戦国自衛隊 (映画) 戦国自衛隊 (映画)の概要

戦国自衛隊 (映画)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/28 15:34 UTC 版)

戦国自衛隊
G.I. Samurai
監督 斎藤光正
脚本 鎌田敏夫
原作 半村良
製作 角川春樹
出演者
音楽 羽田健太郎
主題歌 松村とおる「戦国自衛隊のテーマ」
撮影 伊佐山巌
編集 井上親弥
製作会社 角川春樹事務所
配給 東宝東映
公開
上映時間
製作国 日本
言語 日本語
製作費 11億5000万円[1]
配給収入 13億5000万円[2]
テンプレートを表示

千葉真一芸能生活20周年・ジャパンアクションクラブ(JAC発足10周年記念作品[3]

ストーリー

伊庭義明三等陸尉以下、近代武器で武装した21名の陸上自衛官および海上自衛官は、大規模演習に参加するための移動時に突然、新潟県海岸の補給地ごと戦国時代タイムスリップしてしまった。戸惑っている彼らは当地の武将が率いる軍勢に襲撃される。その後長尾平三景虎が家来と共に近付いてきた。景虎は伊庭と初めて会った瞬間に彼らの見慣れない服装・武器にひかれ、伊庭たちを仲間にしたいと考える。タイムスリップした現実を容易には受け入れられない伊庭と自衛隊員たち。再び景虎と敵対する軍勢に大量の矢で射撃され、関おさむ二等陸士と堀健児二等陸士らが死亡。伊庭と矢野隼人陸士長が機関銃を乱射して敵の陣地へ乗り込むと、後に続いて景虎たちが敵兵と切り結び、ついには敵将の首級を挙げる。白刃で斬り合う彼らの戦いを目の当たりにしたことで、自衛官たちは戦国時代へ来てしまったことを認識。錯乱した高島春美一等海士は現代へ戻るきっかけを作るため爆薬に火を放とうとし、矢野はナイフを彼に投げ付けて刺殺。隊が落ち着かない中で徐々に自分たちが戦国時代にいる現実を否応なしに受け入れていく。

伊庭は景虎から「あなたは戦国の世で生きるべき人だ」と、一緒に天下を取ろうと誘われる。伊庭は戸惑いながらも内心で戦国時代を謳歌おうかしていることに気づき、2人の間にはいつしか友情が芽生えていた。部下たちもそれぞれに戦国時代と向き合い、近隣の農民やその娘たちと交流。三村泰介一等陸士は娘の一人と恋に落ち、野中学一等陸士は老婆に自分の祖母の面影を思い出し、根本茂吉二等陸士は川で魚を獲る少年と出会い、その母親や兄弟と親しくなっていく。新潟の演習中に脱走し、駆け落ちをするつもりだった菊池弘次一等陸士はタイムスリップしたことを未だ受け入れることができずに隊を無断で離れ、婚約者の新井和子と待ち合わせをするはずの場所へ向かう。しかし山中で武装した落武者たちの襲撃によって同行した西沢剛一等陸士が殺害され、菊池も和子の名前を叫びながら崖から転落する。現代にいる和子は相馬野馬追を観ながら、菊池が来るのを待ち続ける。一方、現代に戻る術を模索していた県信彦一等陸士、木村治久三等陸曹、小野章一郎三等海尉らは、原住民と交流することは歴史を変えてしまうとして慎重な対応をしていた。

