配向性ストランドボード 配向性ストランドボードの概要

配向性ストランドボード

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/02/22 07:45 UTC 版)

配向性ストランドボード(OSB)

原料・製法

圧縮、接着される前のOSB

もともとOSBは、アスペンポプラの一種。北米の未利用樹種)など、柔らかで曲げ強度も低いため、そのままでは建材として利用しづらい低質の広葉樹を加工して、構造用の材料に使用できるよう転換させたものである。具体的には、木材を薄い削片状にしてから乾燥させ、熱硬化接着剤とともに積層し、高温のプレス処理を経て強固な板材にしている。削片状のエレメントは、パーティクルボードに用いられるものより面積が大きく薄い形状をしており、木材の異方性をより多く残している。なお、その見た目の印象から、OSBは端材や廃材のリサイクル品だと誤解されることも多いが、あまり使い道のなかったアスペンを使うために開発された技術であるため、材料のアスペンは、ほとんどの場合新品の丸太である。

使用される接着剤としては、構造用合板と同様にフェノール系イソシアネート系のものが一般的である。前者は熱硬化反応を実現させる架橋剤としてホルムアルデヒドを含む。本来、フェノール樹脂は化学的に安定なので、熱硬化反応で消費されたホルムアルデヒドはフェノール樹脂の分子の一部として化学的に固定され、樹脂の分解などによって放散されることは少ない。しかしかつては、硬化反応を促進するため過剰にホルムアルデヒドを加える例があり、反応で余ったものはボードから放散されるのでシックハウス症候群の原因と指摘されていた。近年は必要十分な量を加えるよう正確に管理されており、JASの認定を受けたF☆☆☆☆のものであれば、構造用のみならず(においが気にならなければ)人が直接触れることもある内装仕上げに用いることも建築基準法で認められている。なお、イソシアネート系接着剤は、最初からホルムアルデヒドも、また化学的分解などによってホルムアルデヒドになりうる成分も含んでいない。

イソシアネート系接着剤はやや高価であるが、接着剤の主剤成分を架橋反応で硬化させるのみならず、木材の主成分であるセルロース水酸基とも反応し化学結合によって木材の繊維と強固に固着するので、所定の接着強度を実現するための必要量が少なくてすみ、反応速度も比較的早いので工場での生産性を高めるというメリットがある。材料代は高くても生産コストの引き下げ効果のほうが大きい場合もあり、さらに、ほぼ無色であり見た目を損なわないこと、そして前述のようにホルムアルデヒドを含まないので「ホルムアルデヒド不使用」と明記して製造販売することがJASで認められているという商業的な付加価値もあるので、OSBのみならず他の木材接着の分野でも採用が広がっている。

軟弱な木材をいったん薄いエレメントに加工し、接着剤とともに加圧成形で丈夫な構造材に転換するというアイデアで製造された初期の製品のボードは、ウェハーボードと呼ばれエレメントの向きはランダムであった。しかし、その後の研究で、エレメントの強度の異方性を積極的に利用し、その向きを層ごとに直交するよう制御したほうがボードの強度や寸法安定性が増すとわかったので、各メーカーが、その技術を取り入れるようになった。こうして新たに商品化されたボードでは、エレメントが従来のようなランダム配置ではなく管理されていることを明示するため、「配向性(oriented)」という言葉が名称に加えられた。ウェハーボードを生産している工場はわずかに残存しているが、ほとんどがOSBに切り替わっている。なお、エレメントの向きはあくまでも確率的なものであるから、合板のように正確に直交しているわけではない。これはOSBの欠点ではなく、斜め方向のエレメントはボート内で筋交いのような働きをするので、層ごとにエレメントをほぼ直交させつつも、角度に適度なばらつきを持たせるよう生産工程を管理することは、後述の面内せん断力強度を高めるため重要である。

また北米産(主要生産地はカナダ)のOSBの大部分は、現地で豊富に入手できる安価な広葉樹を使用しているが、地域によって樹種は多少異なっており、また単一の樹種を使っているとも限らない。メーカーごとに、複数の樹種をどういう割合でブレンドするかなどについても独自のノウハウを持っている。一方、ヨーロッパで生産されているOSBでは、広葉樹よりもむしろ入手しやすいヨーロッパアカマツを使用し、こちらは単一の樹種を材料としている例が多い。近年は、生育の早いユーカリポプラ(北米から持ち込まれたアスペン)を用いたものが、中国東南アジアで生産されている。単純な木材として比較するなら、アスペンはヨーロッパアカマツよりも軟弱であるが、OSBに加工する工程において十分な強度が付加されており、JASあるいは各国の品質規格を満たしている製品であれば、エレメントの素材が何であるにせよ構造材として必要な特性は保証されている。見た目の色あいなどは、素材や製法によって異なる。

OSBの特徴(用途も参照のこと)

OSBは、合板集成材よりも小さな木片を材料にできるため木材の利用率は高く、の細いや、成長は速いがまっすぐに育ちにくいタイプの木でも材料にすることができる。珍しい例としてはを材料としたものもある。日本においては、いまだ研究試作段階であるが、内層には家屋解体などで生じた廃木材を破砕したものを使い、外側は国産の間伐材などから作った木片でカバーするようなものも考えられている[2]。OSBは、材料として使える樹種の選択の幅が広く、まず樹種を決めてから、次に材料の特性に合わせた製造工程を設計し、品質規格を満たす製品にすることが可能である。そのため、森林資源の持続可能な利用という観点から、エレメントの素材として萌芽更新されやすい樹種、すなわち伐採されても切り株からすぐに新を出し比較的短期間で回復するような樹種を選択し、植林、伐採、天然更新を適切なサイクルで継続的に維持管理することも期待できる。アスペンも、萌芽更新されやすい樹種のひとつである。

OSBの日本語訳は「配向性ストランドボード」であるが、一般には特に和訳されないまま「OSB」という名称が広く使われている。ホームセンターウェブサイトなどでは「OSB合板」という呼称も散見されるが、OSBはパーティクルボードやMDFなどのような木質ボードに類似する性質を有し、合板とは製法も性質も異なっており、例えば湿気で膨れることがあるなど合板とは違うクセをもっているので、「合板」を略称として用いるのは間違いのもとであり、注意が必要である。


  1. ^ 構造用パネルの日本農林規格” (PDF). 農林水産省 (2008年6月10日). 2012年9月2日閲覧。
  2. ^ 国産材を用いた実大OSBの諸性能 北海道立林産試験場報10巻1号 p.1-10(1996-1)


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