日本の電力会社
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日本では、2015年に「平成二十七年六月二十四日法律第四十七号」によって電気事業法の一部が改正され、2016年4月1日からの電力の小売り全面自由化[1]にあわせて、改正された電気事業法[2]が同日施行された。これにより、改正前の旧第2条第1項第10号に規定されていた電気事業者である「一般電気事業者、卸電気事業者、特定電気事業者及び特定規模電気事業者」の名称は法律上廃止され、新法第2条第1項第17号によって電気事業者は「小売電気事業者、一般送配電事業者、送電事業者、特定送配電事業者及び発電事業者」と規定された。その後、2020年の電気事業法改正により、配電事業者と特定卸供給事業者が電気事業者として新たに位置づけられた[3]。
歴史
日本各地では中小の電力会社の設立が相次いだ。しかし、関東大震災を機に電力会社の統合が進み、五大電力会社と呼ばれた東京電燈、東邦電力、大同電力、宇治川電気、日本電力の5社にほぼ収斂していった。
しかし、1939年の戦時国家体制(国家総動員法)によりこれらの電力会社は特殊法人の日本発送電と関連する9配電会社に統合された。現在、電気事業連合会加盟の電力会社のうち、沖縄電力を除く9社はこの日本発送電が元になっている。なお沖縄電力が電気事業連合会に加盟したのは2000年3月である。
戦後の占領政策において、日本発送電の独占状態が問題視されたことから、電気事業再編成審議会が発足し、同会長の松永安左エ門がGHQを直接説得し、国会決議より効力が強いGHQポツダム政令として、電気事業再編成審議会の全委員(日本発送電存続派)の反対を押し切る形で、9電力会社への事業再編(1951年)が実現された[注 1]。1952年、9電力会社は電気事業連合会を設立した。一方、1952年9月には、電源開発が発足した。
沖縄電力は、米軍統治下の1954年2月に琉球列島米国民政府の出資で発足した琉球電力公社を、1972年5月の沖縄本土復帰に伴って沖縄県が発足するに及び、国と県が出資する特殊法人として再編したものである。このためかつては沖電を除く9社を“電力9社”と呼んでいた。現在では沖縄電力は民営化され、電気事業連合会に加盟している。
1995年、世界的な規制緩和の流れを受けた電気事業法改正に伴う電力自由化により、電力会社に卸電力を供給する独立系発電事業者 (Independent Power Producer、IPP) の参入が可能になり、また大型ビル群など特定の地点を対象とした小売供給が特定電気事業者に認められた。これにより、異業種からの電気事業への参入が相次いだ。
財務報告
電気事業者(特定規模電気事業者を除く)の作成する財務諸表は、一般の事業会社に適用される企業会計原則に加えて、電気事業会計規則(昭和40年通商産業省令第57号)に準拠して作成される。具体的な相違点としては、貸借対照表において、流動性配列法に代えて固定性配列法が採用されるなどである。
日本の電気事業者
2016年4月1日からの電力の小売り全面自由化にあわせて、改正された電気事業法が同日施行され、電気事業者は小売電気事業者、一般送配電事業者、送電事業者、特定送配電事業者および発電事業者となった。後述の旧一般電気事業者である10電力会社は、2016年4月1日に持株会社体制へ移行した東京電力を除き、同日時点では、小売電気事業、一般送配電事業、発電事業の3事業を兼営する小売電気事業者、一般送配電事業者、発電事業者を兼営していた。東京電力は、持株会社である東京電力ホールディングスに社名変更し、子会社である東京電力エナジーパートナー、東京電力パワーグリッド、東京電力フュエル&パワーが、それぞれ小売電気事業、一般送配電事業、燃料・火力発電事業を承継した[4]。
そして2020年4月1日より、沖縄電力を除く8電力会社の一般送配電事業部門は、各地域ごとに設立された、一般送配電事業者各社に分社化された。
小売電気事業者
小売電気事業を営むには、電気事業法第2条の2の規定により経済産業大臣による登録が必要である[5]。
資源エネルギー庁の「登録小売電気事業者一覧」によると2020年12月28日現在、計698事業者である[6]。
一般送配電事業者
一般送配電事業を営むには、電気事業法第3条の規定により経済産業大臣の許可が必要である。旧法規定の旧一般電気事業者である10電力会社の送電、配電部門にあたる事業である。
2020年4月現在、北海道電力ネットワーク、東北電力ネットワーク、東京電力パワーグリッド、中部電力パワーグリッド、北陸電力送配電、関西電力送配電、中国電力ネットワーク、四国電力送配電、九州電力送配電、沖縄電力の10事業者である。
送電事業者
送電事業を営むには、電気事業法第27条の4の規定により経済産業大臣の許可が必要である。送電事業とは、「自らが維持し、及び運用する送電用の電気工作物により一般送配電事業者に振替供給を行う事業(一般送配電事業に該当する部分を除く)」である。
