OPS-1/2とは? わかりやすく解説

OPS-12

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/10/22 02:30 UTC 版)

OPS-12
種別 3次元レーダー
目的 対空捜索
開発・運用史
開発国 日本
就役年 1980年(昭和55年)
送信機
形式 電子管
周波数 Sバンド
アンテナ
形式 パッシブ・フェーズドアレイ方式[1]
方位角 全周旋回無制限
探知性能
探知距離 119 km (64 nmi)[2]
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OPS-12は、日本電気(NEC)製の3次元レーダーフェーズドアレイレーダー)。海上自衛隊しらね型護衛艦(50/51DDH)において、艦載対空捜索レーダーとして搭載された[3][4]

来歴

海上自衛隊では、初のミサイル護衛艦である「あまつかぜ」(35DDG)に搭載されたAN/SPS-39より3次元レーダーの運用を開始した。しかし一方で、はるな型護衛艦(43/45DDH)では2次元レーダーしか搭載されていなかった。このことから、はるな型の拡大改良型としてのヘリコプター護衛艦(DDH)向けの国産3次元レーダーとして開発されたのが本機種である。なお本機種の開発に当たっては、AN/SPS-39の開発元であり、自動警戒管制組織(BADGE)で日本電気とも密接な関係があったヒューズ社に技術料が支払われていたとも言われている[1]

設計

本機は、航空自衛隊向けのJ/TPS-100で開発された技術を利用して製作された[5]。俯仰角方向は電子的に、旋回角方向は機械的に走査されるが[4]、この電子的なビーム走査の方式としては、AN/SPS-39では周波数走査(frequency scanning, FRESCAN)方式を用いていたのに対し[注 1]、本機では位相走査(phase scanning)方式を採用し[7]パッシブ・フェーズドアレイ・アンテナとなった[1]。このアンテナは18度傾けて設置されており、下部には敵味方識別装置(IFF)のアンテナが設けられている[4]

レーダー送信管は水冷式で[8]、高出力電子管による3段直列増幅方式が採用されており、AN/SPS-39とは比べ物にならないほどの大出力であった[7]。このため、港内あるいは陸地に近いところではフルパワーでの送信が禁じられていたが、本機種の送信管では、最終段を送信しなくても2段目までの出力で運用できるように工夫されており、港内で送信しなければならない場合などに活用された[7]。ただしあまりの大出力のために、メインローブだけでなくサイドローブによる信号も表示されてしまい、公試中に大島が2つ現れる事象が発生したことがあり、サイドローブによる受信信号を抑制する対策が行われた[7]。なお信号処理部にはAN/UYK-20電子計算機が用いられており[9]パルス圧縮の技術も導入された[4]

運用史

性能面では、たちかぜ型護衛艦で搭載されたAN/SPS-52Bと同等であったことから、同型3番艦「さわかぜ」(53DDG)では本機の搭載も検討され、予算要求されて執行計画も作成された[5]。しかしターター・システムとの連接条件が不明な点があるなどの理由で、結局は断念され、同艦およびはたかぜ型護衛艦(56/58DDG)ではFMS調達したAN/SPS-52Cが搭載された[5]。これにより、本機の搭載はしらね型護衛艦(50/51DDH)の2隻のみとなっており、その生産終了の背景にはヒューズ社からの圧力があったとも言われている[1]

その後1990年(平成2年)に就役した「はまぎり」(60DD)より、汎用護衛艦(DD)向けの国産艦載3次元レーダーとして、アクティブ・フェーズドアレイ・アンテナを用いた三菱電機製のOPS-24が就役を開始した[1]

脚注

注釈

  1. ^ 日本電気も、航空自衛隊のレーダーサイト向けの警戒管制レーダー(J/FPS-1)ではFRESCAN方式を提案していたものの、この際には三菱電機の案が採択されていた[6]

出典

参考文献

  • Friedman, Norman (1997), The Naval Institute Guide to World Naval Weapon Systems 1997-1998, Naval Institute Press, ISBN 9781557502681 
  • Streetly, Martin (2005), Jane's Radar and Electronic Warfare Systems (17th ed.), Janes Information Group, ISBN 978-0710627049 
  • 朝雲新聞社 編『自衛隊装備年鑑 2011-2012』朝雲新聞社、2011年。 ISBN 978-4750910321 
  • 窪田満「国産初号機OPS-12レーダとの付き合い-一電子整備員の「しらね」物語」『第5巻 船務・航海』 第1分冊、水交会〈海上自衛隊 苦心の足跡〉、2014年、247-250頁。 
  • 航空幕僚監部 編『航空自衛隊50年史 : 美しき大空とともに』2006年。 NCID BA77547615 
  • 佐藤義明「海自水上艦艇用レーダの開発・導入の軌跡」『第5巻 船務・航海』 第1分冊、水交会〈海上自衛隊 苦心の足跡〉、2014年、226-233頁。 
  • 藤木平八郎「艦載レーダー発達の歴史 (特集 最近の艦載レーダー)」『世界の艦船』第607号、海人社、69-76頁、2003年2月。 NAID 40005630579 
  • 藤木平八郎「海上自衛隊の兵器開発システムの問題点 (特集 海上自衛隊の艦載兵器)」『世界の艦船』第721号、海人社、106-109頁、2010年3月。 NAID 40016963810 
  • 保坂俊彦「「しらね」船務科所掌電子機器のぎ装、戦力化の思い出」『第5巻 船務・航海』 第1分冊、水交会〈海上自衛隊 苦心の足跡〉、2014年、127-130頁。 
  • 山田道雄「海自初のNTDS艦「しらね」の就役-システム艦CIC活動の変遷」『第5巻 船務・航海』 第1分冊、水交会〈海上自衛隊 苦心の足跡〉、2014年、115-121頁。 

関連項目

ウィキメディア・コモンズには、OPS-12に関するカテゴリがあります。


OPS-1/2

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/13 09:39 UTC 版)

AN/SPS-6」の記事における「OPS-1/2」の解説

1950年代初頭日本海上自衛隊では、はるかぜ型護衛艦(28DD)への搭載用として、MSA協定に基づく軍事援助計画MAP)でAN/SPS-6入手し、これをもとに国産化したOPS-1開発して初代あきづき型汎用護衛艦などに搭載していた。また、あやなみ対潜護衛艦(30DDK)ではAN/SPS-12搭載され、この技術ものちにOPS-1バックフィットされた。さらにのちには、いすず型護衛艦(34DE)に搭載するため、送受信機同一アンテナ小型化したOPS-2開発された。PV-2を目標とした場合最大探知距離は、OPS-250海里 (93 km)であった1次防(昭和3335年度/1958~1960年度)までの建造艦において、OPS-1甲型警備艦(DD)、OPS-2乙型警備艦DE)に搭載されたが、2次防(昭和3741年度/1962~1966年度)以降の艦ではP(B)バンドOPS-11搭載されようになった。しかしその後、OPS-1/2を元にOPS-14開発され3次防(昭和4246年度/1967~1971年度)以降乙型警備艦補助艦等および一部汎用護衛艦(52-59DD)に搭載された。

※この「OPS-1/2」の解説は、「AN/SPS-6」の解説の一部です。
「OPS-1/2」を含む「AN/SPS-6」の記事については、「AN/SPS-6」の概要を参照ください。

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