かつて伊庭にクーデター計画を潰されたとして恨んでいる矢野は弟分の加納康治一等陸士と、島田吾一三等陸曹を仲間に引き入れ、哨戒艇の護衛任務にあたっていた小野を刺殺して哨戒艇を奪い、重火器を持ち出して隊を無断で離れる。当初は矢野らに脅されていた須賀利重一等海士もやがて欲望を爆発させ、四人は周囲の村を次々と襲い略奪と殺人、強姦を繰り返す。伊庭は追跡し、隊に戻るよう説得するが、矢野はこれを拒んで戦えと挑発。矢野が船を降りようとした島田を射殺する一方、伊庭は清水英雄二等陸曹(機長)と大西里志一等陸士が操縦するヘリコプターから矢野たちの注意を引き付け、その隙にライフル射撃が得意な三村に3人を狙撃させる。哨戒艇に飛び降りた伊庭は瀕死の矢野を射殺。矢野らの棺桶として、哨戒艇を爆破した。

景虎と天下を取ることで歴史を変え、現代に戻ろうと企図した伊庭は、その目的のためにへ行くと部下に宣言し、隊員たちもこれに従う。しかし根本は知り合った少年とその家族のために、隊を離れた。景虎は越後から西へ進んで浅井朝倉連合を、伊庭は南へ進んで信濃川中島武田信玄を、それぞれ討ち破って京で再び会おうと約束し、進発した。伊庭率いる自衛隊は川中島で武田軍と正面から激突する。伊庭隊は、近代兵器による圧倒的な攻撃力で当初は戦を優位に進めるが、「空を飛ぶ鉄の船(ヘリコプター)」や「地を這う鉄の馬(戦車装甲車)」の情報を得ていた武田軍は、それに対処するための知恵と工夫による戦術を駆使して奮闘する。

結果的に現代兵器の力を過信した伊庭たちは数的に優勢な武田軍の捨て身の攻撃の前におびただしい犠牲を払うことになり、ヘリコプターは低空ホバリングの際に忍び込んできた武田勝頼によって清水・大西を殺害されて墜落、戦車は人海戦術で動きを封じられ、装甲車は落とし穴にはまって自走不能となるなど、兵器や弾薬の喪失とともに、伊庭たちは戦闘能力を失っていく。不利に傾きつつある戦況の中、一気に決着を付けるべく、伊庭は大将である信玄のみを狙うことを決意。馬を奪い、乗馬しながら弓と矢を得て、武田忍軍をかわし、信玄がいる本陣へ単騎斬り込む。信玄と一騎討ちとなり、形勢不利となりながらも拳銃で射殺。信玄の首級を挙げ、切りかかって来た勝頼も討ち取った。

この戦いで伊庭たちは辛くも勝利を収めたものの、車輌全てとヘリコプターを失い、隊員も多くが戦死するなど犠牲も大きく、近代兵器は小銃拳銃のみしか残っていなかった。生き残った隊員たちは、戦国時代の過酷さを目の当たりにして心身ともに疲れ果て、昭和へ帰りたいと強く願うようになり、「補給地へ戻り、再びタイムスリップするのを待とう」と伊庭へ進言。しかし、伊庭にとっては、もはや戦国の世で天下を取ることこそが生きる目的となっており、これを認めようとしない。

先行して京へ入っていた景虎は京都御所に呼び出され、足利義昭本願寺光佐九条義隆らから、「正体不明の伊庭を天下人と認めるわけにはいかない。そのような者と手を組む景虎も朝敵とみなす」と弾劾される。伊庭たちが近代兵器を喪失し、わずかな兵力で荒れ寺へたどり着いたことを知った3人は「もはや伊庭恐れるに足りず」と、伊庭らの抹殺を細川藤孝に命令する。伊庭への友情と当世の掟の狭間で揺れる景虎だったが、その動きに待ったをかけ、自ら出陣を決意する。

景虎は苦衷の中にも決意を秘めた表情で、伊庭たちが駐留している荒れ寺へ向かう。心強い味方の到着に伊庭は笑顔を見せるが、彼から贈られたカービン銃を手にした景虎の雰囲気を察すると、天下取りを宣言して抜刀する。対峙たいじする2人だったが、刀を構えてにじり寄った伊庭は、景虎に射殺されてしまう。生き残った隊員たちも、景虎の兵らが放つ矢の雨の中で次々と倒れていった。また三村は隊に付いてきた娘に拳銃を託し、自らを射殺させる。

