三重項-三重項消滅とは? わかりやすく解説

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三重項-三重項消滅

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/05 03:29 UTC 版)

三重項-三重項消滅(さんじゅうこうさんじゅうこうしょうめつ、: Triplet-triplet annihilation、略称: TTA)は、三重項状態にある2つの分子間のエネルギー移動機構である[1]デクスターエネルギー移動機構と関連している。三重項-三重項消滅が励起状態にある2分子間で起こったならば、1つ目の分子はその励起状態エネルギーを2つ目の分子に伝達し、その結果1つ目の分子は基底状態に戻り、2つ目の分子はより高い励起一重項三重項、または四重項状態へと昇位する[1]。三重項-三重項消滅は1960年代に始めて発見され、アントラセン誘導体における遅延型蛍光の観測結果を説明した[2][3][4][5]

フォトン・アップコンバージョン

三重項-三重項消滅を介したフォトン・アップコンバージョンを説明するヤブロンスキー図

三重項-三重項消滅は2つの三重項励起状態のエネルギーを1つの分子へ組み合わせてより高い励起状態を作り出すため、2個のフォトン(光子)のエネルギーをより高いエネルギーの1個のフォトンへと変換するために使われてきた。この過程はフォトン・アップコンバージョン英語版と呼ばれる[6][7]。三重項-三重項消滅を介してフォトン・アップコンバージョンを達成するため、2種類の分子、増感剤と発光体(消滅剤)がしばしば組み合わされる。増感剤は低エネルギーフォトンを吸収し、項間交差を通じてその第一励起三重項状態(T1)に移る。増感剤は次に励起エネルギーを発光体へと伝達し、その結果三重項励起発光体と基底状態増感剤がもたらされる。2つの三重項励起発光体は次に三重項-三重項消滅を経験し、発光体の一重項励起状態(S1)が占められたならば蛍光はアップコンバージョンされたフォトンをもたらす。

出典

  1. ^ a b Turro, Nicholas J., Ramamurthy, V., Scaiano, J.C. (2010). Modern Molecular Photochemistry of Organic Molecules. University Science Books. ISBN 978-1-891389-25-2 
  2. ^ Parker, C. A., Hatchard, C. G. (1962). “Delayed Fluorescence from Solutions of Anthracene and Phenanthrene”. Proc. R. Soc. A Math. Phys. Eng. Sci. 269 (1339): 147. doi:10.1098/rspa.1962.0197. 
  3. ^ Parker, C. A., Hatchard, C. G. (1962). “Sensitized Anti-Stokes Delayed Fluorescence”. Proc. Chem. Soc.: 386-387. doi:10.1039/PS9620000373. 
  4. ^ Parker, C. A. (1963). “Sensitized P-Type Delayed Fluorescence”. Proc. R. Soc. A Math. Phys. Eng. Sci. 276 (1364): 125-135. doi:10.1098/rspa.1963.0197. 
  5. ^ Parker, C. A., Joyce, T. A. (1967). “Delayed Fluorescence of Anthracene and Some Substituted Anthracenes”. Chem. Commun. 6 (15): 744–745. doi:10.1039/C19670000744. 
  6. ^ Singh-Rachford, T. N., Castellano, F. N. (2010). “Photon Upconversion Based on Sensitized Triplet-Triplet Annihilation”. Coord. Chem. Rev. 254 (21-22): 2560-2573. doi:10.1016/j.ccr.2010.01.003. 
  7. ^ Gray, V., Moth-Poulsen, K., Albinsson, B., Abrahamsson, M. (2018). “Towards Efficient Solid-State Triplet-Triplet Annihilation Based Photon Upconversion: Supramolecular, Macromolecular and Self-Assembled Systems”. Coord. Chem. Rev. 362: 54-71. doi:10.1016/j.ccr.2018.02.011. 



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