道徳哲学からの観点
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/15 02:19 UTC 版)
"Is Lookism Unjust"という論文で、Louis TietjeとSteven Cresapは、外見に基づいた差別がいつ法的に不正なものとなったのかについて論じている。TietjeとCresapは、「全労働者のうち外見的魅力が下位9%の者は7〜9%のペナルティを受け、上位33%は5%のプレミアムを得ている」ことを示す論拠を引用している。著者らは、こういった差別が実際に行われていることを示すエヴィデンスを受け入れる一方で、このような差別は人類の歴史を通して蔓延しており、美の評価は(文化的に条件づけられているというよりは)生殖、生存、社会的交流を支援するための生物学的適応らしいと論じている。つまり、美の評価を通じて、生存可能な配偶者かどうか(身体的魅力のレベルは健康の指標になる)、他者が「敵か味方か、脅威か機会か」を見極めることができるというのである。彼らは、もし身体的魅力が企業の成功可能性を向上させうるのであれば、それによって他者を評価するのは正当化できる、とも論じている。なぜなら、この場合身体的特徴は仕事と関係しているともいえるし、差別は職と関係のない身体的特徴が用いられた時にのみ起こるといえるからだ。さらに著者らは、ルッキズムに基づく差別を矯正することと、そのような不正が実際に起きているかどうかを評価すること、両方の実現性に疑問を呈している。彼らは、そのような差別を不正だとする明確なモデルはありえないし、差別を是正する立法も実現可能ではないだろうと結論づけている。「美に基づく差別を是正する政策介入が、いかにして正当化されるのか、私たちにはわからない。」 道徳哲学者であるジェームズ・レイチェルズ(英語版)は自身の論文で、身長による偏見を取り扱っている。彼の論文によれば、身長の高い人の方が身長の低い人より収入が高かったり、就職で採用されやすかったりするという研究結果を示した上で、これらの偏見は全く無意識のうちに影響を及ぼしうると述べている。また、同論文内で黒人差別や女性差別の是正のための優先制度(アファーマティブ・アクション)を身長に関しても適用できるかを次のように論じている。もし背の低い人を正当に扱うことを保障するような政策が実際に可能だとすれば反対する理由はないが、実際に可能かどうかがわからないため、その政策を擁護することができるかどうかもわからない。しかし「高身長主義」が社会問題となり、もし本当に背の低い人が不当な扱いを受け続けているならば、他の差別と同じように是正措置をとる十分な理由になるものと思われる。そして、今のところは「高身長主義」は社会問題ではなく、雇用やその他のことなどに割り当て(優先制度)を科すといった抜本的措置をとるのはおそらく賢明な策ではないだろう、と結論付けている。
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