長人とは? わかりやすく解説

なが‐ひと【長人】

読み方:ながひと

長生きする人。

「汝(な)こそは世の—」〈記・下・歌謡


長人

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/01 01:47 UTC 版)

『訓蒙図彙』(1666年日本)より「長人」

長人(ちょうじん)は中国に伝わる伝説上の人種である。大人(たいじん)とも称され、東方あるいは海にある島に住んでいるとされる。

概説

類書である王圻『三才図会』では、長人国は海にある島に住んでおり、長人は人間の姿をしているが、非常に大きな体格をしており、身長は3、4(約9 - 12メートル)もあるという巨人である。移動はとても素早く、嵐に遭遇して長人国に漂着した人物の目撃したところによると、飛ぶかのように移動していたという[1]。日本の『和漢三才図会』や奈良絵本『異国物語』などでも、その呼称と解説とが使われている。

日本では、「せいたか」あるいは「せたか」という呼称がつけられている場合がある。『頭書増補訓蒙図彙大成』(1789年)では、長人国(ちょうじんごく)という表示に対して「せたかじま」という日本語を併記している[2]

古代中国の地理書『山海経』の海外東経によると、大人国は君子国の南にあるという。

渤海人と長人

田中俊明李成市古畑徹によると、八世紀唐朝の記録には、新羅人が新羅の東北境の住民である渤海人のことを、黒毛で身を覆い、人を食らう長人、ととらえていたことをうかがわせる記述があり、この異人視は、渤海・新羅両国の没交渉からくる恐怖感であり、それだけの異域であったことの証左であり、新羅の辺境であり、渤海の辺境地帯でもある地域住民に対して、これだけの異域観がみられることは、渤海・新羅両国の乖離した意識は明確であり、渤海・新羅の同族意識はうかがいようもないと、指摘している[3]。長人記事とは、『新唐書』巻二二〇・東夷伝・新羅、『太平広記』巻四八一・新羅条の以下の記事である[4]

新羅、弁韓苗裔也。居漢樂浪地、橫千里、縱三千里、東拒長人、東南日本、西百濟、南瀕海、北高麗。(中略)長人者、人類長三丈、鋸牙鉤爪、黑毛覆身、不火食、噬禽獸、或搏人以食、得婦人、以治衣服。其國連山數十里、有峽、固以鐵闔、號關門、新羅常屯弩士數千守之。 〈新羅(中略)東は長人を拒つ。(中略)長人なる者は、人の類にして長三丈、鋸牙鉤爪、黒毛もて身を覆う。火食せず、禽獣を噬う。或いは人を搏え以て食らう。婦人を得て、以て衣服を治めしむ。其の国、連山数十里、峡あり。固むるに鉄闔を以てし、関門と号す。新羅、常に弩士数千を屯し之を守る[5]。〉 — 『新唐書』巻二二〇・東夷伝・新羅
新羅國,東南與日本鄰,東與長人國接。長人身三丈,鋸牙鉤爪,不火食,逐禽獸而食之,時亦食人。裸其軀,黑毛覆之。其境限以連山數千里,中有山峽,固以鐵門,謂之鐵關。常使弓弩數千守之,由是不過。 〈新羅国(中略)東(北)は長人国と接す。長人の身は三丈、鋸牙鉤爪、火食せず。禽獣を逐いて之を食らう、時に亦た人を食らう。其の軀を裸にし、黒毛もて之を覆う。其(新羅)の境限は連山数千(十)里を以てす。中ごろ山峡有り、固むるに鉄門を以てし、之を鉄関(鉄闔)と謂う。常に弓弩数千をして之を守らしむ、是に由りて過ぎず[6]。〉 — 『太平広記』巻四八一・新羅条

『紀聞』などでも新羅国は東に長人国と隣接しているとされ、長人の特徴も同様に記されている。

長人の登場する作品

鏡花縁
大人国が旅の途中に舞台として登場する。身長は普通の人間より高いが「大人」というのは実際は身長が大きいことではなく、徳が高いことを示す「大人」の意味があるとして設定されている。に乗って歩くこともできる。雲はそれぞれ個人の「徳」によって色が分かれており、五色のものが最も尊く黒色のものが最も下等だとされるが、僧侶や金持ちに黒色の雲に乗っている者もあれば見事な五色の雲に乗っている乞食もいる。そのため、高官などは色の悪いことを恥ずかしがって移動の時に足もとに布をかぶせたりしているという[7]
また、長人国も旅の途中に舞台として登場する。長人たちは身長が非常に高いひとびととして登場しており、足の甲の高さだけで主人公たちの背よりも高い[8]
奈蒔野馬乎人『啌多雁取帳』(1783年
喜多川歌麿の挿絵による黄表紙。主人公の金十郎がによってたどり着いた異国のひとつに大人国として巨大な人間たちの住む国が描かれる[9]
歌川国芳 朝比奈諸国廻り図(1829年
朝比奈三郎が出会ったとされるさまざまな異国人物が描かれている錦絵。大人国という表示の下に描かれている[10]

昭和3年(1928年)に金の星社が出版した『ガリバー旅行記』を抄訳した児童書『大人国小人国めぐり』[11]では、巨人の国の訳語として大人国が用いられている。

脚注

  1. ^ 王圻『三才図会』 「昔明州人泛海値風大不知舟所稍息乃在島下登岸伐薪忽一長人其行如飛」
  2. ^ 『頭書増補訓蒙図彙大成』巻4 1789年 28丁ウラ
  3. ^ 田中俊明「朝鮮地域史の形成」『世界歴史9』岩波講座1999年ISBN 978-4000108294 p156
  4. ^ 古畑徹「後期新羅・渤海の統合意識と境域観」『朝鮮史研究会論文集』第36巻、朝鮮史研究会、1988年1月、25-54, 308-306、CRID 1390858529774797696doi:10.24517/00000210hdl:2297/19011ISSN 0590-8302“著者本人による修正書き込みあり。本文PDF 後方ページに英文抄録あり”  p.49 より
  5. ^ 李成市『古代東アジアの民族と国家』岩波書店、1998年3月25日、381頁。ISBN 978-4000029032 
  6. ^ 李成市『古代東アジアの民族と国家』岩波書店、1998年3月25日、420頁。ISBN 978-4000029032 
  7. ^ 藤林広超訳 『鏡花縁』 講談社 1980年 110頁
  8. ^ 藤林広超訳 『鏡花縁』 講談社 1980年 157頁
  9. ^ 小池正胤等 編『江戸の戯作絵本』1 初期黄表紙集 社会思想社〈教養文庫〉 ISBN 9784390110372、271頁
  10. ^ 稲垣進一,悳俊彦 編著『国芳の狂画』東京書籍 ISBN 4-487-75272-8、68-69頁
  11. ^ 金の星社編集部 『大人国小人国めぐり』 金の星社 1928年

参考文献

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