伊庭ら戦国自衛隊員は、景虎によって丁重に弔われる。そして、火を放たれた荒れ寺は燃え盛る炎に包まれていくのだった。

出演

キャスト

騎馬武者

※はジャパンアクションクラブ (JAC)


注釈

  1. ^ アクション監督を兼務。
  2. ^ 西日本空輸所属のヘリコプターパイロット。10,700時間以上の飛行経験を持ち、当時の日本では加納を含めて5人しかいなかった。その自由自在な操縦技術で城郭や馬にギリギリまで近づくなど、リアルさと迫力を反映させることとなり、千葉真一斎藤光正らスタッフ一同を感嘆させた[1][3]。加納は本作公開から約2年後の1981年8月11日、鹿児島県種子島沖の海上で墜落事故に遭い、搭乗していた同僚と共に亡くなった[4]
  3. ^ 当時のカメラは今と比べると、はるかに大きく重かった。
  4. ^ ロケーション撮影丸岡城で行われた。
  5. ^ サウンドトラックは、主題歌が7曲もある豪華なものとなった[5]
  6. ^ 戦国時代とはいえ、自衛隊員が無許可で離隊すること、民衆を襲う、隊員同士が戦闘する内容に否定的な自衛隊は、前年の角川映画『野性の証明』に防衛庁が協力しなかったのと同様に、本作への支援を一部に止めた。
  7. ^ a b 本作における夏八木勲は、芸名を夏木勲として出演している。
  8. ^ 配給収入は宣伝費を含めた製作費に近い金額となった[22]1980年度邦画配給収入第5位[23]
  9. ^ 作中では複数台が登場するが、これはCGによる合成処理である。

