サクランボ サクランボの概要

サクランボ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/14 14:44 UTC 版)

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サクランボ(桜桃)

概要

木を桜桃、果実をサクランボと呼び分ける場合もある。生産者は桜桃と呼ぶことが多く、商品化され店頭に並んだものはサクランボと呼ばれる。サクランボは、の実という意味の「桜の坊」の「の」が撥音便となり、語末が短母音化したと考えられている。

花を鑑賞する品種のサクラでは、実は大きくならない。果樹であるミザクラには東洋系とヨーロッパ系とがあり、日本で栽培される大半はヨーロッパ系である。品種数は非常に多く1,000種を超えるとされている。

果実は丸みを帯びた赤い実が多く、中に種子が1つある核果類に分類される。品種によって黄白色や葡萄巨峰のように赤黒い色で紫がかったものもある。生食用にされるのは甘果桜桃の果実であり、日本で食されるサクランボもこれに属する。その他調理用には酸味が強い酸果桜桃の果実が使われる。

殆どの甘果桜桃は自家不和合性があり、他家受粉が必要である。受粉には最低限自家不和合性遺伝子型(S遺伝子型)が異なる必要があり、異なる品種なら何でも良いというわけではない。極僅かだが自家結実する品種もある。一方、酸果桜桃は全ての品種に自家和合性が有る。

歴史

サクランボは有史以前から食べられていた。セイヨウミザクラ(甘果桜桃、Prunus avium)はイラン北部からヨーロッパ西部にかけて自生していた。また別の種であるスミミザクラ(酸果桜桃、Prunus cerasus)の原産地はアジア西部のトルコ辺りである。

原産地の推定は、1世紀古代ローマの博物学者プリニウスが著書博物誌に書いた説明に基づく[1]。これによると、古代ローマの執政官ルクッルス第三次ミトリダテス戦争黒海南岸のケラソス(Kerasos、現在のトルコギレスン (Giresun)近くに駐屯した際、サクランボの木を見つけ、ローマに持ち帰ったという。サクランボの木が属するサクラ亜属の学名Cerasusは、ケラソスのラテン語表記である。なお、逆にサクランボにちなんで町の名が付けられた可能性もある[2]

ただし、イギリスで青銅器時代のサクランボの種が発掘されていることから[3]19世紀のスイスの植物学者アルフォンス・ド・カンドル (enは、ルクッルスがコーカサスから持ち帰ったのは、セイヨウミザクラの一栽培品種だったとの仮説を述べている[4]

この二品種は黒海沿岸からヨーロッパ諸国へ伝わり、特にイギリスフランスドイツで普及した。名称がノルマン人によってシェリーズ (cherise) となり、イングランドに渡ってシェリー (chery) となり、英語のcherryになったといわれている[2]16世紀ごろから本格的に栽培されるようになり、17世紀にはアメリカ大陸に伝えられた。

一方、中国には昔から華北華中を中心に、カラミザクラ(シナノミザクラ、支那桜桃、 Prunus pseudocerasus)がある。口に含んで食べることから一名を含桃といい[5]の時代に編纂された礼記『月令』の仲夏(旧暦5月)の条に「是月也,天子乃以雛嘗黍,羞以含桃,先薦寢廟」[6]との記述がある。江戸時代から日本に伝えられ、西日本でわずかに栽培されている[7]。これは、材が家具、彫刻などに使われる。暖地桜桃とも呼ばれる。「桜桃」という名称は中国から伝えられたものである。

セイヨウミザクラが日本に伝えられたのは明治初期で、ドイツ人のガルトネルによって北海道に植えられたのが始まりだとされる[7]。その後、北海道や山形県を初めとする東北地方に広がり、各地で改良が重ねられた。

品種

高砂
佐藤錦
ナポレオン
ダイアナブライト

早生種

高砂(たかさご)
アメリカ原産。収穫時期は6月中旬。元名はロックポートピカロー。受粉樹として栽培される。
ジャボレー
フランス原産。酸味が強く糖度が低い。ジャム、果実酒等の加工用。
紅さやか
山形県園芸試験場において昭和54年に佐藤錦とセネカ(1924年にニューヨーク州立農業試験場で育成された品種)の交雑により育成した品種。平成3年に品種登録された。ジャムやワイン等の加工用にも用いられる。
香夏錦
「佐藤錦」と「高砂」交配種。
正光錦(せいこうにしき)
福島県伊達市の佐藤正光氏が「香夏錦(こうかにしき)」の自然交雑実生を発見して育成した。品種登録されたのは1987年(昭和63年)。登録は株式会社福島天香園によって行われている。
日の出
甲斐ルビー
山梨県のオリジナル品種で、「紅てまり」と極早生品種の「豊錦」を掛け合わせ生まれた。2015年に品種登録されたばかりの新しい極早生の品種[8]

