スペインの言語 非音声言語、手話

スペインの言語

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/09/04 14:30 UTC 版)

非音声言語、手話

非土着語・外来言語

移民によってもたらされた言語

1990年代以降スペインに外国からの移民の大きな波が押し寄せ、いくつかの自治州においては外来言語話者の増加が目立ってきている。スペイン国立統計局の2006年の調査によれば、総人口の9.68%が外国籍で、そのうちの34.5%が中南米の旧植民地諸国からのもので、スペインの移民の言語ではカスティーリャ語が最も高い割合となっている。

カスティーリャ語に次いで多い移民の言語は以下である:[20]

第二言語としての学習外国語

現在外国語としてまず学ばれているのは英語である。次にフランス語で、そしてドイツ語イタリア語と続く。1970年代まではフランス語が最も学ばれていたが、その後英語にその地位を譲った。8歳から多くの学校で、英語が必修科目として教えられているし、中学校(12-16歳)や高校(16-18歳)などでは選択科目としてフランス語を学ぶこともできる。

しかしながら、これらの言語をかなりのレベルで習得した人の割合は高くないのが現状である。2005年に行われた調査によると、英語での十分なレベルでの会話能力を有するスペイン人は27%に過ぎず、フランス語では12%であるとの結果が出た[2]

また、同調査によると、スペイン人の56%が自身の母語のみでしか会話ができないという結果(EU平均では44%)が出ており、残りの44%が母語以外の言語の会話能力を有し、母語以外に2言語以上の会話能力を有する者は17%であるという結果が出た。この母語以外の言語の会話能力のデータには、母語としてカスティーリャ語を母語とするものがガリシア語あるいはカタルーニャ語での会話能力を有する場合、あるいはその逆の場合なども含まれることに注意が必要である。

消滅した言語

現在のスペイン国家の領域において過去に話されていたが、現在死語となった言語。

古代に話されていた言語

ローマ化以前の言語で現在も引き続き話されていると考えられている言語は、唯一バスク語で、この地にラテン語がもたらされて、以下の言語が消滅した:

紀元前300年以前にイベリア半島で話されていた言語
  • ケルティベリア語(celtíbero)-インド・ヨーロッパ語族ケルト語派. ケルティベリア語と関連付けられる言語、あるいは変種(方言)は、イベリア半島の中央部や、北部、西部で話されていたと考えられるが、物証が少なくはっきりしたことはわかっていない。
  • ルシタニア語(lusitano)-インド・ヨーロッパ語族の言語と考えられるが、系統関係については議論がある。現在最も支持されている説はケルト語系の言語であるが、ケルティベリア語とは異なるグループに属するというものである。ルシタニア人(lusitanos、ルシタニ人)は他のケルト系部族より早くからイベリア半島に定住していたため、他のケルト系言語より早くに分岐したとされる。ルシタニア人の近隣の部族ウェットーネース族(vetones)もインドヨーロッパ系の言語を話していたと考えられ、ルシタニア人とも関係があったとされる。
  • タルテソス語スペイン語版(tartésico)は、アンダルシーア地方西部にローマ以前に話されていた言語であるが、この言語の系統は不明であまりよくわかっていない。
  • アクィタニア語スペイン語版(aquitano)、この言語についても系統などはっきりしたことはわかっていないが、現代のバスク語はこの言語の末裔ではないかと考えられている。
  • イベリア語(ibero)、この言語についても系統は不明であるが、アクィタニア語との関係が取りざたされている(バスク=イベリア語説、vascoiberismo)。イベリア語はイベリア半島の東部で話されていた。
  • フェニキア語セム語派の言語で、アイヴィーサ島ローマ化以前の言語で、フェニキアの植民地建設以降紀元前8世紀ごろまで話されていた。その後フェニキア語は紀元前3世紀ごろスペインに定住したカルタゴ人によって話された。
  • 古代ギリシャ語諸方言スペイン語版古典ギリシア語と親縁関係のある諸方言で、イベリア半島の地中海岸域の様々なギリシャの植民地で話されていた。
  • ラテン語印欧語族イタリック語派に属する言語で、ローマ人が紀元前218年に最初にイベリア半島に定住し、徐々に半島を征服し、紀元前17年最後の先住民を征服した。そのローマ人たちの言語がラテン語で、原住民社会のローマ化を通じてイベリア半島全体に広がっていった。そして新たなラテン語住民が誕生していった。ローマ帝政末期には、アクィタニア(es:Idioma aquitano参照)の一部などのローマの権力のおよばない中心地から離れたわずかな地域を除いて、すべての先住民言語はラテン語に置き換わった。アクイタニア語の後裔と考えられるバスク語を除き、現在スペインで話されている言語のすべてはラテン語、より正確には口語ラテン語(俗ラテン語)から派生したものである。ラテン語は現在でも学校教育の場などで学ばれている。また、数多くの碑文が残されており、教会での礼拝などでも使われている。

