発光材料
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/01 09:26 UTC 版)
「有機エレクトロルミネッセンス」の記事における「発光材料」の解説
有機EL素子材料にはさまざまな材料が試されてきた。それらは大きく高分子と低分子のどちらかに分けられる。ポリマー状の分子を用いたものが高分子材料であり、それ以外の分子を用いたものが低分子材料である。さらに発光層では蛍光材料と燐光材料に分けられる。低分子材料を用いた有機EL素子は、必然的に発光のために層構造が多層化し、少なくともホール輸送層・発光層・電子輸送層から構成される。この場合の多層構造は精密に厚みが制御された薄膜である必要があるため、一般に真空蒸着が必要となる。高分子材料を用いた有機EL素子は、輸送層や発光層などの精密な多層構造を必要とせず、各層の機能を兼ね備えた1種類の有機物を1層だけ用いる。このため、印刷などの方法が利用できる。 蛍光材料 前述一重項発光を利用した材料で、光の三原色となる赤・緑・青色ともコスト・寿命・耐久性・成膜性に充分な要件を持った材料がそろっている。 白色有機EL(英: White OLED: WOLED)は山形大学の城戸淳二の研究室によって1993年に発見された。有機ELの照明と大型ディスプレイパネルは白色有機ELによって実用化が可能になった。 燐光材料 前述の三重項発光を利用した材料であり、原理的に蛍光材料よりはるかに発光効率がよい。しかし燐光材料は寿命、電流増加時の効率低下(三重項-三重項消滅)、精製の困難さ、熱耐性など問題があったが、現在は赤や緑などの材料が実用化され普及している。 青色はまだ十分な特性を持つ材料が開発されておらず、実用化には至っていない。各社がこの青色燐光材料の開発競争を続けている状況である(2016年現在)。 低分子材料 低分子材料では主に真空蒸着を使用し、有機材料の薄膜化・積層化が可能なメリットを生かしてデバイスを作成している。高分子材料と比したとき、低分子材料の欠点として製造技術が挙げられる。デバイスにする際、薄膜製造(後述)には透明のガラス基板やプラスチック基板に蒸着させる方法が一般的である。しかし通常のシャドウマスクを用いた色分け成膜技術はシャドウマスクの精度、熱膨張の観点から大型化が困難である。現状の有機ELディスプレイが小型のものに限られるのはそのためである(2008年段階)。この問題を解決するために様々な手法が提案されている(「解像度」の項を参照)。印刷技術に対応するため可溶性を持たせた低分子材料も研究開発が行われている。 高分子材料 高分子材料はそれをインクとした印刷技術の応用により大量・安価・大型の有機ELデバイスが容易に生産できると言われ、次世代の材料として日本国内の大手印刷会社・化学企業・電気家電メーカー等で研究開発が続けられている。しかし高分子材料で有機EL素子を作成する場合、層間の材料同士が溶解しやすく有機ELに不可欠な後述のヘテロ構造を持たせることが非常に困難である。そのため単層ないし少数の層の素子構造しかできず、多くの機能(各層の機能)をこれら単数または少数の層や材料に持たせる必要がある。したがって高分子材料の分子設計への要求は低分子材料のそれに比べて非常に高い。
※この「発光材料」の解説は、「有機エレクトロルミネッセンス」の解説の一部です。
「発光材料」を含む「有機エレクトロルミネッセンス」の記事については、「有機エレクトロルミネッセンス」の概要を参照ください。
- 発光材料のページへのリンク