インドの文化 食文化

インドの文化

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/18 06:20 UTC 版)

食文化

さまざまなインド料理

インド料理は、フランス料理イタリア料理中国料理日本料理などと並ぶ世界的な料理スタイルの一つである。特徴の一つは、様々な香辛料(スパイス)を多用することであるが、インド亜大陸は広大であり、地域・民族・宗教・階層などによって多くのバリエーションがある。インドでは地方によって使う食用油が異なり、東は菜種、西は落花生、南はココナッツ、北は菜種ゴマをよく使う[4]

インド系移民と在外インド人の活動の結果として、インド料理は世界各地に定着している。特にイギリスや旧イギリス領のマレーシアシンガポールフィジーペルシア湾岸、ケニア南アフリカトリニダード・トバゴガイアナなどではインド料理が地元の食文化に溶け込んでいる。チキンティッカマサラはイギリス生まれのインド料理で、イギリスの国民食の一つと呼ばれている。ゴア料理はポルトガルとその植民地に伝播し、マカオ料理などに影響を与えた。また、カレー粉の普及により世界各地にカレー料理が生まれている。インドを発祥とするムルタバは、貿易を通して東南アジアに伝わり、現在では同地域やアラビア半島で食べられている。日本ではチャンドラボースやイギリス海軍の影響になどにより、日本の学校給食でカレーが取り入れられるなど、ラーメンと並びカレーライスが国民食となっている。全国各地ではその土地ならではの味付けや食材、コンセプトを用いた「ご当地カレー」も登場しており、日本独自の食文化となりつつある。

哲学

インドにおいて発達した哲学思想は、法(धर्म ダルマ)・利(अर्थ アルタ)・愛(काम カーマ)の3つ、あるいはこれらに解脱(मोक्ष モークシャ)を加えた4つを主題として展開してきた。法は主に『ヴェーダ』に述べられる祭式とそれにまつわるバラモンなどの4つのヴァルナの正しい生き方に関わり、利はおもにクシャトリヤの国王を中心とした国家の正しい運営方法あるいはあり方に関わり、愛は格好よさ・夫婦の生活・性交・遊女など広く男女の間柄についてのあり方に関わっている。また解脱とその前提となる輪廻(संसार サンサーラ)は、人間の死後のあり方に関わっており、インドにおけるほとんど全ての宗教思想や哲学と密接な関係にある。

文学

ヒンドゥー神話を題材にした叙事詩ラーマーヤナ』の一局面を描いたグプタ朝時代の石刻

インド文学は、現在のインドを中心とする地域の文芸、およびそれらの作品や作家を研究する学問を指す。古典期のサンスクリット語や、現在もっとも話者が多いヒンディー語ドラヴィダ文化に属しサンスクリットと異なる独自の古典文芸を持つタミル語など多数の言語により作品が生み出されている。広義には、『ヴェーダ』や、ヒンドゥー教の聖典であるプラーナ文献、古代の法典であるダルマ・シャーストラ仏教パーリ語経典などの文献も含まれる。

20世紀に入ると、小説は、ムンシー・プレームチャンドによってリアリズムが広まった。プレームチャンドはウルドゥー語とヒンディー語で創作し、社会への問題意識を表現した。ベンガル語の詩人ラビンドラナート・タゴールは、詩集『ギーターンジャリ』を自ら英訳して好評を博し、1913年にアジア人として初のノーベル賞となるノーベル文学賞を受賞した。1930年にはプレームチャンドによって文芸誌『ハンス』( Hans )が創刊され、1936年には進歩主義作家協会が設立されてプレームチャンドが第一回大会の議長となる。1930年代以降は民衆を取りあげる作品が増え、貧困伝統との関係なども題材となった。1947年にインドは独立を果たすが、インド・パキスタン分離独立による動乱は作家にも大きな影響を与え、これを描いた作品は動乱文学とも呼ばれている。クリシャン・チャンダルの『ペシャワール急行』や、ビーシュム・サーヘニーの『タマス』、クリシュナ・バルデーオ・ヴァイドの『過ぎ去りし日々』など多数ある。

その他の作家として、サタジット・レイによる映画化が有名なビブティブション・ボンドパッダエ、ベンガル語の短編小説の名手タラションコル・ボンドパッダエ、社会の過酷さと複雑さをユーモアを混じえて描くヒンディー語作家のウダイ・プラカーシらがいる。イギリス領時代からの影響により英語で著述活動を行う作家も多く、架空の街マルグディを舞台とした小説を書き続けたR・K・ナーラーヤン (R. K. Narayan、『首都デリー』で重層的な歴史小説を書いたクシュワント・シン、サーヒトヤ・アカデミー賞 (Sahitya Akademi Awardを受賞したアミタヴ・ゴーシュ、女性最年少でブッカー賞を受賞したキラン・デサイなどがいる。


  1. ^ John Keay (2012). India: A History (第2版 ed.). Grove Press 
  2. ^ 「Classification of religions」『ブリタニカ国際大百科事典』”. 2021年5月30日閲覧。
  3. ^ India has 79.8% Hindus, 14.2% Muslims, says 2011 census data on religion-India News , Firstpost” (英語). Firstpost (2015年8月26日). 2022年5月8日閲覧。
  4. ^ サプリにもなる?インドのスパイス事情”. National Geographic. 2020年8月31日閲覧。





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