中世に話されていた言語

中世には、後に領域内の多数派言語に同化された結果消滅したいくつかの言語が話されていた:

  • ゴート語ゲルマン民族のひとつ西ゴート族によって話されていたゲルマン語の一つ。イベリア半島で話されていたロマンス語に同化され、消滅した。
  • モサラベ語はイスラム教徒支配下のアル=アンダルスで、日常的に話されていたロマンス語。とくに語彙(借用語)の面でアラビア語から非常に大きな影響を受けたロマンス語の総称。キリスト教徒によるレコンキスタによってイスラム教徒支配地域の縮小とキリスト教徒諸王国による再移住策によって、キリスト教徒王国で話されていたロマンス語に同化されていった。
  • アル=アンダルス・アラビア語(árabe andalusí)は中世においてイスラム教徒支配地域アル=アンダルスで話されていたアラビア語の変種。9世紀から17世紀にかけて話された。グラナダ王国の征服でレコンキスタが完了、そしてその後のモリスコ追放によって、その話者の多くを失い、消滅していった。
  • グアンチェ語(guanche)は、スペインによるカナリアス諸島征服以前に何世紀もの間、カナリアス諸島のそれぞれの島で話されていた、様々なベルベル語を起源とする言語の総称である。
  • ナバーラ・アラゴン語スペイン語版(navarroaragonés)-ロマンス語の一つで、この言語からナバーラ語(ナバーラ方言、romance navarro)や現在のアラゴン語が派生した。

近代に話されていた言語

  • タバルカ語(tabarquino)は18世紀からおそらく19世紀初頭までアラカントから20km余り離れた地中海上にあるタバルカ島スペイン語版で話されていたリグリア語の変種。現在の住民の中にはルーツであるジェノバのものに由来する姓を持つ者もいる。一方イタリアのサルデーニャの南西部のカルロフォルテIsla de San Pietro)とカラゼッタにはタバルカ語を話す人々が今も存在する。

注釈

  1. ^ a b スペインでは母語(lengua materna)の定義が、日本でのものと若干異なる。スペインでは最初に自然に獲得した言語を言い、その後の環境等により必ずしも日常使用言語とならない場合もあり、第一言語でない場合も少なくない。日本での母語とは同じではないので注意が必要。ここでは最初に獲得した言語を意味している。
  2. ^ a b c d e f 州公用語を持つ自治州名と公用語名については、該当語に即した表記でも語形の差異があまりなく理解が容易であると思われるものは該当語に即したカナ表記を採用する。バレンシア(語)は該当語に即した表記(vとbを区別するため)のヴァレンシア(語)の表記を採用する。バレアレス諸島に関してもカタルーニャ語に即したカナ表記バラアース諸島を採用する。バスク(語)に関しては、該当語の現地語地名表記はEuskadi(エウスカディ)となり、日本語の言語名表記は地名+語とする慣習があるためエウスカディ(語)となると思われ、スペインでもこの語はスペイン語話者においても普通に使われるが、日本ではなじみがないため、従来通り、英語もしくはフランス語から入ったバスク(語)の表記を使う。ちなみにスペイン語に即した表記はバスコ(語)になる。ナバーラについてもNafarroa(ナファロア)という語はなじみがないため、スペイン語起源のナバーラを採用する。その他は該当語に即した表記も従来表記と変わらないのでそのままである。
  3. ^ カタルーニャ語に関してはガロ・ロマンス語に見られる特徴もあるため、ガロ・ロマンス語に分類する研究者も存在する。また、近縁の言語であるオクシタン語とともに、新たなグループを提唱する機関もある。
  4. ^ カスティーリャ語で使われる形:euskera、vasco、vascuenceなど様々な形式がある。
  5. ^ 4方言に分ける場合もある。アラゴン語の方言アラゴン語版参照。

