道徳劇
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道徳劇(どうとくげき、英: morality Play)は、15世紀から16世紀、ヨーロッパ各地で演じられていた寓話的な演劇。
概要
道徳劇では、様々な悪徳や美徳などの道徳的属性が人格化される。それらが人間の魂の中で争いあう過程を描き、悪に染まった人生よりも、神を敬い徳の篤い人生を送るべきこと示唆していく。
中世ヨーロッパの演劇は、宗教の影響下から抜け出し世俗の芸術に移行していったが、道徳劇はこの過程を促す一助となった。とはいえ道徳劇は、宗教に基づいた道徳観を提示し、民衆に教化することが主眼だった。このことは、神秘劇についても言える。
作者の知られた中で最古の道徳劇として、1150年頃に作られたヒルデガルト・フォン・ビンゲンの『オルド・ヴィルトゥトゥム(諸徳目の秩序)』が知られる。
また、代表的な道徳劇であり、印刷され現存する最も古い道徳劇としては、オランダの『エッケルライ』(14世紀末頃執筆と推定)を翻訳した作品と考えられている『エヴリマン』がある。この劇中には、善行、友情、知識、美、死などの登場人物が現れ、万人に訪れる死と、神による救いをテーマに据えた筋書きを展開する。
他の代表的な道徳劇には、『忍耐の城』、『富と健康の教訓』などがある。
イギリスではエリザベス朝演劇にもその影響を見せている。1588年に上演されたクリストファー・マーロウの戯曲『ドクター・ファウスト』は、初期の道徳劇の作品が下敷きとなっている。
日本語訳
- 『イギリス道徳劇集』鳥居忠信、山田耕士、磯野守彦訳. リーベル出版 1991
- 堅忍の城.人間.現世と幼児.青年.嘲り屋ヒック.万人.
関連書籍
- 宮川朝子『イギリス中世演劇の変容 道徳劇・インタルード研究』英宝社 2004
関連項目
道徳劇
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詳細は「道徳劇」を参照 道徳劇は中世期およびテューダー朝期の舞台娯楽の一ジャンルである。その全盛期には、これらの劇は「中間劇」(道徳的なテーマを含む含まずに関わらず、劇作品に対して与えられた用語)として知られていた。 道徳劇は、主人公が様々な道徳的属性の擬人化したものと出会うアレゴリーの一類型である。作品中で、道徳的属性が擬人化した存在は主人公を信心深い生活または悪のひとつへと駆り立てようとする。ヨーロッパにおいては、道徳劇は15世紀から16世紀にかけて最も人気があった。宗教に基づく中世の神秘劇から生じたため、道徳劇はヨーロッパ演劇にとって、より世俗的な土台への転換を意味した。[訳語疑問点] 『エヴリマン(英語版)』は15世紀後期の道徳劇作品である。ジョン・バニヤンが1678年に第1部を発表したキリスト教的寓意物語『天路歴程』のように、『エヴリマン』は寓話的な登場人物を用いる事によって、キリスト教における救済(英語版)の問題を、そして救済へと到達するために人間がなさねばならぬ事を考察する。その前提となるものは、人間の人生における善悪が、元帳中の記述のように、死後に神によって勘定されるという事だ。劇はエヴリマンの生涯の寓話的会計である。エヴリマンは全人類を意味する。行動していくうちに、エヴリマンは彼に同行する他の登場人物を納得させようとする、彼自身の評価を向上させられるという希望を抱きながら。全ての登場人物もまた寓話的だ、ひとりひとりが、仲間意識、道具、そして知識といった抽象的な概念を擬人化したものである。善悪の葛藤は、登場人物間が相互に作用することにより劇的に表現される。
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