中生種

佐藤錦(さとうにしき)
国内で最も多く生産されている品種。1912年大正元年)から16年かけ、ナポレオンと黄玉を交配してできた。名前は交配育成した山形県東根市の佐藤栄助に因んで1928年昭和3年)に命名された。
北光(水門)
明治時代に北海道小樽市の農園で偶発実生として発見された。当初は農園主の名前から「藤野」と名付けられたが、のちに「北光」と命名された。
夕紅錦

晩生種

ナポレオン
ヨーロッパ各国で栽培されている品種。名前はナポレオン・ボナパルトに由来し、彼の死後にベルギー王が命名したという。収穫時期は6月下旬。佐藤錦の受粉木として一緒に栽培されることが多い。完熟した果実は通好みとされ、非常に美味しい。海外ではロイヤル・アンの名称で呼ばれる。
紅秀峰(べにしゅうほう)
収穫時期は7月上旬。果実は大きく糖度は高く、豊産性で非常に優秀な品種。佐藤錦を種子親、天香錦を花粉親にして交配しており、1991年に品種登録された[9]
紅ゆたか
山形県園芸試験場において、1980年にビックと佐藤錦の交雑によって育成した品種。2000年に品種登録された。果実は極めて大きく、硬く、日持ちが良い。糖度は20度以上で甘く、果汁も多い。
天香錦
1960年に発見された偶発実生から育成された品種。果実の日持ちが非常に良く、果肉は硬い。1965年に命名[10]
紅てまり
南陽
収穫時期は7月上旬。(北海道は中旬以降)ハート形の断面の大型の果実で食味も優れる。他品種との開花が揃い、受粉環境の向く北海道で多く生産される。
大将錦
月山錦(がっさんにしき)
収穫時期は6月中旬から7月下旬。元々は中国大連で育成され、日本に持ち込まれた品種。色は黄色でとても甘いが、栽培が難しく、市場への流通はきわめて少ない[11]

  1. ^ プリニウス 博物誌 Book XV Section XXX.
  2. ^ a b 21世紀研究会編著 『食の世界地図』 文藝春秋文春新書〉、2004年、141頁。ISBN 4-16-660378-7 
  3. ^ Huxley, A., ed. (1992). New RHS Dictionary of Gardening. Macmillan ISBN 0-333-47494-5.
  4. ^ Candolle, A. de (1882). Origine des plantes cultivées. Geneva.
  5. ^ 加納喜光, 鈴木千春、「埤雅の研究・其十 釈木篇(2)」 『茨城大学人文学部紀要』 人文コミュニケーション学科論集 Vol.1 p.178-194, hdl:10109/427
  6. ^ 中國哲學書電子化計劃 月令
  7. ^ a b サクランボ -- 梅雨の季節の爽やかな味わい (PDF)”. 筑波大学学生部. p. 11 (2006年). 2012年6月28日時点のオリジナル[リンク切れ]よりアーカイブ。2008年8月16日閲覧。
  8. ^ サクランボ”. JA南アルプス市. 2020年7月30日閲覧。
  9. ^ “<平成-令和・次代へつなぐ>赤い宝石 より進化”. 河北新報オンラインニュース / ONLINE NEWS. (2019年5月5日). https://sp.kahoku.co.jp/tohokunews/201905/20190505_53029.html 2019年8月6日閲覧。 
  10. ^ デジタル大辞泉プラス. “天香錦”. コトバンク. 株式会社DIGITALIO. 2021年1月3日閲覧。
  11. ^ 黄色いさくらんぼの品種、月山錦(がっさんにしき) - 旬の食材百科HP
  12. ^ Asociacion de Exportadores de Chile A.G.[リンク切れ] World Sweet Cherry Review 2006 Edition (PDF 898K)
  13. ^ 太宰が生きたまち・三鷹三鷹市 2020年2月1日閲覧 (参考文献:桂英澄)


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