出典

  1. ^ Datos de lengua materna: Cataluña (2008), Baleares (2003), Galicia (2003), País Vasco (2001), Navarra (2001) y Comunidad Valenciana (2007).
  2. ^ a b Europeans and their Languages - Special Eurobarometer; resumen en castellano: [1] 調査は欧州委員会によって2005年11月、12月に実施された。スペインでは1,025名のものが面接調査に臨んだ。面接者は同時に様々な選択肢を選んだため、合計の数字は必ずしも100%にならない。
  3. ^ Más 'speak spanish' que en España” (スペイン語). El País (2008年10月6日). 2012年5月17日閲覧。
  4. ^ L'Enquesta d'usos lingüístics de la població 2008” (カタルーニャ語). Generalitat de Catalunya, Institut d’Estadística de Catalunya. 2012年5月18日閲覧。
  5. ^ 出典: [2], [3], de la Consellería de Cultura, es:Generalidad Valenciana. Encuesta de junio del 2005 donde se pregunta a 6.666 personas "¿Qué lengua es la que utiliza en casa?".
  6. ^ Instituto Gallego de Estadística. Personas según la lengua en la que hablan habitualmente. Año 2003
  7. ^ Uso del euskera entre los mayores de 16 años por ámbito. Encuesta lingüística 2001 - Departamento de cultura del gobierno vasco
  8. ^ Instituto de Estadística de Navarra. Censo de población 2001
  9. ^ Cens lingüístic de l'aranès de 2001” (カタルーニャ語). Generalitat de Catalunya. 2012年5月17日閲覧。
  10. ^ Anteproyecto de la Ley de Lenguas de Aragón de 2001 Artículo 5.- Zonas de cooficialidad. a) Una zona de cooficialidad del aragonés, que incluye los municipios relacionados en el anexo I de la Ley, municipios que pueden ser declarados zonas de utilización predominante de su respectiva lengua o modalidad lingüística propia o zonas de utilización predominante del aragonés normalizado.
  11. ^ La Academia de la Lengua Aragonesa empieza a tomar cuerpo con la elección de sus miembros” (スペイン語). Heraldo de Aragón (2011年5月8日). 2012年5月25日閲覧。
  12. ^ LEY 10/2009, de 22 de diciembre, de uso, protección y promoción de las lenguas propias de Aragón, Boletín Oficial de Aragón núm. 252” (スペイン語). Gobierno de Aragónde (2009年12月30日). 2012年5月25日閲覧。
  13. ^ LEY 3/1999, de 10 de marzo, del Patrimonio Cultural Aragonés, Boletín Oficial de Aragón núm. 36” (スペイン語). Gobierno de Aragónde (1999年3月29日). 2012年5月25日閲覧。
  14. ^ Lei n.º 7/99 de 29 de Enero de 1999、Diário da República” (ポルトガル語). Governo da República Portuguesa (1999年1月29日). 2012年5月26日閲覧。
  15. ^ Llera Ramo, Francisco José (2003). II Estudio sociolingüístico de Asturias, 2002. Oviedo: Academia de la Llingua Asturiana. ISBN 84-8168-360-4 
  16. ^ Encuesta de usos lingüísticos en las comarcas orientales de Aragón. Año 2003. Gobierno de Aragón - Instituto Aragonés de Estadística
  17. ^ Estadística de usos lingüísticos en la Franja de Aragón. Año 2004. Archived 2009年9月20日, at the Wayback Machine. Generalidad de Cataluña
  18. ^ Instituto Nacional de Estadística de España - Relación de unidades poblacionales
  19. ^ Manuel J. Sánchez Fernández: Apuntes para la descripción del español hablado en Olivenza, Revista de Extremadura, 23, 1997, pág. 110
  20. ^ 出典: Instituto Nacional de Estadística. Revisión del Padrón municipal 2006. Revisión del Padrón municipal 2006. Datos a nivel nacional, comunidad autónoma y provincia, Nacional Población extranjera por sexo, país de nacionalidad y edad (hasta 85 y más).





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