待期期間が経過する前に保育等サービスの利用を開始した場合は、待期期間が経過した後の保育等サービスの利用分のみ支給対象となる。
  19. ^ 同一の事業主に継続雇用される場合のほか、離職して基本手当を受給せずに再就職する場合を含む。
  20. ^ 他の給付を受けて基本手当が支給されたとみなされる場合を含む。
  21. ^ 「子」は法律上の子であればよく、実子であるか養子であるかを問わない。また特別養子縁組を成立させるために監護している者を含む。平成29年1月からは、里親である被保険者に養育されている子も含む。
  22. ^ 厚生労働省は、二事業に関する処分は行政不服審査法上の不服申立ての対象とはならず、処分に不服がある場合は行政事件訴訟法に基づき直接、処分の取消訴訟を提起することになる、との立場をとっている。
  23. ^ 雇用福祉事業(具体的には勤労者福祉施設雇用促進住宅等。改正前の第64条)は「保険料の無駄遣い」等の強い批判があり廃止された。

出典

  1. ^ 有斐閣「現代社会福祉事典」雇用保険法の項目
  2. ^ 労働保険の保険料の徴収等に関する法律 2条1項
  3. ^ 労働力調査 基本集計 全都道府県 結果原表 全国 年次 2019年 | ファイル | 統計データを探す | 政府統計の総合窓口』(レポート)総務省統計局、2019年1月31日、基本集計 第II-10表https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00200531&tstat=000000110001&cycle=7&year=20190&month=0&tclass1=000001040276&tclass2=000001040283&tclass3=000001040284&result_back=1 
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  5. ^ 令和4年度雇用保険料率のご案内厚生労働省
  6. ^ 2022年10月からの「雇用保険料引き上げ」とは? どんな影響がある?ファイナンシャルフィールド
  7. ^ 特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲と判断基準(厚生労働省)
  8. ^ 新型コロナウイルス感染症等の影響に対応した給付日数の延長に関する特例について - 厚生労働省
  9. ^ 「「自己都合」の失業給付前倒し」読売新聞2023年6月7日付朝刊社会保障面
  10. ^ 新しい資本主義実現会議(第19回)内閣官房
  11. ^ a b c 失業手当:日本、不受給77% 先進国中最悪の水準-ILO報告 - 毎日新聞 2009年3月25日配信 東京夕刊掲載(NPO法人仙台夜まわりグループのブログより)
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  13. ^ http://www.reuters.com/article/2013/12/03/us-usa-economy-joblessbenefits-idUSBRE9B20XA20131203
  14. ^ http://ftp.iza.org/dp3570.pdf
  15. ^ http://www.pole-emploi.fr/candidat/le-montant-de-votre-allocation-@/suarticle.jspz?id=4125
  16. ^ http://entreprise.lefigaro.fr/chomeurs-unedic.html
  17. ^ importe maximo desempleo 2012
  18. ^ Krugman, Paul (2013年12月8日). “The Punishment Cure”. New York Times. http://www.nytimes.com/2013/12/09/opinion/krugman-the-punishment-cure.html?partner=rssnyt&emc=rss&_r=0 2013年12月10日閲覧。 






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