偽痛風とは? わかりやすく解説

偽痛風

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/08/04 17:16 UTC 版)

偽痛風
概要
診療科 リウマチ学
分類および外部参照情報
ICD-10 M11.1-M11.2
ICD-9-CM 712.3
OMIM 600668 118600
DiseasesDB 10832
MedlinePlus 000421
eMedicine med/1938 radio/125 orthoped/382 emerg/221
Patient UK 偽痛風
MeSH D002805

偽痛風(ぎつうふう、: Pseudogout)とはピロリン酸カルシウム二水和物 (CPPD) の関節軟骨や周囲組織への沈着を原因とした関節炎を来す疾患の総称である[1][2]。厳密には急性関節炎のみを指し[1]、広義にはピロリン酸カルシウム結晶沈着症、軟骨石灰化症とも呼ばれる[2]痛風と同じような症状を来たしながら高尿酸血症が見られないことから名付けられた。

病態

高齢者に好発し性差はない[2]。偽痛風における関節炎は、痛風における尿酸への反応と同様のものがピロリン酸カルシウムに対して発生したものである。すなわち、関節包内に析出したピロリン酸カルシウムの結晶に対する炎症反応によって発生する。

臨床像

急性及び慢性の結晶誘発性関節炎や関節破壊など多彩。慢性症状(慢性関節炎)では重度の関節組織破壊が起きることがある[3]

好発部位は、

臨床病型分類[4]
type A : 急性偽痛風発作
type B : 偽関節リウマチ
type C : 偽変形性関節症(発作あり)
type D : 偽変形性関節症(発作なし)
type E : 潜伏性あるいは無症候性
type F : 偽神経障害性関節症
その他 偽リウマチ性多発筋痛症など
症状分類
  1. 偽痛風発作
  2. 偽変形性関節症
  3. 偽関節リウマチ

原因

ピロリン酸カルシウム結晶が沈着する原因は不明であるが、血液中の無機ピロリン酸濃度は高くなくても、関節局所でこれらが過剰に所在することで結晶化し、沈着すると考えられている。

下記に該当する場合に発症しやすい[2][4]

なお、家族性の発症が報告される。通常は常染色体優性パターンで遺伝し、40歳までに発症する。

症状

関節に激烈な痛みがおこり、患部の炎症に伴う発熱を生じる事がある。痛風よりも痛みは弱い。好発部位は関節で、約半数が発生する。それ以外のほとんどの関節にも発生しうるが、関節、関節などの大きな関節のほうが発生しやすい。心筋梗塞脳梗塞などが誘因となる可能性もあるが、誘因がないこともある。

検査

X線検査
軟骨にピロリン酸カルシウムが沈着することで、石灰化像が線状に見える。膝関節の典型例では、半月板に石灰化が見られる。
スクリーニング
5枚の単純XPで軟骨石灰化を確認
  • 膝関節(左、右)
  • 三角靭帯(左、右)
  • 骨盤正面:恥骨結合および寛骨臼をみる。
関節穿刺液検査
関節液内にCPPDが発見されれば診断は確定する。

鑑別疾患

治療

特効薬(特異療法)は無い。急性症状の痛みを軽減するための対症療法として、インドメタシン、ナプロキセンなどの投与[3]

  • 非ステロイド系抗炎症薬[2]
  • 発作の予防のためにコルヒチン[2]
  • 関節液の排出とコルチコステロイドの関節内注入[3]
  • 理学療法[2]

食事療法は行われない[5]

診療科

脚注

  1. ^ a b 益田郁子「偽痛風[ピロリン酸カルシウム(CPPD)結晶沈着症]」『内分泌・糖尿病・代謝内科』第33巻第5号、山王病院、2011年、485-492頁、NAID 40019154849 
  2. ^ a b c d e f g 偽痛風 MSDマニュアル家庭版
  3. ^ a b c d ピロリン酸カルシウム二水和物結晶沈着症 MSDマニュアル プロフェッショナル版
  4. ^ a b c d e ピロリン酸カルシウム結晶沈着症(calcium pyrophosphate dehydrate deposition(CPPD)症)、偽痛風(pseudogout) KOMPAS 慶應義塾大学医学部リウマチ・膠原病内科
  5. ^ 山中寿, 鎌谷直之、「2.痛風・偽痛風」 『日本内科学会雑誌』 2000年 89巻 10号 p.2086-2092, doi:10.2169/naika.89.2086, 日本内科学会

外部リンク


偽痛風

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/06 04:45 UTC 版)

関節炎」の記事における「偽痛風」の解説

経過 偽痛風はCPPD(ピロリン酸カルシウム二水和物)の沈着による関節炎であり、特に痛風似た急性の単〜少数関節炎場合をいう。高齢者における内科的・外科的イベントの後に起こることが多い。膝関節は特に偽痛風が起こる可能性が高い関節である。特に変形性関節症のある膝関節起こりやすいといわれている。 なおCPPDによる関節炎は偽痛風の他の臨床病型がある。例えばpseudo-RAでは慢性多関節炎臨床像をとり、pseudo-OAでは軟骨石灰化伴い変形性関節症のように慢性進行性関節変形が進む。Pseudo-neuropathicではシャルコー関節のように急速に関節変性進行する末梢関節以外では頚椎歯状突起周囲にCPPDが沈着するcrowned dens syndromeのような特殊な病態もある。発熱局在性乏し疼痛伴うた感染性心内膜炎リウマチ性多発筋痛症鑑別として重要である。 診断 X線撮影では軟骨石灰化がみられ参考となる所見である。特に手関節膝関節恥骨結合みられる関節液の鏡検でCPPDの結晶確認すると確実である。若年で偽通風起こした場合副甲状腺機能亢進症ヘモクロマトーシス低マグネシウム血症などの背景疾患検索する必要がある治療 急性の関節炎に対して質の高いエビデンスはなく、痛風発作治療準じる局所安静冷却NSAIDs投与のほか、関節穿刺によるCPPD結晶除去副腎皮質ステロイド関節注射一般的に行われる経口副腎ステロイドNSAIDs無効な場合使用できない場合多関節炎の場合考慮されるプレドニゾロン30〜50mg/dayで開始し漸減し7〜10日ほどで中止する

※この「偽痛風」の解説は、「関節炎」の解説の一部です。
「偽痛風」を含む「関節炎」の記事については、「関節炎」の概要を参照ください。

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