資源エネルギー庁の送配電事業者一覧によると、送電事業者は以下の3社(2020年4月現在)である[7]。
- 電源開発送変電ネットワーク株式会社(J-POWER送変電)
- 北海道北部風力送電株式会社
- 福島送電株式会社
特定送配電事業者
特定送配電事業を営むには、電気事業法第27条の13の規定により経済産業大臣に届け出が必要である。特定送配電事業とは、旧法の特定電気事業者の送電部門や自営線供給を行っている特定規模電気事業者の送配電部門等にあたる事業である。
資源エネルギー庁の「登録特定送配電事業者一覧」によると2020年12月28日現在、以下の計31事業者である[8]。
発電事業者
発電事業を営むには、電気事業法第27条の27の規定により経済産業大臣に届け出が必要である。
資源エネルギー庁の「登録発電事業者一覧」によると2020年11月30日時点で、電気事業法等の一部を改正する法律(平成26年法律第72号)の附則の規定に基づき発電事業届出書の提出をしたとみなされる17事業者を含めて計942事業者である[9]。
以下は2022年6月現在の日本国内の事業者ごとの発電所数・出力の一覧(最大出力上位30社)である[10]。記載されていない事業者や発電エネルギー源ごとの詳細データは出典を参照されたい。
事業者名 | 発電所数 | 最大出力(kW) |
JERA | 22 | 59,893,400 |
関西電力 | 167 | 29,402,975 |
電源開発 | 67 | 17,096,350 |
東北電力 | 223 | 16,690,079 |
九州電力 | 153 | 15,977,628 |
中国電力 | 131 | 10,787,140 |
東京電力リニューアブルパワー | 168 | 9,930,232 |
中部電力 | 209 | 9,172,391 |
北海道電力 | 66 | 8,369,070 |
北陸電力 | 141 | 8,249,330 |
東京電力ホールディングス | 1 | 8,212,000 |
四国電力 | 63 | 5,280,238 |
日本原子力発電 | 2 | 2,260,000 |
沖縄電力 | 29 | 2,175,995 |
相馬共同火力発電 | 1 | 2,000,000 |
日本製紙 | 15 | 1,507,730 |
JFEスチール | 7 | 1,507,300 |
常磐共同火力 | 1 | 1,450,000 |
コベルコパワー神戸 | 1 | 1,400,000 |
日本製鉄 | 5 | 1,295,000 |
東日本旅客鉄道 | 12 | 1,270,760 |
コベルコパワー真岡 | 1 | 1,248,200 |
扇島パワー | 1 | 1,221,300 |
福島ガス発電 | 1 | 1,180,000 |
君津共同火力 | 1 | 1,152,900 |
泉北天然ガス発電 | 2 | 1,109,000 |
ENEOS | 19 | 1,050,658 |
戸畑共同火力 | 1 | 1,040,000 |
鹿島共同火力 | 1 | 1,000,000 |
川崎天然ガス発電 | 1 | 847,400 |
注釈
出典
- ^ “電力の小売り全面自由化って何?”. 資源エネルギー庁. 2016年7月21日閲覧。
- ^ “電気事業法(最終改正:平成二七年六月二四日法律第四七号)”. e-Gov法令検索. 総務省行政管理局. 2016年7月21日閲覧。
- ^ “「強靱かつ持続可能な電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律案」が閣議決定されました (METI/経済産業省)”. www.meti.go.jp. 2022年7月30日閲覧。
- ^ “事業概要 会社情報 東京電力ホールディングス”. 2016年7月22日閲覧。
- ^ “電気事業制度の概要 小売電気事業の登録申請受付について”. 資源エネルギー庁. 2016年7月22日閲覧。
- ^ “登録小売電気事業者一覧”. 経済産業省. 2021年1月26日閲覧。
- ^ “送配電事業者一覧(一般送配電事業者、送電事業者、特定送配電事業者)”. 資源エネルギー庁. 2020年3月29日閲覧。
- ^ 登録特定送配電事業者一覧 資源エネルギー庁
- ^ “発電事業者一覧”. 資源エネルギー庁. 2021年1月26日閲覧。
- ^ “2022年度 統計表一覧”. 資源エネルギー庁. 2022年11月6日閲覧。
- ^ a b c d 「電気事業制度について」 資源エネルギー庁、2016年7月22日閲覧。
- ^ a b c 「電気事業の概要(2011年5月27日時点のアーカイブ)」 経済産業省 関東経済産業局、2011年5月23日閲覧。
- ^ a b 「参考資料7 IT分野における規制・制度改革検討シート (PDF) (30ページ)」 (規制・制度改革に関する分科会(第6回)) 内閣府行政刷新会議、2011年1月26日。
