TCIによる株式取得をめぐる問題について
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/24 09:56 UTC 版)
「電源開発」の記事における「TCIによる株式取得をめぐる問題について」の解説
電源開発の発行済株式の9.9%を保有する英国のザ・チルドレンズ・インベストメント・ファンド(TCI)は、2007年6月の定時株主総会の時点で増配要求を出すなど、経営方針に対して不満を表明していた。2007年11月には、社外役員の派遣を経営陣に要請したものの、電源開発の取締役会は2008年1月7日、この提案に反対する旨の回答をする。 そこでTCIは、1月15日、電源開発の株式の保有率を20%まで引き上げるため、外為法による事前届出を行った。しかし関税・外国為替等審議会外国為替等分科会外資特別部会は4月15日、この株式取得は日本の「公の秩序の維持が妨げられるおそれがあるもの」とする意見を出した。この意見を受けて、額賀財務大臣と甘利経済産業大臣は、TCIによる株式の取得の中止の勧告を出すと同時に、「日本政府の対日直接投資促進は不変」という談話を発表し、電源開発もこの勧告と談話を許容する内容のコメントを発表した。 4月25日に入り、TCIは経済産業省から出された弁明の機会の付与に対し中止勧告の応諾の拒否を通知したため、額賀財務大臣と甘利経済産業大臣は、外為法27条10項の中止命令のための手続に着手し、5月13日に中止命令を発した。7月14日、TCIはこの中止命令に従い、不服申し立てを断念する旨の声明を発表した。 一方でTCIは、4月16日に、6月の電源開発の定時株主総会において、期末配当に関する提案と、条件が受け入れられない場合の社長の解任を内容とする株主提案を行うことを発表した。電源開発は4月18日にこの提案を受領した旨を発表し、4月30日にTCIの全提案に反対する旨の取締役会の意見を発表した。その後TCIと電源開発との間で書簡の往来が続いたものの意見の対立は埋まらず、5月22日には、定時総会に向けて委任状勧誘を行うことをTCIが発表した。 6月26日の第56期定時株主総会にて、TCIによる株主提案はすべて否決されたものの、それと前後して、TCIは電源開発の経営陣の責任を追及する訴えを提起のための手続を進めており、また、持合い株主の議決権の投票結果の開示を要請するなど、定時株主総会によるTCIの株主提案の否決後も係争は続いていた。 しかし、2008年10月31日に、電源開発はTCIが保有している全株式を買い取ることを発表し、一連の問題に終止符を打つこととなった。なお、TCIが株式の売却を決めた理由については、電源開発が2008年7月末に決めた子会社事業を本体に取り込む事業再編によるものとする報道と、2008年9月に発生した世界規模の金融危機の影響によるものとする報道とがあり、錯綜している。
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