出典

  1. ^ a b c d e f g 「日本映画レトロスペクティブ 第3回 千葉真一」『日本映画専門チャンネル』 2011年11月3日23:00 - 、4日14:00 - 、23日14:00 - 、29日21:00 - 、30日14:00 - 、12月16日18:30 - 、30日14:00 -
  2. ^ 『キネマ旬報ベスト・テン85回全史 1924→2011』キネマ旬報社、2012年、390頁。ISBN 978-4-87376-755-0 
  3. ^ a b c d e f g h プロダクションノート、26 - 27頁。
  4. ^ 魔改造で戦車を自作!真田広之の危険すぎるスタント! 1979年『戦国自衛隊』は製作費11億超のお正月アクション大作!!”. BANGER!!! (2021年1月25日). 2022年11月30日閲覧。
  5. ^ a b c 『最後の角川春樹』、2021年11月発行、伊藤彰彦毎日新聞出版、P147
  6. ^ a b c 角川春樹 「製作意図」
  7. ^ a b c 「あとがき」
  8. ^ 「邦画新作情報」『キネマ旬報』1979年5月下旬号、キネマ旬報社、180頁。 
  9. ^ バラエティ』1979年12月号、角川書店、53頁。 
  10. ^ 高平哲郎JJサニーちば、真面目さと優しさに溢れ…」『ZAKZAK産経デジタル、2011年5月18日。2014年12月10日閲覧。オリジナルの2014年12月10日時点におけるアーカイブ。
  11. ^ a b 脇田巧彦「アクションに賭ける男・千葉真一」、21頁。
  12. ^ a b c 千葉真一『千葉真一 改め 和千永倫道』山と渓谷社、2008年、73 - 74頁。ISBN 4635340228 
  13. ^ 戦国自衛隊大全、110頁
  14. ^ 戦国自衛隊大全、113頁
  15. ^ 「原作『戦国自衛隊』について」戦国自衛隊大全、21頁
  16. ^ 戦国自衛隊大全、37頁
  17. ^ a b c d e f g h i j k 山崎伸子 (2022年11月1日). “43年目の『戦国自衛隊』撮影秘話!江藤潤が明かす、千葉真一や渡瀬恒彦との“合宿生活””. MOVIE WALKER PRESS. 映画ニュース・読みもの. ムビチケ. 2022年11月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年12月6日閲覧。
  18. ^ 戦国自衛隊大全、88頁、107頁
  19. ^ a b c 俳優・江藤潤が明かす「肉体鍛錬の裏話」”. 現代ビジネス. ほとばしる熱気と殺気…!俳優・夏八木勲の野性は、いかにして生まれたのか. 講談社. p. 4 (2022年11月22日). 2022年12月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年12月6日閲覧。
  20. ^ 戦国自衛隊 - ぴあ
  21. ^ a b c キネマ旬報』 2000年10月下旬号、角川春樹インタビュー
  22. ^ a b c d 「角川春樹氏特別インタビュー 「戦国」から「大和」へ!!」『ビッグマンスペシャル 戦国自衛隊パーフェクトBOOK』、世界文化社、2005年、12 - 15頁、ISBN 4-418-05120-1 
  23. ^ 1980年配給収入10億円以上番組 - 日本映画製作者連盟
  24. ^ 戦国自衛隊大全、105頁
  25. ^ 千葉真一60周年祝賀会に俳優家族4人初勢ぞろい!」『iza』、2019年11月8日。2021年9月16日閲覧。
  26. ^ 夏八木勲「親友・千葉真一が明かした骨太“名脇役人生”」”. アサ芸プラス. 徳間書店 (2013年5月29日). 2021年9月16日閲覧。
  27. ^ 千葉真一さん死の直前まで温めていた本格時代劇復活と新「戦国自衛隊」構想」『日刊スポーツ』、2021年8月21日。2021年9月16日閲覧。
  28. ^ 速水亮 (2015年12月24日). “楽しかった想い出が甦る”. 速水亮アクターズ日記. その他舞台、演劇. Yahoo! JAPAN. 2016年3月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年4月21日閲覧。
  29. ^ 斎藤雅道 (2019年12月13日). “「角川61式戦車」どこへ? 宮沢りえ『ぼくらの七日間戦争』で搭乗 元『戦国自衛隊』2.「角川61式」2019年現在のありかは…?”. 乗りものニュース. https://trafficnews.jp/post/92071/2 
  30. ^ 『99年の愛~JAPANESE AMERICANS』今夜放送!”. ロケ応援団 フィルムコミッション富士blog (2011年12月26日). 2021年9月19日閲覧。
  31. ^ 「真実の〝二十六夜参り〟」”. 別冊戦争映画観戦記 (2011年1月24日). 2021年9月19日閲覧。
  32. ^ 水溜りボンド「本物の戦車でドライブスルー行ってみたwww」 - YouTube ※2021年9月19日閲覧
  33. ^ 佐伯邦昭 (2002年9月23日). “2002年の状況”. ヒコーキ雲. 中日本航空専門学校の展示機その他. インターネット航空雑誌ヒコーキ雲. 2016年5月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年4月21日閲覧。
  34. ^ 新田真剣佑、主演作のヒット祈願で大吉引き当てる「最高」”. 映画.com. 映画ニュース. エイガ・ドット・コム (2021年2月11日). 2021年2月11日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年9月21日閲覧。
  35. ^ 轟夕起夫「日本一多作な男が日本一寡作な男の半生に迫る! 長谷川和彦vs三池崇史」『轟夕起夫の映画あばれ火祭り』河出書房新社、2002年、237頁。ISBN 4-309-26533-2 
  36. ^ スクープ! 今井雅之さん、幻の「戦国自衛隊」遺していた 20年前に続編の脚本執筆 (1/2ページ)」『ZAKZAK』産経デジタル、2015年7月16日、1面。2015年7月18日閲覧。オリジナルの2015年7月18日時点におけるアーカイブ。


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