- ^ 「IPP とは」 コトバンク、2011年5月18日閲覧。
- ^ 「小水力発電事業化へのQ&A(改訂版)-クリーンエネルギーとしての検討-(56,76ページ) (PDF) 」 農業土木機械化協会、2005年3月。
- ^ 「電気事業政策の現状と課題(7ページ) (PDF) 」 資源エネルギー庁 電力・ガス事業部、2010年11月12日。
- ^ 「特定電気事業(2011年10月10日時点のアーカイブ)」 経済産業省 北海道経済産業局、2011年5月13日閲覧。
- ^ 「平成23年度のRPS法対象電気事業者一覧」 RPS法ホームページ(資源エネルギー庁)、2011年5月13日閲覧。
- ^ 設備情報 ダム・水力発電 別子山エリア(愛媛県新居浜市) 住友共同電力
- ^ 千葉市『蘇我特定地区』における特定電気事業許可の取得について 2004年2月2日 JFEスチール
- ^ 「電力供給サービス:コージェネと系統電力を併用、ガス会社が電力事業に参入」 ITmedia、2012年11月30日。
- ^ 「経済 : 四賀に太陽光発電所 諏訪エネルギーサービス」 長野日報、2013年6月13日。
- ^ 「特定規模電気事業者 とは」 コトバンク、2011年5月18日閲覧。
- ^ 「電力小売市場の自由化について(電気供給者選択の自由化について) (PDF) (2011年3月4日時点のアーカイブ)」 資源エネルギー庁、2010年11月、3-4頁。
- ^ “特定電気事業者名称を「新電力」に 経産相”. 日本経済新聞 電子版. 2019年11月30日閲覧。
- ^ キーワード解説「特定規模電気事業者(PPS:Power Producer and Supplier)」 スマートジャパン
- ^ 電気事業法施行規則附則(平成24年3月23日経済産業省令第16号)
- ^ 視点・論点「電力自由化のリスク」 NHK解説委員会・解説アーカイブス、2012年7月31日。
- ^ 「電力市場の概要について(2013年12月1日時点のアーカイブ)」 経済産業省 北海道経済産業局、2011年5月14日閲覧。
- ^ 「エネクス (8133) IPPS出資やJEN買収で電力関連事業強化」 サーチナ、2011年2月28日。
- ^ 「関電、中央電に1割出資 10億円見通し 首都圏で電気販売」『日経産業新聞』日本経済新聞社、2014年9月9日、9面。
- ^ 『社名変更ならびに事務所移転のお知らせ』(プレスリリース)中央電力、2023年8月8日 。2023年10月28日閲覧。
- ^ 「過半数が4LDK・セレッソコート伊丹GC(2ページ)」 All About、2006年5月30日。
- ^ マンション向け電力サービス「J:COM電力」関東全域で提供開始 ジュピターテレコム、2013年4月18日。
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- ^ “関電、歴代首相に年2000万円 計7人、72年から18年献金 内藤元副社長が証言”. Yahoo!ニュース. 朝日新聞デジタル. (2014年7月28日). オリジナルの2014年8月2日時点におけるアーカイブ。
- ^ 『原発の深い闇』宝島社〈別冊宝島〉、2011年、87-91頁。ISBN 978-4-7966-8369-2。 文献には役員の個人名記載
- ^ 『原発の深い闇』宝島社〈別冊宝島〉、2011年、92-95頁。ISBN 978-4-7966-8369-2。 文献には個人名・団体名記載
- ^ a b c d 吉永康朗. “東京電力:石田顧問辞任へ 天下り、なれ合い半世紀 「原発安全規制に緩み」”. 毎日新聞社. 2011年4月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。2011年4月21日閲覧。
- ^ “高橋洋一の民主党ウォッチ 原子力安全・保安院の問題体質 経産省「植民地」、そして「東電の虜」”. JCASTニュース. 2011年4月21日閲覧。
- ^ a b c “50年間で68人が電力会社に天下り 経産省調査”. MSN産経ニュース. (2011年5月2日). オリジナルの2011年5月4日時点におけるアーカイブ。
- ^ 『原発の深い闇』宝島社〈別冊宝島〉、2011年、96-97頁。ISBN 978-4-7966-8369-2。 文献には受け入れ部局と期間が個別に掲示されている。
- ^ “新電力への切りかえ、25万件を突破(〜2016年11月) 沖縄電力はまだゼロ”. (2016年12月12日) 2017年1月1日閲覧。
- ^ “電力のスイッチング率(事業者間・事業者内、低圧)が20%を超えました”. 2019年3月22日閲覧。
- 1 日本の電力会社とは
- 2 日本の電力会社の概要
- 3 日本の電気事業者(旧分類)
- 4 日本の発電所
- 5 脚注
- 日本の電力会社のページへのリンク